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中南米で行われている米中の代理戦争  黄 文雄(文明史家)

【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」第264号:2018年12月5日】http://www.mag2.com/m/0001617134.html*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部で付したことをお断りします。

◆習近平がパナマを訪問した意図

 台湾の選挙の結果を受けてのことなのかどうかはわかりませんが、習近平がさっそく行動に出ています。

 中国は2017年6月、台湾と国交のあったパナマに接触して、財政支援を口実に台湾と断交させて中国と国交を樹立させました。そのパナマへ習近平が出向いています。報道によれば、パナマ政権は、中国によるインフラ事業への数億円規模の投資を期待しているとのことです。

 しかし、中国がパナマを台湾から引き離すためだけに巨額の融資を請け負うはずがありません。その裏には別の目的もあると読む必要があります。本メルマガの読者の方はすでにおわかりだと思いますが、「インフラ事業への投資による他国支配」です。

 実際に、中国の甘い言葉に乗せられて、インフラ事業への投資を中国に頼ったばかりに、国の重要な港湾を明け渡すことになったのがスリランカです。そのことは、何度もお伝えしてきましたが、日本のいわゆるリベラル系といわれるメディアもようやくきちんと報じるようになってきたようです。以下、報道を一部引用します。

<スリランカ政府は近く、南部ハンバントタ港の運営権を99年間、中国企業に貸し出すことで最終合意する方針を固めた。(中略)

 ハンバントタ港は10年、親中派のラジャパクサ前政権下で建設された。建設費約13億ドル(約1500億円)の多くは中国からの融資で、一部は年利6%を超える高利だという。だが、完成後も船舶の利用は少なく、港は「巨大なスイミングプール」(野党政治家)と批判された。(中略)

 深刻な財政危機が背景にある。財務省の資料などによると、スリランカの対外債務の返済額は14年は14億ドルだったが、17年は24億ドル、19年には約40億ドルにふくれあがる。政府高官は「前政権は返済を考えずローンを組んだ。港湾のリース代と返済金を相殺せざるを得ない」と語る。シリセナ政権は発足以降、日印や欧米との関係強化を通じて「脱中国」を目指したが、深刻な財政危機により「中国に頼るしか選択肢がない」(地元ジャーナリスト)状況だ。(中略)

 安保上の懸念もある。中国はインドを囲むように港湾を整備しており、『真珠の首飾り』戦略と呼ばれている。スリランカの与党幹部はハンバントタ港について『軍事利用させない』と言うが、14年にはコロンボ港に中国の潜水艦が寄港しており、インドが警戒感を高めるのは必至だ。>(2017年2月7日付「毎日新聞」)

 一見すると相手国の求めに応じて財政支援しているように見えますが、その実は、中国に有利に物事が運ぶようにてきているのです。港湾建設を受注するのも、周辺地域開発を受注するのも中国企業なのです。現地の雇用には貢献せず、インフラ建設のために集まった中国人たちが現地で我がもの顔で闊歩し、現地の人々とトラブルを起こすこともあります。

◆借金漬けにしてインフラ設備経営権を手に入れる中国のやり口

 中国の海外インフラ投資については、私は早くからそのインチキぶりを指摘してきました。2年以上も前にそのことを取り上げたメルマガ記事は、いまだに多くの方に見ていただいているようです。

 インド洋に浮かぶ小国モルディブも、中国からの融資を受けたために窮地に立っている。以下、報道を一部引用します。

<「中国に対して、実際どれだけの債務を負っているか把握できず、困惑している」とナシード氏(大統領の参謀役)は語る。

 「1つには直接債務、つまり政府間の2国間直接債務があるが、それに加えて、民間セクターに向けた国家債務保証がある。さらにそれ以外にも、国有企業による債務がある」と付け加えた。>

 こちらも借金漬けにさせて、返済不可能となったら中国が手掛けたインフラ設備の経営権をスムーズに中国に移行させるというやり方です。中国は、中国にとって有利な場所にある港湾を手に入れ、軍事的に有利に立とうというわけです。中国に有利な場所というのは、「一帯一路」構想のアジアと欧州を結ぶ海上ルートです。すでに、イランの港湾にも投資しようと画策中です。

◆世界を混乱に招く中国の覇権主義

 対外的には相変わらずバラマキ外交を続けている習近平ですが、国内的には息切れ状態です。国内のインフラ投資は大幅に減速し、景気を押し下げています。

 それに加えて米中貿易戦争の影響で国内の産業に影響が出始めています。アメリカからの大豆価格が高騰したために、豚の飼料がなくなり養豚業者は殺処分などで頭数を減らしているという記事が出ています。さらに、豚コレラの感染が拡大し、中国の養豚業界はピンチです。

 米中貿易戦争の先行きが見えないまま、欧米では中国からのスパイに対しての警戒心が強まっています。すでにアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスは、中国政府と密接な関係にある中国の通信機器大手会社、華為技術の参入を排除する動きを見せています。

 中国は、国内をまともに治めることもできない一方で、軍事的に有利になるために世界に混乱を招いています。習近平の向かう先には「平和」が待っていないことは確かでしょう。

 米中の貿易経済戦争は、G20アルゼンチン大会で一応、一時休戦という運びになりましたが、アメリカ側は知的財産権の窃盗をやめることを原則としています。しかし、このことについて中国国内では、米中貿易経済戦争に中国が「勝利」したとしか報道されていません。

 もともと今回の米中貿易経済戦争は「百年戦争」とさえ予測されていたほど、アメリカは兵糧攻めの戦略で長期戦を覚悟していました。すでにアメリカの戦略は、中国経済に大きな打撃を与えており、米中の景気を見るとかなり大きな効果があったのではないかと思われます。そして、中国経済への影響は、中国の政治にも大きな影響をもたらします。

◆アメリカの裏庭にまで手を出し始めた中国

 中国の「一帯一路」は、アメリカの裏庭にまで進出することから、アメリカの対中関係だけでなく、日米欧に至るまで「警戒心」を高める必要があります。

 アメリカが、台湾と断交したパナマに対して、パナマ、ドミニカ、エルサルバドルの大使を召還するまでに至ったことから、「代理戦争」としての性格も見られます。

 貿易戦争だけでなく、南シナ海をめぐる米仏日印の軍事演習と各国の軍事的な動向を見ても、経済から軍事に至るまでの各国の思惑に変化が見られます。国際秩序を力関係の変化に国際関係がより緊密になり、連動する色彩を強く帯びています。米中以外には、EU、インド、ロシアもけん制し、国際部隊での影響力を駆使しようとする姿勢が見られます。ことに日本は今後、どう出るのか世界も注目していることでしょう。

 最近、安倍首相の「対中政策」に対して国内の保守派からもかなりの疑念と不安の声が出ています。戦後から21世紀になるまで、日本は国家として「国家目標」も「国家戦略」も持てませんでした。もちろん、アメリカからの圧力だけでなく、政治、経済についても、外でハゲタカが徘徊していることから、日本は常に警戒していなければなりませんでした。

 表面的には何も問題なく見えても、その実は不安だらけです。日米、日中、日露の間には、なおも多くの難題や課題があります。日本国内にも多くの課題があります。これからの日本の進路がどうなるのかと聞かれても、それは不明だとしか答えられないのは、私一人だけではないでしょう。

 真剣に日本という国家について日々考えている政治家でさえ、わからないと答える人は多くいるでしょう。戦後の長い平和も、日本人のアイデンティティを奪っていると私は思います。日本人はもっと責任感と勇気を持つべきです。


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