故人愛吟 千風之歌  梅原 克彦(日本李登輝友の会常務理事)

故人愛吟 千風之歌─「誠實自然:2021年李登輝紀念音楽會」に参席して

                                   本会常務理事・在台北 梅原 克彦

 去る11月15日(月)午後7時半から、「台北国家音楽庁」で開催された「誠實自然:2021年李登輝紀念音楽会」に、主催者である李登輝基金会(李安[女泥]董事長)からのお招きにより、渡辺利夫・日本李登輝友の会会長の名代として出席してまいりました。

 すでに本メルマガでも紹介があった通り、当日は約1,800人もの聴衆が来場するとともに、蔡英文総統もご出席。この他、王金平・元立法院長らの台湾側VIPや、泉裕泰・日台交流協会台北事務所代表(=大使)も参席され、大変な盛会となりました。

 本会理事でもあり、総統秘書を務めていた早川友久さんのご配慮により、李太太(勝美旅行社・黄麗華社長)ら台湾の友人たちと共に、招待客用の特別席(前から4列目)に着席しました。開会直前、2階席に蔡英文総統が入場された際には、会場全体が拍手で総統をお迎えしたわけですが、ホール全体が非常に大きいので、蔡総統のお姿は少ししか見えなかった次第です。

 余談ですが、最前列には李登輝民主協会の張燦●理事長(元台南市長)もご来席されていたので、幸いにも直接ご挨拶することができました。張先生とは、今年3月13日に台南市で開催された「湯徳章紀念館」開館式の席上でお目にかかって以来でしたが、大変お元気そうなご様子でまずは一安心しました。(●=洪の下に金)

 さて、淡江中学のOBで構成する「八角塔男声合唱団」の男声合唱(指揮:李建一氏)は、素人の私が聴いていても、音楽的に実に素晴らしい出来栄えでした。

 また、著名な脚本家・映画監督である呉念眞(本名:呉文欽)監督が、プログラム全体の進行役とナレーションを担当され、故李登輝総統が歩まれた人生を振り返りつつ、各曲目について紹介されました。呉監督は台湾語でお話をされたので、私自身は、直接その内容を聴き取ることはできませんでしたが、実に滋味深く、また故李登輝総統への敬愛の念に満ち溢れた様子のお話であり、聴衆の皆さんに深い感銘を与えていることがよく分かりました。

 プログラムの最初の曲目は、「日治出身−紅蜻?」(童謡「赤とんぼ」)です。「夕焼け小焼けの赤とんぼ〜♪」と、日本語の歌詞で美しいアンサンブルが響きわたりました。今は亡き黄昭堂先生(台湾独立建国聯盟主席)が会場にいらっしゃったら、もう、ここで大粒の涙を浮かべたに相違ありません。

 そして、フィナーレはもちろん、李登輝先生が、生前殊の外お好きだった、新井満さん作詞作曲「千風之風」(千の風になって)です。同じく日本語の歌詞での合唱でした。

 私のお墓の前で泣かないで下さい♪ そこに私はいません♪ 眠ってなんかいません♪ ・・・・・・・・・・・ 千の風に 千の風になって♪ あの大きな空を吹きわたっています♪

 このところトシのせいか段々と涙もろくなってきた私のことですから、李登輝先生との数々の想い出に浸りつつ、(一曲目の「赤とんぼ」のときは何とか堪えていた)私の涙腺が完全に緩んでしまったことは申すまでもありません。

 是非、来年以降も引き続き、この「李登輝紀念音楽会」が開催され、台湾に来訪される本会会員の皆様と一緒に大勢で参席することを願っております。

                                          (11月19日記)

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梅原克彦(うめはら・かつひこ)昭和29年(1954年)、宮城県仙台市生まれ。東京大学法学部卒業。1978年、通商産業省(現経済産業省)入省。海外貿易開発協会アジア太平洋地域代表兼バンコク事務所長、通商政策局地域協力課長、通商政策局通商交渉官、外務省在米国日本大使館公使等を歴任。通産省在職中は、APEC、ASEANを担当するとともに、わが国初となるシンガポールとの経済連携協定(EPA)締結に尽力。2005年、仙台市長選挙に当選し2009年8月まで務める。その後、国際教養大学教授や台湾の中信金融管理学院教授を歴任し、2021年に台湾企業顧問に就任。日本李登輝友の会常務理事、日米台関係研究所理事、特定失踪者問題調査会顧問。

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