歴史を画す李元総統7度目のご来日  柚原 正敬(常務理事・事務局長)

月刊「致知」11月号掲載の李登輝元総統と下村博文・文部科学大臣の対談を掲載したが、ここで
改めて李登輝元総統のご来日の全貌について、機関誌「日台共栄」10月号からご紹介したい。

 なお、この柚原事務局長のレポートは、越野充博氏(常務理事・JET日本語学校理事長)の巻頭
エッセイ「バシー海峡の戦没者慰霊祭」や佐藤健一氏(神職・本会会員)の「屏東・高士村に高士
神社を再興」などとともに、本会ホームページで、PDF版で掲載している。

◆機関誌「日台共栄」10月号
 http://www.ritouki.jp/index.php/magazine/magazine038/

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歴史を画す李元総統七度目のご来日─超党派の国会議員が招聘して実現した断交後初の講演会

                             常務理事・事務局長 柚原 正敬

◆白眉は衆議院議員会館の講演会

 去る7月21日、李登輝元総統が昨年9月に続いて来日された。羽田空港に、本会会員らが日の丸の
小旗や緑の台湾旗で歓迎する中、お元気な様子で降り立たれた。

 今回、曾文恵夫人は体調を崩したため来日を中止されたが、李安娜、李安妮さん姉妹、李安
妮さん夫君の頼國洲氏、若くして癌で亡くなった長男の李憲文氏夫人の張月雲さん、令孫の李
坤儀さんの5人を伴って来日された。

 総統を退任してから7度目の来日となり、5泊6日の充実した日程をこなし、26日に仙台空港から
ご家族とともに元気に帰台された。

 今回のご来日の白眉は、何といっても衆議院第一議員会館で開催された講演会であろう。主催
は、安倍内閣の麻生太郎・財務大臣と下村博文・文部科学大臣の現役閣僚2人を含む、超党派の衆
参国会議員40名が発起人となって設立した「李登輝先生の講演を実現する国会議員の会」。昭和47
年9月に日台が断交して以来、日本の国会議員が台湾要人を招聘するのは初めてであり、国会内施
設で講演会を開くことも初めてだった。

 そればかりではない。講演会には全国会議員の40.7%に当る292人が出席、秘書等の代理112人を
含めると実に56.3%に当たる404人が出席した。

 7月22日の講演会当日、李元総統は宿泊先のザ・キャピトルホテル東急から車に乗り、衆議院第
一議員会館に到着。玄関で待ち受けていた日台若手議連会長の岸信夫・衆議院議員が控室へ案内。
ここで下村博文・文科大臣などとしばし歓談。それから岸議員が司会をつとめる講演会に臨み、
「台湾のパラダイムの変遷」と題して話された(本誌4頁参照)。

 講演が終わるや、なんと議員の方々が次々と立ち上がって拍手し始めた。音楽会などではよくス
タンディングオベーションを見かけるが、講演会では珍しい。国民を代表する国会議員が惜しみな
い拍手を送り続けたのだった。

◆本会主催の歓迎晩餐会

 国会での講演を終えられた李元総統は、ザ・キャピトルホテル東急において午後7時から開かれ
た本会主催の歓迎晩餐会に臨まれた。

 王明理・理事と梅原克彦・常務理事のW司会で始められた晩餐会には約200人が集い、まず本会
を代表して川村純彦・副会長が開会の挨拶を述べ、渡辺利夫・拓大総長と葛西敬之・JR東海代表
取締役名誉会長が来賓を代表して挨拶。これに答えて李元総統がご挨拶(12頁参照)。引き続き、
作家の曽野綾子さんが花束を贈呈し、JET日本語学校名誉理事長の金美齢さんに乾杯の発声をい
ただいた。

 宴たけなわとなったところで、岸信夫・衆院議員、小池百合子・衆院議員、池田維・元交流協会
台北事務所代表、秋元司・衆院議員、ノンフィクション作家の門田隆将氏が次々と挨拶。

 しかし、国会講演をこなされた李登輝元総統はさすがにお疲れのご様子。本来はこの後に和田政
宗・参院議員と江口克彦・参院議員の挨拶も控えていたが、ここで中締めとした。

◆日本外国人特派員協会で記者会見

 7月23日には、日本外国特派員協会が李元総統を招いて記者会見を開催した。会場後方にはNH
Kやフジテレビ、TBSなどのテレビカメラが20台ほど並び、200人以上の記者が参加し、2007年
来日時の記者会見を再現した観があり、まさに壮観の一語に尽きた。

 冒頭、李元総統は「台湾の主体性を確立する道」と題し、台湾は大中華思想というまやかしから
脱出しなければならず、新しい時代の台湾人を自覚することで民主的かつ自由な台湾が作り上げら
れると力説した。その後の質疑応答では、安保法案を巡る質問には、アジアの平和、世界の平和に
貢献するとして支持を表明するとともに、安倍総理の手腕を高く評価。尖閣諸島の領有権をめぐる
質問にも、これまでと同様「日本のものであり、台湾のものではない」と明言された。

◆最先端の放射線癌治療施設を視察

 7月24日は東北新幹線に乗って郡山にある、2018年度の治療開始を目指している「総合南東北病
院・BNCT(ホウ素中性子補足療法)研究センター」へ。

 総合南東北病院では、理事長の渡邉一夫氏をはじめ、瀬戸?一・BNCTセンター長、吉本高
志・最高顧問、寺西寧・院長などが出迎え、BNCT施設は瀬戸BNCTセンター長が説明しなが
ら案内。陽子線や重粒子などの放射線治療に詳しい李元総統は、台湾では癌による死者がもっとも
多いことや自身の大腸癌の経験を挙げ、BNCTの台湾導入に意欲を示された。

 また、実際の治療に使用予定の加速器などを視察し、これまでの治療法とBNCTによる治療法
の違いや治療費などについて質問、瀬戸センター長が返答に戸惑う場面もあった。

◆瑞巌寺で句碑を参観

 総合南東北病院を後にした李元総統は仙台へ。仙台駅では本会宮城県支部の方々をはじめ100人
を超える人々が手に手に日の丸や緑の台湾旗を持って出迎えた。これには李元総統も満面に笑みを
たたえ、嬉しそうに手を振って応えられていたのが印象的だった。

 翌25日は松島へ。まず瑞巌寺の隣に位置する円通院にて昼食。李登輝元総統とご昵懇の江口克
彦・参院議員ご夫妻や宮城選出の和田政宗・参院議員なども同席し、精進料理を召し上がられた。
この松島行きには、本会の梅原克彦常務理事の差配により、仙台厚生病院の医師と看護士も同行
し、また万一に備えて救急車も同行していた。

 食事を終えられた李元総統一行は、徒歩で句碑が建立されている瑞巌寺境内へ。句碑の周りは落
石防止の工事中だったが、フェンスに紅白の幕を張り巡らし、いかにもお祝いの式典という雰囲気
の中、相沢光哉・日台親善協会会長、瑞巌寺の吉田道彦住職、大橋健男・松島町長などの挨拶に続
いて李元総統が挨拶。その後、関係者と句碑の披露除幕式が行われ、李安娜さん、李安妮さん
と植樹式に臨まれた。お手植えになった木は日本原産の山法師。

 その後、聖和学園の高校生たちが野点で李元総統一行をもてなし、「花は咲く」などを合唱して
歓待した。

◆宮城県などが主催し歓迎の夕べ

 この日の6時からは、宮城県と宮城県日台親善協会、そして本会宮城県支部の共催により、仙台
勝山館で「李登輝先生を歓迎する夕べ」が開かれ、約250人が参加。秋田や青森からの参加者も少
なくなかった。

 常盤木学園の生徒たちが「さくら」などを合唱する中を李元総統一行が入場。まず、村井嘉浩・
知事が歓迎の挨拶を述べ、続いて前仙台市長の梅原常務理事が挨拶。それに答え、李元総統が句碑
建立への感謝の念を表した。

 乾杯は、仙台出身でJR東日本会長の清野智氏。盛宴の中、和楽器演奏や各界からのスピーチな
どが行われ、相沢光哉氏が閉会の挨拶を述べ、嶋津紀夫氏が三本締めで締めくくった。

◆千年希望の丘で献花

 最終日の7月26日は、仙台でお世話になった方々とホテル内で昼食を召し上がった後、東日本大
震災の被災地の一つ、岩沼市の千年希望の丘へ。

 千年希望の丘では、菊地啓夫・岩沼市長や、この丘を造成した井口経明・前岩沼市長、丘の造成
に協力した輪王寺住職の日置道隆氏、また被災者の方々が待っていた。

 慰霊碑の前まで進んだ李元総統は、菊地市長が打ち鳴らした鎮魂の鐘の音が残る中を粛々と献
花。その後、仮設テントに待機していた被災者の方々の手を握りながら「大変だったと思うがよく
頑張ってくれました。ご苦労さまでした」と励まされた。

 その後、李元総統ご一行は仙台空港へ。空港には村井知事夫妻がお見送りに来ていて、貴賓室で
1時間ほど談笑。その後、搭乗するエバー航空機に向かわれると、はからずも「李登輝先生、万
歳」の声が挙がった。万歳の声を後に機内に入って行かれ、つつがなく全ての日程をこなして帰台
された。

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