ロシアの勝敗、中国の台湾侵攻に影響  頼 怡忠(台湾智庫諮問委員)

 以前にも書いたように、本誌でロシアによるウクライナ侵略を取り上げるのは「今日のウクライナが明日の台湾」になるかどうか、その1点に尽きる。ウクライナ侵略が台湾有事につながるかどうかだ。

 日本側の識者として、小笠原欣幸・東京外国語大学院教授の見解を紹介した。ところが、肝腎要の台湾識者によるある程度まとまった見解はなかなか見当たらない。本誌でも、今年に入ってから、世界日報紙が掲載した「『台湾有事』のシナリオ─日米台識者に聞く」というインタビュー記事で、李明峻氏(新台湾国策シンクタンク主任研究員)と林彦宏氏(国防安全研究院准研究員)の2人の見解を紹介しただけだ。

 言葉の問題は小さくないが、日本メディアはもっと積極的に台湾識者の見解を紹介して欲しいものだ。その中でも、産経新聞はよく台湾識者の見解を紹介している。本日も、ロシアによるウクライナ侵略をどう捉えているか、台湾智庫諮問委員の頼怡忠氏の見解を紹介している。下記にご紹介したい。

 頼氏は、このウクライナ侵略で分かったこととして、米国の情報が非常に正しいこと、ウクライナのゼレンスキー大統領が先頭に立って勇敢に戦っている姿は台湾の見本となることなどとともに、「ロシアが勝てば、中国による台湾侵攻の可能性が高まり、失敗すれば、習近平氏は台湾侵攻を躊躇する」可能性があると指摘している。

 頼怡忠氏は台湾智庫諮問委員と紹介されているが、頼氏は一方で、両岸交流遠景基金会執行長を兼任している。

 訪台中のマイク・ポンペオ前米国国務長官は3月4日、講演と記者会見において「アメリカ政府は台湾の主権を認め、外交的に承認すべきだ」「台湾はすでに独立国なので独立を宣言する必要はない」などと述べたと伝えられている。波紋を広げそうなスピーチなので、下記に英文と中文訳を紹介したい。

 ポンペオ氏を招いたのがこの両岸交流遠景基金会だ。会長は陳唐山氏(元立法委員、元総統府秘書長、元国家安全会議秘書長)、頼怡忠氏は執行長(CEO)。羅福全氏が台北駐日経済文化代表処代表のときの2000年から2004年まで代表室主任として来日している。

頼怡忠(I-Chung, Lai)1966年、嘉義県生まれ。1998年、台湾成功大学物理系卒業後、米国のコーネル大学客員教授を経てバージニア工科大学大学院で博士号取得。民主進歩党駐米代表処主任、台北駐日経済文化代表処代表室主任、民進党中国事務主任、民進党国際際事務部副主任などを歴任。台湾智庫諮問委員、両岸交流遠景基金会執行長。

◆Speech of 70th U.S. Secretary of State Mike Pompeo March 4,2022【英文】 https://www.pf.org.tw/files/7934/D97B47EC-924B-42F5-9E0A-89A20D107208

◆在台演説 美前國務卿?培歐(Michael R. Pompeo) 111年3月4日【中文】 https://www.pf.org.tw/files/7934/3A4C6D94-3EA0-4D6C-B03A-6FB9E512F71E

—————————————————————————————–ロシアの勝敗、中国の台湾侵攻に影響頼 怡忠(台湾智庫諮問委員)【産経新聞:2022年3月5日】https://www.sankei.com/article/20220304-D5LNGHMFJ5L4BMJQCUFEPKYWUM/?913143

 ロシア軍によるウクライナ侵攻について、台湾のシンクタンク「台湾智庫」の頼怡忠諮問委員に聞いた。

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 ロシアによるウクライナ侵攻は、台湾にとって決して人ごとではない。中国による台湾侵攻を念頭に、高い関心をもって戦局の推移に注目している。これまで1週間余りの攻防と国際情勢の変化が、多くの示唆と教訓を与えてくれた。

 まず言えるのは、米国の情報は非常に正しいということだ。米政府は戦争の気配があまりなかった2月中旬から「侵攻の可能性が高い」と繰り返して警告を発していた。その情報収集と分析能力の高さが裏付けられた。

 米軍の高官が昨年、米議会公聴会で、中国が2027年までに台湾に侵攻する可能性があると証言した。台湾はこうした米国の警告に真剣に耳を傾けるべきだ。米国との連携をさらに強化する必要もある。ウクライナ侵攻のさなか、バイデン米大統領が元米軍制服組トップのマレン氏を団長とする訪問団を台湾に派遣してくれたことは、台湾にとり大きな自信となった。

 今回、ウクライナのゼレンスキー大統領がロシアに屈することなく、国民の先頭に立ってウクライナ軍とともに勇敢に戦っていることも、台湾にとって見本となる。その姿が国際社会を感動させ、当初、ウクライナ支持に消極的だった国々の態度が徐々に変わり支援の輪が広がった。もし将来、中国が攻めてきた際に台湾が国際社会の支持を得るには、台湾の指導者と民衆が故郷を守る決意と努力をまず見せなければならない。

 欧米が主導するロシアへの厳しい経済制裁が、どこまで効果があるかも関心がある。特に、ロシアの銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)から締め出す措置は、ロシア経済にどこまで影響するか。ロシアが短期間で耐えられないなら、中国が同じ制裁を受けた場合も耐えられないはずだ。

 今回のウクライナ戦争の結果は、台湾の今後の運命を左右する可能性がある。ロシアが勝てば、中国による台湾侵攻の可能性が高まり、失敗すれば、習近平(国家主席)氏は台湾侵攻を躊躇(ちゅうちょ)するに違いない。

(聞き手 矢板明夫)

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