台湾の総統選はこれまでの世論調査で与党・民進党の頼清徳候補(64)が終始リードし、台湾民衆党の柯文哲候補(64)と中国国民党の侯友宜候補(66)が追いかけ、鴻海精密工業創業者の郭台銘氏(73)も出馬に意欲を見せていた。
頼候補の優勢をひっくり返そうと、中国国民党の馬英九・元総統が仲介し、中国国民党と台湾民衆党の候補者一本化を図るという奇策を仕掛けたものの、結局、一本化には至らなかった。総統選に勝ちたいというたった一つの共通項にすがる「野合」でしかないので、候補者一本化はかなり難しいだろうと見ていたが、柯文哲候補は組織力のある国民党に利用されるだけと見越していたのだろう。
頼清徳候補はその「野合」を尻目に11月21日、副総統候補の蕭美琴・駐米台北経済文化代表処代表を伴って中央選挙管理委員会に立候補を届け出た。柯文哲候補と侯友宜候補らは11月15日から23日まで一本化に向けた調整をしていたが破綻。
また、郭台銘氏は立候補を断念し選挙戦から撤退した。立候補の届け出に必要な署名約29万人の3倍以上の90万人を超える署名は、やはり民進党支持者が多かったのかもしれない。
立候補届出日の最終日に当たった11月24日、柯文哲候補は副総統候補に昨年2月の補選で当選したばかりの1年生議員の呉欣盈(ご・きんえい)立法委員(45)を伴って中央選挙管理委員会に立候補を届け出、すぐそのすぐ後、侯友宜候補が副総統候補として中国廣播公司董事長で一度は中国国民党と袂を別った出戻りの趙少康・元立法委員(73)を伴って立候補を届け出た。
頼清徳候補の優勢は動かないだろう。組織の脆弱な台湾民衆党の柯文哲候補は世論頼み。柯候補が「野合」に同意しなかったことで世論を引きつけられるかどうかが見どころか。いまのところ中国国民党の侯友宜候補に世論の支持が高まる要素は見当たらない。一本化工作には中国の影も見え隠れしていたので、組織頼みの選挙となりそうだ。
総統選と同時に立法委員選挙が行われる。立法委員の現有議席は民進党62、国民党37、民衆党5。民進党が全113議席の単独過半数の57議席を獲得できるかどうかに注目が集まっている。
—————————————————————————————–野党一本化ならず、各自立候補届け出【台湾国際放送:2023年11月24日】https://jp.rti.org.tw/news/view/id/98225
台湾の次期正副総統選挙及び立法委員(国会議員)選挙は2024年1月13日に行われ、立候補の届け出は24日で締め切られます。
野党、台湾民衆党と国民党との候補一本化が実現せず、台湾民衆党の柯文哲・主席が24日午前、副総統候補に選ばれた同党の立法委員である呉欣盈氏とともに、中央選挙委員会で立候補を届け出ました。
柯文哲・主席は、立候補を届け出る前に、まず談話を発表しました。
柯文哲・主席は、「この国家の未来は、市民によって決定されるべきである。これは、民主主義の核心価値である。民主主義が私たちを団結させ、私たちの本当の未来へと向かわせよう。 今度こそ、私たちは国だけでなく、未来も取り戻す。今度こそ、私たちは承諾を実現し、決して引き下がらない。なぜなら、これは私たちの国であり、私たちの未来だからである。皆さん、ありがとうございます。」と話しました。
柯文哲氏と呉欣盈氏とのペアは、与党、民進党の頼清徳氏と蕭美琴氏のペアに続いて、二番目に立候補を届け出た陣営です。
一方、国民党は24日午前、中央常務執行委員会(中常会)を開き、国民党の公認候補である侯友宜氏は、台湾最大の民間放送局、中国廣播公司(BCC)の趙少康・董事長(会長)を副総統候補に選んだことを発表しました。その後、侯友宜氏と趙少康氏は中央選挙委員会へ立候補を届け出ました。
侯友宜氏と趙少康氏は立候補を届け出た後、インタビューに応じました。趙少康氏とのコンビが、国民党にある本土派と外省派の間で互いにプラスの効果があるかどうかについて、侯友宜氏は、趙少康氏と一体となり、民族を融合する。さらに重要なのは、台湾のすべての人が一緒に良くなっていくことである。みんなでこの困難な選挙戦に立ち向かい、最終的には勝利を収めるだろうと語りました。
国民党と民衆党の候補者一本化はならなかったことに関して、民進党の許立明・秘書長は、インタビューを受けた際、何組の候補者がいようとも、民進党は自らのペースと歩みに従って前進すると示しました。また、国民党と民衆黨が副候補者を公表したことに対しては、許立明・秘書長は尊重と祝福の意を表しています。
(編集:許芳[王韋]/中野理繪/本村大資)
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