【産経新聞:平成24(2012)6月24日「書評」】
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120624/bks12062408330009-n1.htm
米国が中枢同時多発テロの「9・11」を境に変わったように、日本は東日本大震災の
「3・11」を境に誰が友で、誰が敵なのかを明確に意識するようになった。いわば大震災が
友と敵を仕分けした。
本書を一読すれば、その理由と背景がたちどころに分かるだろう。
米軍は震災発生と同時に人員2万人、航空機、艦船をもって「トモダチ作戦」を展開し
た。中国からも15人の救援隊が送られてきたが、帰国すると、代わりに武装艦船を尖閣諸
島沖に送りつけてきた。ロシア軍も軍用機を日本領空に接近させた。自衛隊機が緊急対応
させられるから、復旧の足を引っ張った。
幸いなのは、93の国と地域が計175億円の義援金を送ってくれたことである。台湾から
は、単独で200億円にのぼった。ところが、政府は大震災の1周年追悼式典に、台湾代表を
外交団リストからはずした。著者は「台湾への非礼、日本人として恥ずかしい」と外務省
を批判する。
この一事をもって、日本を取り巻く国際環境が過酷で、複雑であることが分かる。そし
て、この一書をもって、「だれが日本の領土を守るのか?」という重要課題の答えを理解
することができる。
わが日本には、北方領土よりも札幌雪祭りを優先する自民党首相がいた。「日本列島は
日本人だけのものではない」と平然といってのける民主党首相がいたりする。韓国に不法
占拠されている竹島に、政治家たちは冷たい。
本書の白眉は、著者が義憤に駆られて平成16年3月に島根県松江市役所で本籍地を竹島に
移す場面だ。著者が本籍を移したとたんに、脅しの電話があり、逆に韓国から竹島への招
待が飛び込んできた。だが、旅券使用で竹島に上陸すれば、島が韓国領土であることを認
めてしまう。
一事が万事で、腹黒い隣人たちの外交詐術は止めどない。対する日本は、「専守防衛と
いう幻想」を抱え、サイバー攻撃への備えが遅れ、わが尖閣への日本人上陸を認めない。
著者は「虚構の平和論では国は守れない」と言い続けている。
◆ 濱口和久著『だれが日本の領土を守るのか?─今、日本の国土が危ない!』
たちばな出版、2012年5月31日刊、定価:1,470円(税込み)
http://www.tachibana-inc.co.jp/detail.jsp?goods_id=2941