周知のように、台湾は半導体生産のキープレーヤーであり、トッププレーヤーだ。台湾の経済部によると、2020年時点で台湾のファウンドリー(半導体の受託生産)は世界シェアの7割を占め、世界1位の台湾積体電路製造(TSMC)だけでシェア50%を超えるという(6月21日付「ジェトロ地域・分析レポート」)。
自民党総裁選さ中の9月20日に行われた高市早苗候補と台湾の蔡英文総統のオンライン会談でも、高市議員が、日台の実務関係には「平和的秩序の安定を支える安全保障関係も含むと考えます」と述べ、蔡総統が望んでいた日台の安保対話は可能という見解を示すとともに、この安全保障には経済安全保障も含むとし、TSCMの生産拠点の日本への移設のみならず、日台が手を携えて先導してゆくべきと述べたことに対し、蔡総統も「まさにおっしゃるとおりですね。日本と台湾がサプライチェーンをめぐる協力を深めること。この点に関して、私は大いに期待しています」と応答するなど、二人の見解はほぼ一致していた。
この会談で出てきた「台湾積体電路製造(TSMC)」の生産拠点の日本移設が着々と進んでいるようだ。新しい工場を熊本県に建設する案が浮上し「熊本県菊陽町にあるソニーグループの半導体工場の隣接地が検討されている」と朝日新聞は報じている。
また、10月9日のテレビ熊本は「台湾のTSMCはソニーグループと半導体の新しい工場を菊池郡菊陽町にあるソニーの工場に隣接する場所に共同建設する検討に入った」と伝え、「熊本県の蒲島知事は『県としては話をまだ聞いていない。日ごろから熊本県の半導体関連企業の集積を活かし、熊本の地から国の経済安全保障の一翼を担いたいと考えていて、実現すれば、大変うれしい話です』とコメント」したという。
すでに台湾積体電路製造(TSMC)の研究開発の拠点は茨城県つくば市につくられることが決まっており、熊本に工場を建設することは、蔡英文総統が期待する「日本と台湾がサプライチェーンをめぐる協力を深めること」に他ならない。経済安全保障の観点から、ぜひ政府としても全面的にバックアップしてもらいたいものだ。
—————————————————————————————–半導体大手の台湾TSMCが熊本に新工場検討 日本政府が巨額支援か【朝日新聞:2021年10月9日】
半導体の受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が、新しい工場を熊本県に建設する案が浮上している。半導体の工場の新設には巨額の費用がかかり、日本政府が数千億円を支援する可能性がある。半導体は重要性が高まっており、政府は経済安全保障の観点からも工場を誘致したい考えだ。
新工場の場所は、熊本県菊陽町にあるソニーグループの半導体工場の隣接地が検討されている。ソニーはTSMCから大量の半導体を調達しており、新工場の運営でも協力することが想定される。建設費や政府の支援額などは、これから調整が進むとみられる。
半導体はコロナ禍で需要がふくらみ、世界的に不足が続く。経済産業省は6月に半導体・デジタル産業戦略をまとめた。安定した供給体制をつくるため、TSMCなどの工場誘致をめざしていた。
TSMCは、研究開発の拠点を茨城県つくば市につくることが決まっている。経産省は投資額の約半分にあたる約190億円を補助する方針だ。TSMCの魏哲家・最高経営責任者(CEO)は7月の会見で、日本での工場建設を検討していることを示唆していた。(若井琢水)
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