「日台与党版2+2(外務・防衛担当者協議)」の会談内容と台湾PT提言

 8月27日、自民党からの呼び掛けにより、日台の与党である自民党と民進党にとって初の取り組みとなる会談「日台与党版2+2(外務・防衛担当者協議)」がオンラインで開催されました。

 日本側の出席者は、自民党外交部会長で「台湾政策検討プロジェクトチーム(台湾PT」座長でもある元外務副大臣の佐藤正久・参議院議員と。安倍内閣で財務副大臣や内閣府副大臣をつとめた国防部会長の大塚拓・衆議院議員。 台湾側は、民進党本部国際部主任で安全保障問題にも造詣が深い羅致政(ら・ちせい)立法委員と立法院の外交・国防委員会委員を長期にわたり務めてきた蔡適応(さいてきおう)立法委員でした。

 会談は約1時間半行われ、NHKは「会談では、覇権主義的な行動を強める中国をけん制するため、日本政府や台湾当局に対し、海難救助の共同訓練など安全保障分野で共通の政策を策定するよう働きかけることで一致しました」と報じています。

 また産経新聞は「会談では、日台の海上保安機関などによる海難救助協力や、世界保健機関(WHO)といった国際機関への台湾の参加を促進していく方針で一致。台湾と国交がある国に断交を迫るなど、中国の外交圧力に連携して対処すると申し合わせた」と伝えています。

 朝日新聞は「日台の議員は、世界保健機関(WHO)など国際機関への台湾の参加促進のほか、台湾と外交関係がある国に断交を迫るといった中国の外交圧力に連携して対処していく方針で一致した。……参加した民進党の蔡適応立法委員は会見で、日本側が日米台での海上警備について合同訓練をすべきだとの認識を示したと紹介。『台湾は(3月に)米国と海上警備について覚書を結んでいる。日本とも協力を強化すべきだ』と語った」と伝えていました。

 主な日本メディア3紙を紹介しましたが、どうも輪郭がはっきりしない印象が残ります。しかし、台湾メディアはより具体的に報道しています。

 例えば中央通信社は「会談後の記者会見で羅氏は、台湾積体電路製造(TSMC)を含む半導体産業の協力を政府が後押しするかが会談の焦点になったと説明。また、日本側からは環太平洋経済連携協定(TPP)への台湾の参加を全力で支持、支援する意向が示されたと明らかにした。米日台の協力の今後の方向性や、第三国における台湾と日本の具体的な協力の方法についても話し合った」と報道しています。

 台湾国際放送も「国防の議題は今回の会談の焦点の1つ。双方は軍事交流についても意見交換しました。……日本、台湾、アメリカの間の海上保安の連携強化についても意見が交わされました。詳細は、日本の海上保安庁に相当する海岸巡防署と話し合うということです」と、日米台の海上保安の連携強化について、具体的に日本の海上保安庁と台湾の海岸巡防署が話し合うことを報じています。

 実は、佐藤正久議員が座長をつとめる台湾政策検討プロジェクトチームは6月1日、第一次提言を発表しており、提言は多岐にわたっていますが、すでにこの提言で「海難救助という観点から、情報連絡体制を構築しておくとともに、共同訓練などを通じて人的交流を促進し連携強化を図るべき」と述べています。

 また、会談で焦点になったというTSMCを含む半導体産業の協力を政府が後押しするかについても、この提言では「TSMCはじめ台湾企業が共同でサプライチェーンを構築できる環境を整えるべき」と述べていました。

 そもそも日台の与党同士による安全保障会談は佐藤正久・台湾政策検討プロジェクトチーム座長から発議された提案であり、自民党政務調査会で了承され、菅義偉総理に手渡されたその第一次提言に基づいて対談内容が構成され、それを台湾側と意見を交換することで具体的な計画を一歩進めたのではないかと思われます。

 事実、佐藤議員はフィナンシャルタイムズのインタビューに、会談内容の一部について、台湾との関係強化のため海上での自然災害及び事故に対する合同救助訓練を要請する計画だと明らかにしていました。

 下記に台湾政策検討プロジェクトチームの「第一次提言」をご紹介するとともに、台湾国際放送の記事をご紹介します。

◆外交部会 台湾政策検討プロジェクトチーム 第一次提言[6月3日] https://www.jimin.jp/news/policy/201712.html

—————————————————————————————–台日与党初の安保対話、海上保安連携強化で一致【台湾国際放送:2021年8月27日】https://jp.rti.org.tw/news/view/id/94021

 台湾の与党・民進党と日本の自由民主党が27日、オンライン会談「外交・防衛政策意見交流会」を行いました。民進党からは羅致政・立法委員と蔡適応・立法委員が出席。自民党からは外交部会長の佐藤正久参院議員と国防部会長の大塚拓衆院議員が出席しました。

 台湾と日本との軍事面と安全保障面での連携に注目が集まっています。蔡適応・立法委員によりますと、国防の議題は今回の会談の焦点の1つ。双方は軍事交流についても意見交換しました。それらの意見は台湾と日本の国防と防衛機関に参考として提供します。佐藤正久議員が主張していた、日本、台湾、アメリカの間の海上保安の連携強化についても意見が交わされました。詳細は、日本の海上保安庁に相当する海岸巡防署と話し合うということです。

 蔡適応・立法委員は、「海上保安について、台湾と日本は共通認識を持っていると信じている。台湾と日本の周辺の海域はつながっているから、海難救助、海上演習、人道的な救援活動の演習などは必要と思う」と話しました。

 羅致政・立法委員によりますと、台湾と日本は経済面における協力関係の推進に合意しています。台湾の半導体産業の日本への投資がその1つです。日本は台湾による「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」への参加に協力することを承諾し、台湾のCPTPP加盟は、環太平洋地域と台日関係にとって重要な目標であるとの見方を示しました。

(編集:曾輿?/王淑卿)

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