今回は台北に住んでいる内片貴子(うちかたあつこ)さんの書かれた文章を紹介したいと思いま
す。
というのは、一家庭主婦でありながら日台交流で活躍しているということで、台湾日本人会会報
「さんご」に掲載されたのです。この文章を読んでこのような形で日台交流にがんばっている人も
いるんだなあと共感を覚えた次第です。
◇ ◇ ◇
「台湾での暮らしと出会った日台交流」
内片 貴子
●自己紹介
今から約9年前(2004年6月末)に、ここ台北へ引っ越して参りました。結婚後(夫も日本人)最
初の約1年半は東京で暮らしましたが、その後はインドネシア(ジャカルタ)、シンガポールに駐
在し、現在に至っております。京都で生まれ京都でずっと暮らしていた私は、もっと別の場所(出
来れば海外)で生活してみたいと常に思っておりましたので、その夢が叶ったと言えるかも知れま
せん。
娘(18歳)と息子(17歳)がおりますが、彼らはほとんど日本に住んだ事もなく、学校は幼い頃
からインターナショナルスクールです。日本人であるという意識は持っておりますものの、日本へ
のアイデンティティには微妙な感じも致します。
●海外での子育てと教育の選択
海外でこれだけ長い間生活、そして子育てをする事になろうとは思ってもみませんでした。海外
生活が始まったのは娘が2歳、息子が生後半年の頃でした。この先どこの国に何年暮らす事になる
のかは全く予測のつかない中で子供達の教育を選ばねばなりませんでした。まずは、ナーサリーと
幼稚園選びでしたが、インターナショナルスクールという選択を致しました。小学校、中学、そし
て高校へ上がる節目にはその折々に家族で話し合いながら、学校選びをして参りました。
大変ありがたい事に、今年6月1日に娘は台北アメリカンスクールを卒業する事が出来ました。来
年は息子もここで卒業を迎えられそうです。結果的に一貫教育を受ける事が出来たのは、非常に幸
運だったと思っております。
●台北アメリカンスクール(TAS)
娘が小学校4年生、息子が3年生からお世話になっておりますTASの事を少しご紹介させて頂き
ます。幼稚園は2学年、小学校は1〜5年生、中学が3学年、高校が4学年です。TASではいわゆる
数学や社会と言った教科以外の芸術(楽器演奏、コーラス、絵画、ダンスなど)や科学(コン
ピューターやロボット工学)、そしてパブリックスピーキング能力の開発と向上にも非常に力が注
がれています。
中学、高校ではほとんどのクラスがレベルやコース別になっていますので、自分の得意とする教
科はドンドンと掘り下げ、不得意な教科は比較的簡単なクラスで学ぶ選択が出来ます。学校内に
は、各教科で一目を置かれる生徒以外にもスポーツ、弁論、ボランティア、音楽、演劇などの多岐
にわたるヒーローやヒロインがいて、学生たちが個性を発揮しているのが伺えます。
受験知らずのまま高校生になるのですが、さすがに高校になると緊張が漂います。大学受験専門
のカウンセラーも存在し、「大学へ行く目的とは何か」「大学でのメジャーの選び方」「自分に
合った大学の選び方」などをしっかりと指導しています。この指導は親としては非常にありがた
かったと思っております。
●出会った日台交流
(玉蘭荘)
台北に引っ越して来て間もない頃、ある友人からの紹介で「玉蘭荘」に出会いました。玉蘭荘
は、台湾の日本語世代の方々や、台湾や中国の方と結婚なさった日本婦人等が集い、日本語で活動
をなさっている場所で、今年9月に24年目を迎えます。会員の平均年齢は今年82歳。日本の歌を
歌ったり、日本語で学んだり、日本の文化に触れる活動が、皆様にとって心身の健康につながって
いる事をひしひしと感じております。
この高齢者の憩いの場所とも言える玉蘭荘にはたった2名の職員しかおらず、ボランティアのお
力添えが必須の状況です。熱心にサポートをして下さっているボランティアの皆様には、会員もと
ても感謝なさっています。また、交流協会台北事務所や台北市日本工商会、台湾日本人会、台湾や
日本のロータリークラブをはじめ多くの皆様の温かいご支援に対しましても、常々心より感謝を致
しております。
(慈善コンサート「おしゃべりコンサートIN台湾」)
ソプラノ歌手の千葉章代さんと武蔵野音大・ピアノ科の澤田勝行教授が1年に1度、個人的に来台
され、老人ホームや幼稚園、日本語世代の方々の為に慈善コンサートを開催し、音楽を通じての日
台交流をして下さっています(今年で5回目)。
幼い頃日本の童謡や唱歌を歌って育たれた方々が、澤田先生の素敵なピアノ伴奏で千葉先生とご
一緒に大合唱なさっているお姿を拝見致しますと、いつも胸が熱くなります。日本語のわからない
台湾の幼稚園生たちも、瞳を輝かせながら全身で楽しい気持ちを表して下さいます。どのコンサー
トにも何とも言葉にしようのない温かな雰囲気が生まれます。
昨年から、交流協会の賛助、日本人会からのご協賛を頂きました。先生方そしてこの活動へのご
協力をさせて頂いている実行委員会一同とても感謝致しております。今年も10月下旬から約2週
間、精力的なコンサート活動が繰り広げられます。一般公開のコンサートもございますので、是非
この日台交流の場をご覧頂ければ幸いです。
(日本語で活動するロータリークラブ)
ここ台湾には日本語で活動するロータリークラブが3つあります(高雄の壽山RC、台北東海R
C、台北南山RC)。これは世界に多数存在するロータリークラブの中でも数少ない事と思いま
す。
ご縁を頂き、この南山RCに主人が入会させて頂いております。メンバーの約4分の3は台湾の方
です(4分の1が日本人)。創立3年目を迎えた南山RCでは、日台交流により重点を置いたクラブ
であるという点が特徴のように思います。
また、ロータリーが提唱する奉仕クラブとして、ローターアクトという18歳〜30歳の男女で構成
されるクラブがあります。今年6月には南山ローターアクトが創立されました。日台の若者たちが
協力し合い、活発な活動を展開して下さる事と期待しております。
(地球紙芝居キッズ)
「地球紙芝居キッズ」というのは、友人がシアトル在住時に立ち上げ、おこなっていたボラン
ティア活動です。幼稚園などを回り、自然環境保護に関する紙芝居を通して(手作りの人形なども
登場)、子供たちに「地球の環境を大切にしようね」というメッセージを伝える活動です。
台北に住む事になった彼女との出会い、そして賛同者がいて下さった事により、台北でもこの活
動をおこなっております。上演をご希望下さる幼稚園や幼児サークルなどございましたらお声かけ
下さると嬉しいです。
(最後に)
海外生活が長くなっている私ですが、ここ台湾で生活を始めてからというもの、何か見えない力
に引っ張られるかのように日台交流活動に出会い、参画させて頂く機会があります。そしてその機
会も増して来ているような気が致します。台湾の方々から多額の東日本大震災義捐金を頂いてから
は、御恩返しの感謝イベントも多く開催されていますので、ある意味必然であるのかも知れません
が……。
あと何年台湾で生活できるのかはわかりませんが、台湾の方への尊敬と感謝の気持ちを胸に、こ
れからもささやかなボランティアを続けて行ければと思っております。
注:本稿記事は台湾日本人会会報「さんご」(2013年8月号)より転載させていただきました。