台湾の国立政治大学選挙研究センターは1992年以来(1993年を除く)、毎年1回、台湾人のアイデンティティ調査をしている。毎回、質問は同じで「あなたは台湾人(Taiwanese)ですか」「あなたは台湾人であり中国人(Taiwanese and Chinese)ですか」「あなたは中国人ですか」の3問だけだ。
5,767人を対象に実施した今年の「台湾民衆台湾人/中国人認同趨勢分布」(認同はアイデンティティの意)は7月3日に発表され、「私は台湾人」と答えた人は過去最高の67.0%にのぼった。「台湾人であり中国人」は27.5%、「中国人」は3.4%で、いずれも過去最低だった。
ちなみに、李登輝総統が本格的に民主化を進めるようになった1992年の「台湾人」は17.6%、「中国人」は25.5%、「台湾人・中国人」は46.4%で、自分を台湾人であり中国人とする人は約半数にも及んでいた。
また、「私は台湾人」のこれまでの最高は、ひまわり学生運動が起こった2014年の60.6%。同様に「中国人」は1994年の26.2%が最高で、2002年に9.2%と一桁台になってからは下がり続けている。「台湾人・中国人」も、第三次台湾海峡危機が起こった1996年の49.3%を最高に、馬英九政権時代の2009年に39.8%と30%台に下がり、今年はじめて27.5%と20%台に下がった。
国立政治大学選挙研究センターは1994年から、併せて台湾人の独立・統一志向に関する「台湾民衆統独立場趨勢分布」も発表していて、今年の調査によると「独立志向」は過去最高の27.7%となり、「現状維持」の28.7%にほぼ拮抗し、「一刻も早く独立」の7.4%と合わせると35.1%にも及んでいる。一方、「統一志向」は6.8%、「一刻も早く統一」も0.7%と過去最低を示した。
国立政治大学選挙研究センターは先の2つの世論調査とともに、政党支持に関する「台湾民衆政党偏好分布」も同時に発表していて、与党・民進党が過去最高の36.8%に及んでいる。民進党は2015年の31.2%が最高で、昨年の28.6%から8.2ポイント上げている。
中国国民党は15.8%と昨年の24.1%から8.3ポイント下げ、陳水扁政権2年目の2001年の14.8%に次ぐ低い支持率で、中国国民党が下がった分を民進党がそっくり持って行ったようだ。台湾民衆党は5.3%、時代力量は3.3%と続いている。
これら3つの世論調査から、やはり香港国家安全維持法の制定が中国の全国人民代表大会で採択された5月28日以降の香港情勢がこの世論調査に大きく反映されているようだ。
◆国立政治大学選挙研究センター:資料庫 重要政治態度分布趨勢図 https://esc.nccu.edu.tw/course/news.php?class=203*「台湾民衆政党偏好分布」の発表は2020年2月14日と表示されているが、2020年7月3日の間違い。
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