台湾が環太平洋経済連携協定(TPP)への加入を申請するや、駐日中国大使館は9月24日、「世界に中国は一つしかなく、台湾は中国の不可分の一部だ」として、「台湾が公的な性質を持つ協定や組織に加入することに反対する」として、日本側に厳正に抗議したそうだ。
どうやら中国はルールを知らないようだ。「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」は本文7か条と附属書1本で構成されていて、その第5条の加入には「国又は独立の関税地域」と定めている。
昨日の本誌でお伝えしたように、台湾が加盟申請した名称はWTOと同じ「『台湾・澎湖・金門・馬祖』の独立関税地域のために行動する政府」。つまり、協定が定める「独立の関税地域」だ。
千歩譲って、中国の主張するように「世界に中国は一つ」しかなく「台湾は中国の不可分の一部だ」としても、台湾はすでに独立関税地域としてWTOに加盟している。台湾にはTPPへの加盟申請資格がある。「中国はそんなことも知らないで反対しているのか」「中国はルールを守れ」と非難されても致し方あるまい。
TPPのルールを知らない中国が、加盟申請の資格はあれども、果たして高いレベルの自由化ルールを守ることができるのか、誰しも疑問に思うだろう。
加藤勝信・官房長官は昨日の定例記者会見において「台湾の加入は『協定上、可能』との認識を示した」のはもっともなことだ。中央通信社の記事を下記に紹介したい。
—————————————————————————————–台湾のTPP加盟申請 加藤官房長官「歓迎したい」【中央通信社:2021年9月24日】
(台北中央社)台湾が環太平洋経済連携協定(TPP)への加入を申請したことについて、加藤勝信官房長官は24日の記者会見で「わが国としては歓迎したい」と述べた。
加藤氏は台湾について「わが国にとって自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係を有する極めて重要なパートナーだ」と日本の立場を改めて示した。その上で「わが国としては戦略的観点、国民の理解も踏まえながら対応していく」とし、「(TPPの)高いレベルを完全に満たす用意ができているかどうか、しっかりと見極める必要がある」と述べた。
また、蔡英文(さいえいぶん)総統がTPP加入申請に関し「全てのルールを受け入れる用意がある」と表明したことに触れ、「肯定的に受け止めたい」とした。
中国が「一つの中国」を理由に台湾の加入に反対していることについては、TPPの協定上は新規加入の対象を「国または独立の関税地域」としていると説明。台湾の加入は「協定上、可能」との認識を示した。
台湾が輸入を禁止している福島など5県産食品の問題で、台湾側が日本と「向き合い、対処する必要がある」との姿勢を見せたことに対しては、「輸入規制撤廃は政府の重要な課題の一つ」だとし、「引き続き規制の早期撤廃を台湾側に求めていきたい」と語った。
(編集:名切千絵)
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