本誌7月26日号において、台湾の国立政治大学選挙研究センターが7月20日に3つの世論調査からなる「重要政治態度分布趨勢圖」を発表したことをお伝えした際、「私は台湾人」と考える人は63.3%で、昨年の64.3%より1ポイント下がったものの60%を超え、台湾人意識が定着しているようだとお伝えしました。
8月10日、今度は辜寛敏氏が董事長をつとめる「財団法人台湾制憲基金会」が同様の世論調査を発表、自分を「台湾人」と認識している人は67.9%だったそうで、ほぼほぼ同じ結果だったそうです。下記にこの世論調査についてのニュース記事をご紹介します。
驚いたのは、台湾防衛のために戦場に行くかとの問いには、「戦場に行く」が36%、「戦場に行くかもしれない」が28.3%で、「戦場には行かない」は16.2%だったそうで、実に64.3%が台湾のために戦うことをいとわないとの調査結果で、台湾では自分を「台湾人」と認識していることと、戦場に行って台湾を守る意識がほぼ同数だったのです。
台湾人アイデンティティを持つことが安全保障問題に直結している台湾のリアルな現状を表しているようです。これが正常なアイデンティティの持ち方ではないのかと考えさせられます。日本では自分を「日本人」と認識している人はほぼ100%。では、日本のために戦場に行くかと問えば、台湾ほどの気概を示す回答が示されるのか、はなはだ疑問です。
武漢肺炎こと新型コロナウイルスの抑え込みになかなか進展が見られない日本と、抑え込みにほぼ成功した台湾との差は、どうやらここら辺にもあるように思います。一言でいえば愛郷心とも愛国心とも呼ぶべき心持ちのことです。
2014年3月の「ひまわり学生運動」について、当時の李登輝元総統は「国家の希望というものを見せてくれた」と喝破されました。この年に国立政治大学選挙研究センターが発表した台湾人意識の調査で、自分を「台湾人」と認識している人が初めて60%を超えて60.6%となりました。だから李元総統は、台湾人アイデンティティの高まりが国家を見出し、台湾という民主国家を守ろうという意識こそ台湾人アイデンティティであると指摘されたのでした。
なぜ李登輝元総統が民主主義のことを声高に言わず、台湾人アイデンティティの高まりにこだわっていたのか、ようやく答を見出せたと思ったことを覚えています。台湾制憲基金会の世論調査が李元総統の指摘の正しさを裏づけています。
—————————————————————————————–「私は台湾人」9割、「日本に好感」8割強─台湾世論調査【Record China:2021年8月13日】
仏メディアのRFIは11日、台湾で行われた世論調査で9割の人が自分を「台湾人」と認識していることが分かったと伝えた。
台湾のシンクタンク・台湾制憲基金会は10日、台湾での最新の世論調査の結果を発表した。それによると、自分を「台湾人」と認識している人は67.9%だった一方、「中国人」と認識している人は1.8%だった。また、「台湾人であり、中国人でもある」という人は27.8%だったが、どちらか一方を選ばせたところ「台湾人」と認識している人が全体の89.9%に上った。「中国人」と認識している人は4.6%だったという。
同会会長で独立派の辜寛敏氏は「台湾が正常な国になることを望んでいる」とし、2024年のパリ五輪には「台湾」の名で出場すべきと主張した。東京五輪で台湾はこれまで通り「中華台北(チャイニーズタイペイ)」の名称で参加していたが、同調査によると65.1%の人が「台湾チーム」と呼んでおり、「中華台北チーム」と呼んでいた人は25.7%だった。中華民国の国旗や国歌を使用できないことを残念に感じている人は80%以上に上ったという。
台湾と中国の関係については、38.9%が独立を支持し、50.1%が現状維持を望んでいた。統一を希望する人は4.7%だった。また、軍事的な緊張が高まっていることについて、36%が「台湾防衛のために戦場に行く」と、28.3%が「戦場に行くかもしれない」と、16.2%が「戦場には行かない」と回答したという。
外交面では、米国に好感を持つ人が75.6%、日本に好感を持つ人が83.9%だった一方、中国に好感を持つ人は16.4%にとどまった。また、9割近くが米国や日本と正式な外交関係を構築することを支持しているという。このほか、台湾国立政治大学選挙研究センターも先月に同様の世論調査を実施しており、こちらは台湾人を自認する人が63.3%、台湾人と中国人の両方を自認する人が31.4%、中国人を自認する人は2.7%という結果になった。
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