*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部で付したことをお断りします。
◆習近平の「終生皇帝」という野望達成後の次の目標は台湾併呑
中国共産党中央委員会は、「2期10年まで」とされてきた国家主席の任期の規定を憲法から削除する改正案を発表しました。
ついに習近平が「終生皇帝」となる野望を実現すべく、動き出しました。憲法改正は3月5日からの全人代で決定されることになります。また、今回の憲法改正では、「習近平思想」も憲法に明記される予定です。
もともと国家主席の任期が2期10年に限定されたのは、毛沢東時代の反省からでした。建国の父・毛沢東は絶対権力者として君臨し、大躍進政策や文化大革命など、中国を大混乱に陥れました。こうしたカリスマ指導者への権力集中の反省から、●小平時代に集団指導体制を導入し、国家指導者に任期を導入したわけです。
この規定を撤廃することで、習近平はいつまでも権力の座に居座り続けることが可能となります。2017年10月の共産党大会で、党中央政治局常務委員、いわゆる「チャイナ・セブン」に自らの後継者を入閣させなかったことも、自らの長期政権を目論んでいるからだと言われてきましたが、それが証明された形です。
来年は中国建国70周年を迎えます。20121年には中国共産党100周年となりますが、それらの記念日を経て、習近平は2019年の建国100周年には、「社会主義現代化強国」を作り上げると宣言しています。
習近平には毛沢東や●小平のような功績がありません。そこで習近平が注力しているのが「一帯一路」と、「祖国統一」です。この2つを成功させることによって、歴史に名が残る「偉大な指導者」になろうとしているわけです。
しかし「一帯一路」は相手国があることですから、そう簡単にはうまくいきません。親中国のパキスタンやミャンマー、ネパールなどでプロジェクトが挫折していることは、以前のメルマガでもお伝えしました。
そうなると、「祖国統一」すなわち台湾併合を加速させようとしてくることは目に見えています。海外のメディアでは2020年には台湾侵攻の準備が整うとも言われています。習近平が次の全人代で「終生皇帝」への野望を達成させれば、次の目標として台湾に攻勢をかけてくるでしょう。
とくに2020年には台湾総統選挙もあります。蔡英文の再選を阻み、中国に有利な候補を総統として当選させようと、武力侵攻をちらつかせながら、さまざまな工作活動を展開させてくるでしょう。
ただし、仮に台湾に武力侵攻したところで、すでに台湾人の多くが自らを「中国人ではない」と考え、「ひまわり学生運動」のような反中国運動がこれまでも起こっている以上、統治は難しいでしょう。蒋介石のような恐怖政治も、現代では国際社会からの批判が多いですし、地続きでないぶん、香港のように人民解放軍をすぐに投入することもできません。(●=都の者が登)
◆習近平の暗殺計画
そもそも、中国人にしても、統治、管理することは非常に難しいのです。歴史的に見て、天下統一をしても、すぐに分裂して大乱が起きてしまうのが中国です。いわんや、台湾を統治するなどということは、ほとんど不可能に近いでしょう。
ですので、いずれ中国に併呑できるように、まずは親中国の台湾人に間接統治させようと、2020年の総統選挙に照準を合わせてくるでしょう。台湾はこの動きに警戒する必要があります。
習近平は、毛沢東と並び称されるために、毛沢東の過去の汚点を消し去ろうとしています。中国の中学生の歴史教科書から、文革に関するマイナス表現が削除される見通しです。建国の父に匹敵する優れた指導者と評価され、天安門に自らの肖像画が掲げられるためには、「毛沢東の過ち」は邪魔だからです。
このように、習近平の絶対化が進み、いつまでも君臨し続けるということになれば、当然ながら、そのことへの反発が高まっていきます。毛沢東も暗殺計画が何度も持ち上がりました。
1950年には、天安門で行われる国慶節の式典を迫撃砲で狙い、毛沢東らの政府首脳を暗殺しようとしたとして、日本人とイタリア人ら7人が逮捕され、処刑されました。事件の真相はいまだ解明されていませんが、中国政府による濡れ衣だという話もあります。
この国慶節の式典を狙った暗殺未遂は何度も起きていると言われています。1969年にも天安門に時限爆弾を仕掛けた、毛沢東らの暗殺計画があったとされています。
そして有名なのが1971年の林彪事件です。林彪は毛沢東暗殺とクーデターを目論みましたが失敗し、妻子とともにソ連へ亡命する途中で飛行機が墜落し、死亡しました。
そして、習近平自身もすでに9回も暗殺未遂に遭っていると言われています。習近平がいつまでも権力の座に居続けるならば、政敵として狙われた者は一生浮かび上がることはできません。任期が決まっているならば、まだ次世代の指導者誕生まで待つこともできますが、それが無意味ならば、窮鼠猫を噛むしかないからです。
そのため、習近平を狙った暗殺事件は今後、さらに増えていくと思われます。
◆権力闘争の果てに待っているのは中国の本当の「終わり」
そしてその行き着く先は何なのか。もちろん暗殺もありえますし、権力闘争の果てに文化大革命のような大動乱が中国で起こる可能性も否定できません。
かつての文革では「黒五類」「走資派」が労働者階級の敵として糾弾されました。しかし、資本主義経済に染まった現在では、それも難しいでしょう。
となると、相変わらず「腐敗分子」を摘発することで権力維持を図ろうとするしかないわけですが、中国では官僚なら誰もが腐敗した経験があるため、次は自分かと危機感を募らせ逆襲に出る可能性も高いでしょう。
もっとも、習近平自身、「皇帝」にならなければ自分の身が危ないという危機感から、権力掌握の強化に動いた側面もあります。中国の政治では、側近すらも信用できず、寝首をかかれる可能性があります。やられる前に先手を打たざるを得ないというのが、中国での掟なのです。
いずれにせよ、習近平が終生指導者の道を歩むならば、中国に大動乱が起こることは避けられません。習近平の終身独裁体制は、中国の本当の「終わり」につながっているのです。