レーダー照射事件にも表れた韓国の対日観  黄 文雄(文明史家)

【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」第267号:2018年12月25日】http://www.mag2.com/m/0001617134.html

*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部で付したことをお断りします。*原題「レーダー照射は『ムクゲの花を咲かせたい』韓国の野心を表している」を改めたことをお 断りします。

◆火器管制レーダーの照射はどう考えても敵対行為

 12月20日、日本の排他的経済水域内の公海上である石川県能登半島沖で、海上自衛隊のP-1哨戒機が韓国海軍の広開土王級駆逐艦によって火器管制レーダーを照射されるという事件が起こりました。

 いわば韓国海軍の駆逐艦によって、攻撃のためにロックオンされたということになります。これは「攻撃動作」であり、どう考えても敵対行為で、反撃されても文句が言えないほどの行為です。

 実際、朝鮮日報は、「同じことを韓国軍が自衛隊からされたら、もっと深刻な対応を取るだろう」という韓国側の専門家の意見を載せていました。要するに、韓国軍なら同様のことをされたら即時攻撃するということです。

 日本側は韓国の駆逐艦に意図を問い合わせましたが応答がなく、その後の日本政府の猛抗議に対して韓国側は、「レーダーを運用したが日本の哨戒機を追跡する目的で使用した事実はない」「遭難した北朝鮮の捜索のために火器管制レーダーを可動させたが、瞬間的に日本の哨戒機が入り込んできた」などと例によって言い訳をくるくると変えて弁明。

 韓国の軍関係者は海上自衛隊の哨戒機のほうが威嚇的だったとまで言う始末です。

 日本の防衛省が証拠があると発言し、火器管制レーダーが作動していたことを指摘すると、「火器管制レーダーの横にある光学カメラだけを作動させた」などと言い繕っています。

 日本側は、韓国側がレーダーを5分間、2回にわたり照射したことや、火器管制レーダーは捜索用に適さないことなどを挙げて反論。すると韓国軍関係者や一部の韓国メディアは「日本の反応は行き過ぎ」と、こちらも例によってあたかも日本側がおかしいかのような、反論にならない反論を繰り広げています。

◆日本との関係を悪化させようとしている文在寅大統領

 「徴用工」への判決にしてもそうでしたが、自分たちが反論できない事柄については、「騒ぎすぎ」だとして相手の責任にし、被害者ぶるのが韓国の常套手段です。今回のことにしても、「安倍首相が支持率挽回のために反韓感情を利用した」という見方をする韓国紙すらあります。

 しかし、支持率のために常に反日感情を煽ってきたのは韓国のほうです。李明博は竹島に上陸し、朴槿恵は告げ口外交に終止し、文在寅は慰安婦合意を反故にし、徴用工問題を煽ってきました。

 すでに文在寅の支持率は46%まで下落し、不支持が支持を上回っています。その原因は、最低賃金を大幅に切り上げたことによる企業の業績圧迫、それにともなう雇用低迷と国民の生活苦といった国内の経済問題ですが、国民の不満が高まっているだけに、日本に対して融和的な姿勢など取れない状況となっています。

 それどころか、むしろ文在寅大統領は、日本との関係を意図的に悪化させようとしているとしか思えない態度を取り続けています。徴用工問題での最高裁判決に対して何ら方策を打ち出さないこともそうですが、朴槿恵政権時の慰安婦合意にかかわった官僚たちに対して懲罰的人事を行っているため、日韓関係良化のために働こうという人材がほとんどいなくなっているのです。

 12月24日付の朝鮮日報では、「日韓関係のために懸命に働いたという理由で積弊扱いされ左遷されるだけでなく、捜査対象になるとすれば、懸命に務める人などいない。両国間で懸案の調整を行うルートが消滅しかねない」と懸念する日本の外交筋の発言が掲載されていました。

 そのような状況を反映して、これまで公館ランクが最も高く人気の赴任先だった在日韓国大使館ですら、勤務希望者を3人募集しても応募者が1人もいないという事態となっています。これは外交部創設以来初めての事態だそうです。

 こうした文在寅政権の反日姿勢が、「徴用工問題」での最高裁判所の判決に影響したとしても不思議ではありません。そもそも現在の最高裁長官は文在寅大統領が指名したリベラル派です。「徴用工裁判」で日本企業が敗訴すれば日韓関係が崩壊に向かうことは明らかだったにもかかわらず、そのような判決を導く人材を長官に据えたのです。

 そして、まさに韓国軍でも同様のことが起こっている可能性があります。文在寅政権の反日姿勢を読み取り、日韓関係を改善するより、むしろ関係に亀裂を入れたほうが出世できると考えて行動する者がいてもおかしくありません。

 しかも、日本の場合は専守防衛のため、ロックオンされただけでは攻撃できません。相手から撃たれてはじめて反撃できるのです。韓国軍も当然、そのことはわかっているはずです。だから日本側をナメてロックオンなどというふざけたことをしてくるのでしょう。かつて中国海軍も自衛隊の護衛艦に火器管制レーダーを照射したこともありました。

 このようなことを考えれば、10月に韓国で行われた国際観艦式で、日本の旭日旗掲揚を控えるように要請する一方で、韓国海軍が李舜臣を称える「抗日英雄の旗」を掲げるという、きわめて非礼な暴挙に出た意味も理解できます。

 とはいえ、韓国軍は不祥事続きで、事故も多発しています。12月4日には、朝鮮日報が「軍、これでよいのか」という記事を掲載して、韓国軍の訓練中に起こった迫撃砲の誤射を批判しました。これに対し、南北融和による安全保障体制の変化によって、軍部の弱体化や規律の乱れを指摘する声も出てきています。

 そんな韓国軍が、挑発のために攻撃動作を行ったとして、いつ誤動作を引き起こしてしまってもおかしくありません。身の程知らずの火遊びほど、怖いものはありません。

◆協定や条約を否定する「革命政権」

 韓国の歴代大統領のほとんどが、暗殺されたり逮捕されたり、自殺するなど、ろくな末路を辿らないことは、よく知られている事実です。朴槿恵も李明博も逮捕されました。

 文在寅も同様の末路を迎えるのかどうかはわかりませんが、文在寅政権は前政権を崩壊に導いたうえで誕生したという、きわめて「易姓革命」に近い形で成立した左翼政権です。いわば「革命政権」ですから、いくら日韓が過去に約束し、協定や条約を結んでいても、すべて否定するのが「革命政権」というものです。

 加えて、もともと日本を仮想敵国にしている韓国では、いずれ南北が共同して日本を攻撃するということを夢想する意見や小説が少なくありません。

 その代表格といえるのが、1994年に韓国で出版されて250万部を超えるベストセラーとなった金辰明著の小説『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』です。その内容は、韓国を侵略しようとする日本に対して北朝鮮と韓国が同盟を組んで撃退、さらに東京、大阪などの5つの都市に核ミサイルを撃ち込むという話です。

 核ミサイルは韓国人の温情によって無人島に当てられますが、日本は降伏し、多額の賠償金を支払い、竹島の領有権を放棄、韓国が対馬を植民地にすることが決まります。

 荒唐無稽な内容ですが、このベストセラー小説は映画化もされて賞も受賞するなど、韓国人の心性にフィットしていることが伺えます。つまり、敵は北朝鮮ではなく日本であり、日本を懲らしめ、やっつけることが韓国人にとっての「正義」であり、ルサンチマンの解消だということなのです。

 ちなみにムクゲというのは韓国の国花であり、この小説において「ムクゲの花が咲く」というのは、韓国が日本を攻撃し打ち負かすことを意味しています。

 なお、日本統治時代以前の朝鮮半島は、はげ山だらけでした。燃料のためや、焼畑農業のために森林が伐採され尽くしたからであり、山々が無残な地肌を露呈していた様子は、イザベラ・バードら、李氏朝鮮時代末期に朝鮮半島を旅した西洋人たちの記録にも残っています。

 新渡戸稲造は朝鮮半島を「枯死国」と呼んでいましたが、そのような朝鮮半島に植樹し、緑を蘇らせたのが日本でした。現在の韓国で咲いているムクゲも、日本が再生させたものだと言われています。

◆日本の対韓国姿勢は大きく変更せざるをえない

 それはともかく、今後、日本の対韓国姿勢は大きく変更せざるをえないでしょう。日韓友好を叫びながら、日本批判や日本攻撃を繰り返す韓国は、何をやっても日本は怒らないと見くびっていることは明らかです。だから韓国では、日本は韓国の都合よく利用する対象であるという「用日論」が流行るわけです。

 このように韓国を増長させてしまったのは、日本側にも責任があります。何度ゴールポストを動かされても、日本は忍耐強く韓国のワガママに付き合ってきました。そのことが、韓国を勘違いさせてしまったのです。

 すでに韓国の勘違いは、両国間の軍事的一触即発を招くほどまでエスカレートしてしまいました。ここで日本が断固たる姿勢を見せなければ、韓国の勘違いはいつまで経っても治らず、さらに最悪の事態を招くことになるでしょう。


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