張が流れ始めている原因について「中国の宣伝工作」を示唆している。
確かに「中国の宣伝工作」の巧みさと沖縄メディアの反日的傾向などを考えれば説得力
はある。だが、沖縄には台湾出身者も少なくない。県民の台湾への親近感は他県に比べ際
立っている。
そうすると、台湾の馬英九総統が昨年8月5日に発表した「東シナ海平和イニシアチブ」
を思い出さざるを得ない。この東シナ海平和イニシアチブでは「この地域の持続的平和と
安定、経済の発展と繁栄、海洋生態の永続的発展を促進させる」として、その5項目目に
「東シナ海の資源を共同開発するためのメカニズムを構築する」と謳っているのだ。
もちろん、このイニシアチブの冒頭では「中華民国政府は、釣魚台列島は台湾の付属島
嶼であり、中華民国の固有領土であることを改めて表明する」と、領有権を主張した上
で、耳触りのよい「共同管理」を提案、そして「二国間あるいは多国間の協議メカニズム
を促し、相互信頼と共同利益の強化を図る」(「東シナ海平和イニシアチブ」推進綱
領)、つまり、台湾と日本だけではなく、中国を入れた「多国間での協議」を提唱してい
るのである。
「尖閣を、日本と中国、台湾の共同管理に」という主張は、まさしく馬英九氏の「東シ
ナ海平和イニシアチブ」の主張そのものだ。
「中国の宣伝工作」もさりながら、親台湾派の多い沖縄でこの「東シナ海平和イニシア
チブ」が受け入れられ始めているのかもしれない。
だが、馬英九氏の主張は、あくまでも「尖閣は中華民国の固有領土」が前提であること
をユメお忘れなく。また、馬英九氏は尖閣では中国と手を組まないと公言していたことも
忘れてはならない。
中国の工作か 沖縄で尖閣共同管理案浮上 メディアや識者が無意識に影響受けた可能性も
【ZAKZAK(夕刊フジ):2013年1月29日】
安倍晋三首相は28日の所信表明演説で、沖縄県・尖閣諸島をめぐる中国の挑発に対し、
「領土・領海・領空は断固として守り抜く」と訴えた。ところが、沖縄県内では「尖閣
を、日本と中国、台湾の共同管理に」といった主張が流れ始めている。日本の主権放棄に
近い意見だが、実は、中国共産党政府が昨年決定した「対日工作方針」と重なる部分があ
る。公安関係者は「中国の宣伝工作が浸透している可能性もある」と警戒している。
共同管理案は最近、沖縄県内でジワジワと広まっているという。
同県出身のジャーナリスト、仲村覚氏は「メディアや識者が『尖閣を共存・共生の場
に』とか『共同開発』『日本、中国、台湾の協議機関設置』と主張している。日中衝突を
避けるという理屈だが、日本政府の『尖閣は日本固有の領土』という基本姿勢を後退させ
るものだ」と語る。
不思議なことに、これらの動きは中国共産党政府の意向とダブるのだ。
共同通信は昨年11月2日、「共同管理へ定期協議要求」「対日工作トップに習近平氏」
「中国、尖閣で方針固める」とのタイトルで、北京発の以下の記事を配信した。
≪中国政府が、尖閣をめぐり領有権争いが存在することを日本側に認めさせた後、尖閣周
辺海域の共同管理などを話し合う定期協議を求めるとの対日外交方針を固めたことが2日、
分かった≫
≪胡錦濤指導部は9月、日本に(尖閣)国有化を撤回させるため、(1)持久戦(2)外交
戦(3)経済戦─を展開する大方針も策定。対日工作調整委員会を設置し、トップに次期
最高指導者に内定している習近平国家副主席を指名した(抜粋)≫
元公安調査庁第2部長の菅沼光弘氏は「中国共産党は、日本のあらゆる分野に工作員や協
力者を浸透させ、世論誘導を狙っている。本人にまったく意識がなくても、結果的に、政
治家やメディア、学者がこうした影響を受けている可能性は十分ある」という。
中国はかつて「人民解放」という大義を掲げてチベットに侵攻した。最近、中国国内で
は「日本は琉球(=沖縄)を中国から強奪した」という主張も聞かれるが、沖縄県民に危
機感はないのか。
前出のジャーナリスト、仲村氏は「県民の中にも、危機感を持っている人は多い。オス
プレイ配備反対を含め、メディアの報道は必ずしも県民意識と一致していない。安倍政権
は幅広い県民の声を拾い上げるべきだ」と語っている。