一の優先課題としているように見受けられた。
9月11日の尖閣諸島の国有化とは、個人から国への所有権移転登記に他ならず、日本が尖
閣諸島の主権を持ち、実効支配していることにはいささかの変化もない。
この所有権移転に対する台湾側の反応を見極め、日本側の窓口である交流協会台北事務
所の樽井澄夫代表は台湾側の真意を汲み取り、9月13日、台湾側の懸念を払拭するプレスリ
リース「東シナ海における漁業に関する台湾での報道について」を発表した。
このプレスリリースでは「我が国の排他的経済水域における外国漁船の扱いは、日本政
府による今般の措置によって何ら変わるものではありません」と明示し、台湾漁民の活動
に支障が出ないことを表明した。
また「日台間の漁業分野における交流や協力を推進していくため、引き続き台湾側と緊
密に意思疎通と連携を深めていく」ことも表明し、そのための第一弾として、日本側も
「日台漁業協議の早期に再開」を期待していることを表明している。
ここにおいて日台双方の意向は合致したとみるべきだろう。
本誌で何度か伝えてきたように、すでに日台間で漁業交渉の下交渉は行われている。尖
閣諸島の国有化を受け、正式に日本側が漁業交渉に臨むことを表明したことで、「2009年
以来中断している台湾と日本の漁業交渉が10月にも再開の見通しとなった」(9月14日付
「中央通信社」)ことは喜ばしい。
中国による尖閣諸島を利用した「日台分断工作」を押しやるためにも、漁業交渉の早期
再開に期待したい。
下記に、交流協会台北事務所が発表したプレスリリース「東シナ海における漁業に関す
る台湾での報道について」の全文を紹介したい。
東シナ海における漁業に関する台湾での報道について
【交流協会台北事務所:2012年9月13日作成】
1 台湾においては,日本政府が11日に尖閣諸島3島の土地の所有権を以前の所有者から国
に移転することを決定したことを受け,あたかも東シナ海における台湾の漁民の方々の
これまで行ってきた活動に支障が出るかのような誤解を与える報道が一部見受けられま
す。しかし,我が国の排他的経済水域における外国漁船の扱いは,日本政府による今般
の措置によって何ら変わるものではありません。
2 日本政府は,さまざまな分野における日台間の実務協力関係が着実に発展していくこ
とを希望しており,交流協会としても,日台間の漁業分野における交流や協力を推進し
ていくため,引き続き台湾側と緊密に意思疎通と連携を深めていく所存であります。か
かる観点から,日本側としても,日台漁業協議が早期に再開され,日台双方が関心を寄
せる様々な議題について率直な意思疎通が行われるとともに,日台双方にとって受入れ
可能な協力の在り方を模索していくための建設的な意見交換が行われるよう期待してい
ます。
3 また,馬英九総統が発表された「東シナ海平和イニシアティブ」については,8月7
日の記者会見において玄葉外務大臣が述べたとおりでありますが,日本側としても,大
局的観点を見失わずに,東シナ海を「平和の海」としていくための具体的な協力を推進
していくことが重要であると考えています。
4 台湾は我が国との間で緊密な人的往来と経済関係を有する重要なパートナーであり,
樽井澄夫代表も9月11日に楊進添・外交部長と会見した際,尖閣諸島をめぐる情勢が日台
関係の大局に影響を及ぼすことがないよう希望すると述べています。
(了)