弔 詞
伊藤潔先生の御葬儀が執り行われるにあたり、ご霊前に追悼の言葉を申し上げます。
先生はご生前、多大なる学術的な貢献を果たされましたが、それとともに台湾人として、
日本人として、台湾と日本という二つの祖国を愛され、両国の親善交流に指導的な役割を
果たされたことは、誰もが認める先生の大きな功績であります。
ことに生涯をかけて台湾の独立建国のために邁進されたことに、私は尊敬の念を禁じ得
ません。
思えば私が総統在任中、台日関係のため、両国間を頻繁に往来された先生は、台湾が中
国の一部などではなく、民主自由の主権独立国家であることを日本国民に広く紹介され、
また私のよきアドバイザーとして、両国関係の在り方について、さまざまな助言を与えて
くれたものでした。
先生が一貫して唱えられたように、台湾は台湾人の国として、国際社会における地位を
獲得し、日本とともにアジアの、そして世界の平和と安定のために大いに貢献していかな
ければなりません。
私は先生のお志を無駄にしないためにも、これからも台湾のため、台日共栄のために全
力を尽くして行く所存です。
ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
二〇〇六年一月十六日
台湾前総統 李 登輝