コロナ後を見据え四国でも台湾からの教育旅行誘致をめざす動き

 新型コロナウイルスが下火となり、日本と台湾が自由に行き来できるようになることを見越した動きが観光業界などに見られるようになってきています。

 その一つが、本誌でも溶解した、伊豆半島の観光振興を推進する「一般社団法人美しい伊豆創造センター」と、台湾に本社を置くオプショナルツアー予約サイトを運営するオンライン旅行会社「KKday(ケイケイデイ)ジャパン」が3月29日に「伊豆半島の観光振興に関する包括連携協定」を締結したことです。

 美しい伊豆創造センターの「伊豆半島観光戦略アクションプラン」を拝見しますと、誘客ターゲットの第一は台湾とタイです。

 一方、四国でもコロナ後を見据え、四国4県や観光団体でつくる「四国ブロック広域観光振興事業推進協議会」(泉雅文会長)が台湾からの修学旅行(教育旅行)を誘致しようと「四国交流支援特使」制度を設け、4月26日に「香川県商工会議所連合会や徳島台湾研究会、高松市、松山市などの観光担当部門の役職者のほか、観光団体の代表者や大学教授ら28人」に委嘱したと日本経済新聞が報じています。

 これまでも台湾からの教育旅行の円滑な受け入れや学校交流・民泊の調整支援など、充実した教育旅行の達成に取り組んできた「四国ブロック広域観光振興事業推進協議会」は、台湾との教育旅行を推進する四国で唯一の団体だそうで、四国運輸局、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、(一財)徳島県観光協会、(公社)香川県観光協会、(一社)愛媛県観光物産協会、(公財)高知県観光コンベンション協会、(公社)日本観光振興協会四国支部で構成しているそうです。

 台湾教育旅行の誘致には2011年から着手し、これまで55校の教育旅行を受け入れ、台湾と四国の11校の姉妹校提携を実現させているそうです。また、2019年11月には、台湾と四国の教育旅行を中心とした相互交流が将来にわたって一層活性化することに取り組むことを約束する「包括連携協定」を「台湾國際教育旅行聯盟」(現在は台湾國際教育旅行聯盟2.0)と締結したそうです。

 本誌でもたびたび日台高校生の海外修学旅行先について、文部科学省が2年ごとに発表している「高等学校等における国際交流等の状況について」や全国修学旅行研究協会が発表している「全国公私立高等学校の海外修学旅行実施状況」などの調査から台湾に特化してご紹介しています。

 コロナ前の2017年度の文部科学省発表によりますと、日本から台湾への修学旅行は5万3,603人(332校)でダントツの1位で、2位のアメリカ(2万8,355人、208校)、3位のシンガポール(2万7,015人、142校)を大きく引き離しています。

 一方、台湾から日本への教育旅行も1万3,392人(401校)と、2位の韓国(5,774人、237校)、3位の中国(4,127人、166校)を大きく引き離して1位となっています。

 ちなみに、日本の高校生総数は322万6,017人、高校数は3,516校(2018年)で、2017年度に海外修学旅行を実施した高校生は17万9,910人(1,337校)。台湾の高校生総数は74万5,669人、高校数は513校(2019年)ですから、実に台湾の高校の78%が日本を教育旅行先に選んでいることになります。

 早くこのコロナが収まり、日台の高校生などが自由に行き来できる日が来ることを切に願っています。

◆四国ブロック広域観光振興事業推進協議会:訪日台湾・四国教育旅行サポートセンター https://www.taiwan-shikoku.com/

—————————————————————————————–四国で教育旅行 4県が台湾の学生誘致、JTBはSDGs商品【日本経済新聞:2022年5月2日】https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC271V40X20C22A4000000/

 四国を教育旅行の場として需要を掘り起こす動きが盛んになってきた。四国4県や観光団体でつくる「四国ブロック広域観光振興事業推進協議会」は4月、台湾からの教育旅行の受け入れを支える特使制度を創設。JTBは4月から四国のSDGs(持続可能な開発目標)に絞ったグループ・団体旅行を催行している。新型コロナウイルスの収束後を見据えて観光産業の活性化につなげる。

 同協議会は「四国交流支援特使」の制度を設け、4月26日に委嘱した。香川県商工会議所連合会や徳島台湾研究会、高松市、松山市などの観光担当部門の役職者のほか、観光団体の代表者や大学教授ら28人が選ばれた。

 台湾の教育旅行は一般家庭に宿泊する国際交流と文化体験が必須項目となっている。特使は台湾との交流やインバウンド(訪日外国人)の誘致活動に取り組んでいる団体に所属しており、台湾側の要望に沿った調整役となる。

 特使らは委嘱式に先立って、国の特別名勝「栗林公園」(高松市)を視察し、抹茶や和船を体験したほか、イベントホールなどの施設を見学した。抹茶体験はこれまでも台湾の観光客らに人気があるという。

 同協議会によると、台湾は2021年から教育旅行の推進体制を刷新して事業を強化している。高校生だけではなく、小中学校にも教育旅行を拡大させようとしているほか、大学生との交流、企業視察、SDGsが新たな旅行テーマになっているという。

 国内では自治体ごとにインバウンドの受け入れ体制を整備しているが、同協議会は四国4県が一体となって誘致する利点を強調する。体験メニューなどを広域的に展開できることで日程調整がしやすくなるとみる。

 一方で、JTBは4〜9月までの旅行企画「日本の旬 四国」の中で、グループ・団体用の「SDGs視察・学びプログラム」を設定した。SDGsをテーマに特集したのは今回が初めてで、四国にあるJTBの各支店が商品化した。

 プログラムは合計11コースある。ごみ排出量ゼロ宣言で注目を集める上勝町ゼロ・ウェイストセンター(徳島県上勝町)など、四国各県でSDGsのテーマで学べる内容を提供する。学生団体などから問い合わせや申し込みが来ており、愛媛県内ではマイントピア別子(新居浜市)やとべ動物園(砥部町)などでSDGsを学ぶコースが人気を集めているという。

 観光地の紹介もSDGsを意識した見直しが進んでいる。香川県の小豆島町は21年、オランダの非営利団体グリーン・デスティネーションズから「世界の持続可能な観光地TOP100選」に選定された。

 地元の観光団体は「修学旅行先として様々な問い合わせが来ている」と話す。小豆島町では棚田や景勝地「寒霞渓」の保全活動に加え、特産オリーブの有効活用や平和教育などで「二十四の瞳映画村」も紹介している。

(竹内雅人)

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