【4月18日 東京新聞夕刊】
【台北=栗田秀之】日本統治時代の台湾で水利事業に貢献した金沢市出身の日本人技師、
八田與一(よいち)氏の業績をたたえる記念館が、ダムゆかりの地である台南県に完成し
た。地元の人たちは今も八田氏を慕っており、記念館の設置は長年の悲願だった。五月
八日、八田氏の命日に開幕式がある。
八田氏は、台南県で一九三〇年に完成した烏山頭ダムや灌漑(かんがい)用水路の建設
を指揮した。ダムは当時アジア最大と言われ、延べ一万六千キロに及ぶ用水路とともに、
不毛の地だった嘉南平野を穀倉地帯に変えた。
ダムのすぐ西にある官田村の稲作も以前は天候に左右され、水をめぐるもめ事も絶えな
かったが、用水が引かれてからは生活が一変した。八田氏に対する感謝の念が一貫して引
き継がれ、記念館設立の声が五年ほど前から高まっていた。
同村にある廟(びょう)「官田慈聖宮」管理委員会の陳俊銘さん(40)や張晋魁さん
(52)らは、農業の神様を祭る慈聖宮が記念館の場所にふさわしいとして、廟の二階に約
百平方メートルのスペースを確保し、八田氏の生涯を写真パネルや年表、図などで紹介し
た。館のシンボルとして、台湾の著名な彫刻家に依頼した八田氏と外代樹(とよき)夫人
の木彫りの像も安置した。