ブリタニカ・ジャパンも台湾正名で一歩前進か?

大阪支部副支部長 根屋雅光

台湾を中国の領土と説明するブリタニカ・ジャパンに訂正を求める議論を続けてまいりましたが、先方からは「今次の改訂は,お寄せいただきましたご指摘を踏まえ,弊社において判断いたしました」との回答をいただきました。

この回答は、他の出版社のような頑なな媚中思想に基づくよりは大きく一歩前進した回答と受け止め、「改訂版発売する時期を公表できる直前にでも知らせてくれるよう依頼して、ブリタニカ・ジャパンへのこれ以上の質問追求はいったん矛を収め改訂内容次第とすることとしました。

これまでのブリタニカ・ジャパンへの質問内容と回答・再質問の概要を簡略に記します。
本年2月末に以下の質問を個人名でしました。


件名国際大百科事典 小項目電子辞書版の記載内容

お問い合わせ内容

台湾の主要都市名を調べていたら、県庁所在地は全て、台北  ”中国、タイ ワン北部の県”台中  ”中国、タイワン中部の県”このように全て、中国の管理管轄下にあるような記述になっています。実 際と理念上とも大きく違っていると理解しています。台湾を中国の一部と主張しているのは中国一国だけであり、当の台湾も、また日本もそのように捉 えていません。ブリタニカ様のこれについてのお考えと、また内容を訂正する必要があると思っていますが、如何なされますかご判断をお聞かせくださ い。


上に対してブリタニカの当日深夜の回答の概要は以下のようなものでした。


各国情勢はもっぱら日本政府の見解に基づいて記述」台湾の扱いにつきましては,1972年の日中共同声明において「中華人民共和国政府は,台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は,この中華人民共和国政府の立場を十分理解し,尊重し,ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」とうたわれており,1998年の日中共同宣言でもあらためて「日本側は,日本が日中共同声明の中で表明した台湾問題に関する立場を引き続き遵守し,改めて中国は一つであるとの認識を表明する」と述べられておりますので,これまで,ご指摘にありますような表現を採ってまいりました。しかし一方で,台湾は多くの場で国家と同格に扱われ,また外交関係を有する国も国際連合加盟国の1割を超えていることから,現状に即した記述も必要と思われます。これを機に,より実態を反映した記述を検討してまいります。


そこで上記の回答に対し、以下の再質問を提出(3月17日)


『1972年の日中共同声明において「中華人民共和国政府は,台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は,この中華人民共和国政府の立場を十分理解し,尊重し,ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」と共同声明を持ち出してきています。 1998年の日中共同宣言でもあらためて「日本側は,日本が日中共同声明の中で表明した台湾問題に関する立場を引き続き遵守し,改めて中国は一つであるとの認識を表明する」と述べられておりますので,これまで,ご指摘にありますような表現を採ってまいりました。即ち、日中共同声明と共同宣言にあるように改めて中国は一つであるとの認識を表明しています。しかもこの部分を日本国政府も認識しているという理解に基づいて記述している』と主張なされています。 果たしてそうでしょうか。結論からいいましょう。サンフランシスコ講和条約の第二条のb項には、「日本国は、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」とあります。 つまり、終戦後に中国(中華民国)の占領下に置かれた台湾もまた、中華人民共和国に割譲しないまま放棄したわけです。 共同声明で日本側は「台湾を一部」とする「中国の立場」 を「理解し尊重する」と言っただけで、承認していないのです。日本政府は台湾を中国領と見ていないのです。台湾の帰属先は未定なのです。 共同声明で、「尊重する・理解する」という表現ができても「認める」とは表現できないのです。台湾は中国の一部と主張しているのは中華人民共和国なのです。現にアメリカも「台湾関係法」を作って台湾を中国の領土とは認めていません。 日本国政府の中途半端な態度をみると、それは「中国に遠慮して、正確には言いがたし」の結果と見るべきなのであります。貴社は「台湾は多くの場で国家と同格に扱われ,また外交関係を有する国も国際連合加盟国の1割を超えていることから,現状に即した記述も必要と思われます。これを機に,より実態を反映した記述を検討してまいります」と現状に則した記述も必要と主張されています。確かに現実に多くの国家が台湾を承認していますが、問題の本質は、承認数ではなくて日本と台湾の関係が論理的で整合性のあるものと判断すには、どのような関係と見るのが良いかという問題です。一番論理的であり、整合性のある考えは、「台湾は台湾であり、台湾は中国ではない」と言うことです。 小生の主張することが真実かどうか、必要なら外務省 などに政府が台湾を中国領としていないことを確認して欲しいし、我々もこれまで確認済みでもある。外務省に確認すると、中国に配慮して変な言い方をするかも知れないが、きちんと質問すれば、事実 をはっきり言わざるを得なくなるだろう。貴社が正確なご理解とご対応をなされ、検討ということでなく、真摯な態度で必要な訂正をなさることを心から希望するものです。2週間以内にご返事をいただけますようお願いします。
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これに対するブリタニカの回答は次。
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台湾に関する記事につきましては,特定の国・団体等の見解に特化せず,現状について記載することとし,現在,改訂の準備を進めております。
よろしくご理解のほど,お願い申し上げます。
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これを受け、小生は次のように。
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ブリタニカ・ジャパン!)様
3月30日付けでご返事をいただきました。
「改定の準備を進めていますのでご理解のほどを」という内容でした。

“成るほど、改定するのか”と納得できそうだったが、うっかりするとこのまま何の保障もなく貴社のお説に惑わされてしまう可能性がありますので、再確認します。

1、貴社は「特定の国・団体等の見解に特化せず」とご回答されています。ということは、質問にありましたように、日中共同声明を持ち出して、中国の言いなりの見解を示されたことに対しての「特定の国・団体等の見解に特化せず」というご見解と見受けました。
これまでの貴社の記述は「特定の国・団体等の見解に特化」していたという反省と受け止めたのですが、そのように理解して良いのでしょうか。

「現状について記載すること」とは、どのような現状についての記述になるのでしょうか。
私の質問で、現状を正確に、歴史的事実に沿った見解を披露して、中国の主張は事実に基づかないプロパガンダに過ぎないことを申しましたが、どのような現状認識を為さるのでしょうか。少なくとも貴社の記述に問題があると指摘させていただいた者として、新しい記述の基本的概要をお尋ねするのは、質問の回答として記述変更を約された以上当然のことと存じます。

改定の内容が、現在のものと大きな変化がない場合には、質問をして改定するという約束をいただいた者として再質問をせざるを得ないし、しかも長時間をかけてのうえならば、時間の無駄といわざるを得ません。

確かに、編集権は貴社にあるのですが、多くの国民が利用するという辞典の性格上、正確さを保証する為にも改定内容の基本的概要をお尋ねするものです。
     5月3日
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5月7日にブリタニカから回答。
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台湾の記述に関するご質問にお答えいたします。

改訂予定の記事につき具体的な記述に関するご質問をいただきましたが,申し訳ございませんが,出版前の内容に対する個別のお問い合わせにはお答えできません。今次の改訂は,お寄せいただきましたご指摘を踏まえ,弊社において判断いたしました。ご意向に沿うよう個々にお約束申し上げるものではございませんので,ご了承ください。
よろしくご理解くださいますよう,お願い申し上げます。

ブリタニカ・ジャパン株式会社
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そこで小生は、5月9日 改訂時期を求めました。
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5月7日付けの回答いただきました。
「出版前の内容に対する個別のお問い合わせにはお答えできません。」とのことですが、この点に限り了解するものです。

『今次の改訂は,お寄せいただきましたご指摘を踏まえ,弊社において判断いたしました。』とありますので、改訂された記載内容が、前途ある日本青年の知的水準高揚に資する辞書という書籍の記載内容に関するものだけに、大いなる関心を持たざるを得ません。

そこで、許容範囲内で結構ですので改定される時節が判明しましたなら、教えてくださるようお願いするものです。
        平成22年5月9日



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