台湾のTPP加盟申請で示した日本の反応と問題点

台湾のTPP加盟申請で示した日本の反応と問題点

 台湾の蔡英文政権は9月23日に記者会見を開き、前日の22日に環太平洋経済連携協定(TPP)の事務局役を担うニュージーランドへ申請文書を送り、TPPへの参加を正式に申請したことを明らかにしました。

 中国も9月16日に加盟を申請しており、台湾の申請は「台湾と友好関係にある日本が今年、TPP議長国であることを考慮」(朝日新聞)し、また「長年の準備作業を経た今が最良のタイミングだ」(時事通信)と判断したことから、「台澎金馬個別関税領域」という名称で申請したと伝えられています。

 報道の多くは「加盟を実現させる上では、福島など5県産食品の輸入解禁が重要な課題」(中央通信社)、「台湾にとっては、2011年の東日本大震災以来、日本の5県産食品の輸入を禁止している問題の解決が課題」(読売新聞)と伝えています。

 しかし、中国も同じ課題をかかえていることはほとんど報道されていないようで、時事通信が「台湾に先駆けてTPP加入を申請した中国も、10都県の大部分の食品を禁輸したまま」と報じている程度のようです。

 また、申請名称について触れた報道はないようで、唯一、台湾の台湾国際放送が「台湾は、『台湾・澎湖・金門・馬祖個別関税領域』という名称で、CPTPPへの参加を申請しました。?振中・首席交渉代表は、この名称を使った理由について『世界貿易機関(WTO)への参加を申請した際もこの名称を使った。この名称に反対する声が最も少ない。みんなお馴染みの名称なので、これを使うことにした』と説明」したと報じています。

 台湾は李登輝政権時代の1990年 1月に「『台湾・澎湖・金門・馬祖』の独立関税地域のために行動する政府」の名称でWTOの前身のGATT(ガット)に加盟申請し、陳水扁政権に入った2002年1月1日に正式加盟しています。英文の名称は「Separate Customs Territory of Taiwan, Penghu, Kinmen and Matsu」で略称は「TPKM」です。

 一方、中国(中華人民共和国)は1986年に加盟申請し、台湾より半月ほど前の12月11日に正式加盟しています。

 蔡英文政権は「TPPは台湾にとって、WTO加盟に続く最重要の経済協定」(?振中・首席交渉代表)と捉え、蔡英文総統は9月23日、「石の上にも五年! 」という見出しを付し「台湾は昨日正式にCPTPP加盟を申請しました。総統になってからこの水準の高い貿易協定の参加を準備してきました。我々は全てのルールを受け入れる用意があり、TPPに加盟したいと思っています。日本の友人たちには我々のこの努力をぜひ支持して欲しいです!」と日本語でツイートしています。

 台湾のTPP加盟申請について、国連総会に出席するためニューヨークを訪問中の茂木敏充・外務大臣がいち早く歓迎の意を表しました。

 また安倍晋三・前総理も、蔡総統のツイートにリツイートする形で「自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する台湾の申請を歓迎します。蔡総統が全てのルールをクリアーするとの決意を示した事は、日本が支持する上で極めて重要です」とツイートしていました。

 麻生財務大臣は「中国が新規加入できる状況か」「ルール通りやるのは本当かという話になるんじゃないか」と疑問を呈していますので、TPPの今年の議長国は日本ですから、「全てのルールをクリアーする」という蔡総統の発言は、まさに「日本が支持する上で極めて重要」なポイントかと思います。

 読売新聞は、日本政府関係者の「『台湾はTPP加入に向けて関係法令を整備するなど準備を進めてきており、国有企業への補助金や電子商取引、労働などTPPで定められているルールを巡る問題点はあまりないだろう』との認識を示した」と伝えていますので、下記にその記事をご紹介します。

 ちなみに、台湾が日本の5県産品の輸入を禁止している問題について、台湾の蘇貞昌・行政院長が「福島県などの5県の食品のみなならず、すべての食品について我々は、国民の健康、科学的根拠、国際的な基準を原則にしている」と説明しています。

 また、農業委員会の陳吉仲・主任委員も「原発事故からこれまでに放射能検査を実施した日本からの輸入食品17万件余りはいずれも合格だった」「地域を輸入規制の対象とするのは食品安全のリスク管理の方法に合致していない」「水産品やキノコ類などリスクが高い食品に対してより厳しい措置を講じるべき」(中央通信社)との見解を示しています。

 日本政府はこれまで、台湾は福島、群馬、栃木、千葉、茨城という地域を輸入規制の対象にするのではなく、科学的根拠を基に判断すべきだと訴えて来ています。すでに台湾政府も台湾大学などへのサンプル調査を繰り返し、5県産品が安全であることを自ら証明しています。

 残るは台湾の人々のコンセンサスだけです。日本人が食べ、訪日した台湾人も5県産品を食べていて、なんの問題もないのです。本誌でなんどか日本台湾交流協会がまとめている「日本産食品の安全性」を紹介しましたが、下記に改めて紹介します。

 日本側も、これまでのように日本台湾交流協会台北事務所に任せっぱなしにせず、農林水産大臣や政府高官などが訪台するなどして、台湾側の誤解を解き、蔡総統が米国からの豚肉輸入に示したような毅然とした決断を5県産品でも示せるように、全力を尽くして欲しいものです。 ◆日本台湾交流協会:日本産食品の安全性 https://www.koryu.or.jp/publications/foodsafety/

—————————————————————————————–台湾がTPP加盟を正式申請…参加巡り中国との駆け引き激化へ【読売新聞:2021年9月23日】

【台北=杉山祐之】台湾の行政院(内閣)報道官は、台湾が22日、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を正式に申請し、全加盟国に支持を求めたことを明らかにした。

 台湾は今年2月、TPPへの参加意向を表明していた。国際社会での活動拡大を図る台湾としては、中国をけん制する狙いもあってTPPへの参加を強く望んできた。

 しかし、今月16日、中国政府がTPP参加の正式申請を行ったと発表した。台湾の蔡英文政権はこれを受けて、正式申請を急いだとみられる。TPPの参加には全加盟国の同意が必要で、先に中国の加盟が実現すれば、台湾の参加は事実上不可能となるからだ。

 今後、中台のTPP参加を巡る駆け引きが強まることが予想される。早期加盟の見通しが立っていない中国が台湾の先行参加を阻止するため、加盟各国に対する外交的な働きかけを強める可能性もある。

 台湾にとっては、2011年の東日本大震災以来、日本の5県産食品の輸入を禁止している問題の解決が課題となる。TPP参加には解禁が必須とみられているが、台湾では反対論が非常に強い。蔡政権は難しい対応を迫られそうだ。

                          ◇ 日本政府関係者は「台湾は(TPP参加国と)普遍的価値を共有している」としたうえで、「台湾はTPP加入に向けて関係法令を整備するなど準備を進めてきており、国有企業への補助金や電子商取引、労働などTPPで定められているルールを巡る問題点はあまりないだろう」との認識を示した。

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