【産経新聞:2024年2月20日】
台湾の台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表が19日までに産経新聞に寄稿し、中国が今月から台湾海峡の民間航路を、中台間の事実上の停戦ラインである中間線寄りに一方的に移動させた措置について、国際民間航空機関(ICAO)の規定など国際的な慣行に反するもので、台湾海峡の「現状変更」だと非難した。
全文は以下の通り。
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1月13日、台湾で総統選が実施され、台湾の民主主義の成果が再び世界に示された。
総統選の大規模集会では多くの人々が盛り上がる一方、有権者は投票日に静かに並んで投票し、結果が分かると与野党の候補者が健闘をたたえあった。
台湾の政党政治は日米欧の各国に比べると日が浅いとはいえ、民主主義の秩序が育ったことは台湾の成長を示すものである。
中国は今回の選挙においても金銭買収、偽情報の拡散、軍事的威嚇などで台湾の選挙に介入したが、選挙結果が証明するようにそれは失敗に終わり、民主主義が成熟した台湾の有権者の意志は変わることはなかった。
しかし、現状維持を掲げる頼清徳氏が当選した後も、台湾と外交関係があったナウルに働きかけて台湾と断交させたほか、ほぼ毎日のように軍用機を台湾海峡の中間線に派遣し、気球を台湾上空に飛ばすなど、中国による台湾に対する圧力やいやがらせはさまざまな形で続いている。
さらに中国は今月1日から、台湾側との協議なしに一方的に台湾海峡の飛行ルートを変更した。
2015年の両岸(中台)協議で、台湾海峡の中間線に近い3本の東西航路の運用は見合わせ、中間線の西側を南北に沿うM503については6カイリ(約11キロ)西寄りにずらして北から南への一方向だけの運航で合意していた。
しかし、18年に中国はその約束を破ってM503の南北双方運航を開始し、東西航路3本についても中国大陸に向かう運航を開始した。
今回はエスカレートして、M503を6カイリずらす措置が取り消されて中間線に接近し、東西航路のうち2本は中国大陸から中間線に向かう飛行が始まった。
中国による一方的措置は、ICAOの規定など国際的な慣行に違反する。
台湾と中国の事実上の境界線である台湾海峡の中間線を越えかねない際どい飛行ルートは、民間航空機であっても安全上のリスクが大きい。
それでも中国がこの飛行ルートに執着するのは、台湾の防空能力に不利な影響を与え、台湾海峡の現状を変更するという政治的・軍事的な狙いがあるからだ。
台湾海峡は国際航空の大動脈であり、その飛行の安全は日本にとっても人ごとではない。
台湾海峡の平和と安全は両岸双方の責任であり、台湾は日本や米国、国際社会と連携しながらその責務を果たしていきたい。
そのためにも、中国に話し合いを促していくと同時に、ICAOが台湾の加盟を認め、国際的な枠組みで飛行安全のために連携できるよう望んでいる。
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