【祝】 日台間で税関支署の協力と青少年交流の強化に関する覚書

 日台貿易経済会議は、カウンターパートナーの日本台湾交流協会と台湾日本関係協会が日台経済関係全般を議論することを目的に、1976年(昭和51年)に第1回会議を開催している。

 また、2014年6月、今後の日台経済関係の発展の方向性について分野横断的に検討し、提言を行うことを目的に「日台経済パートナーシップ委員会」(EPC)が初めて設置され、2014年11月の第39回日台貿易経済会議に合わせ、11月18日に台北市内において第2回会合が開かれている。ただ、それ以降は開かれていなかったという。

 去る1月11日、オンライン形式で第45回日台貿易経済会議の開会式があり、2月18日に閉会式が行われた。

 日本台湾交流協会の大橋光夫会長は閉会の挨拶で、双方が関心を有する総合的な貿易、投資の発展の議題について議論してゆくために「台日経済パートナーシップ委員会」の再開を提案、EPC再開は台湾のTPP加入を実現するために非常に重要な提案だとして、台湾日本関係協会の邱義仁会長は早期再開を望む考えを示したという

 第45回日台貿易経済会議の終了後、台湾日本関係協会と日本台湾交流協会は「税関支署の協力に関する台日間覚書」と「日台青少年交流の強化に関する覚書」に署名したと報じられている。

 日本台湾交流協会のホームページによると、「税関支署の協力に関する日台間覚書」の正式名称は「税関支署の協力に関する公益財団法人日本台湾交流協会と台湾日本関係協会との間の覚書」で「日本側は東京税関羽田支署、台湾側は台北税関松山分関という、双方の税関支署が有する知識及び経験の共有などの協力を通じ、貿易円滑化及び国際貿易における安全確保へ貢献することを目的として、日本台湾交流協会と台湾日本関係協会が、日台両当局及び両税関支署の必要な同意を得られるように相互に協力するという内容」だという。

 一方の、「日台青少年交流の強化に関する覚書」の正式名称は「公益財団法人日本台湾交流協会と台湾日本関係協会との間の青少年交流の強化に関する覚書」で、「青少年交流が日台間の相互理解を深める上で重要な役割を果たしていることを認識し」「可能な範囲で、協力し、及び支援を行う」こととし、下記の3項目を謳っている。

(1)教育(研修及び修学)旅行への支援を目的とした教育旅行に関連するシンポジウム、説明会等の活動。(2)相互訪問、留学、共同研究、スポーツ、文化芸術等の青少年交流活動。(3)青少年の在籍する学校及びその教員を対象とした、日本と台湾の青少年の相互理解及び友好を深める交流活動。

◆公益財団法人日本台湾交流協会と台湾日本関係協会との間の青少年交流の強化に関する覚書 https://www.koryu.or.jp/Portals/0/MOU/seishonenkoryu.pdf

 台湾と外交関係がない日本は、台湾とは「非政府間の実務交流」を掲げ、これまで断交直後の1972年12月26日に台湾の亜東関係協会(現在に台湾日本関係協会)と交わした「財団法人交流協会と亜東関係協会との間の在外事務所相互設置に関する取決め」に基づいて交流の円滑化を図ってきた。

 これまで「出入国管理分野における情報の交換と協力」や「租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止」など、政府でなければできない対処できない事項にまで立ち入った「取決め」などもあり、30件以上に及んでいる。日台双方に深い信頼関係がなければとても成り立たない「取決め」である。その点では、今回の「税関支署の協力に関する台日間覚書」と「日台青少年交流の強化に関する覚書」に祝意を表したい。

 ただし、日台がどれほど深い信頼関係に結ばれていても、民間団体である公益財団法人日本台湾交流協会と台湾日本関係協会にはできないことがある。それが安全保障に関する政府間対話だ。日本の外務省と台湾の外交部、防衛省と国防部がダイレクトに対話し情報を交換することは、民間団体である公益財団法人日本台湾交流協会と台湾日本関係協会にはできない。

 また、このような「取決め」をなにで保証するのかと言えば、法的な裏づけはない。せっかく積み上げてきた「取決め」も、双方の政治状況により、一夜にして機能しなくなる可能性がある。条約でさえ反故にされてきた歴史を顧みれば、特殊とはいえ民間団体による「取決め」が条約以下であることは明白なことで、法的に担保されない砂上の楼閣的な不安定さを抱えていることは疑えない。

 しかし、それを可能にするのが、米国が制定している「台湾関係法」のような国内法だ。この国内法で台湾と情報交換を謳い、これまでの取決めを保障する旨をいれておけば、政府間対話は可能となり、「取決め」も法的裏付けされることになる。

日本李登輝友の会が提案している「日台交流基本法」は、日台関係をさらに盤石にすることを目的として提案されたものだ。台湾有事は日本有事と取り沙汰される現在、早急に制定されなければなるまい。

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