*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部で付したことをお断りします。
◆日台双方の深い理解につながった「 国交を越える日台の絆を探る旅」
10月12日(金)から15日(月)にかけて、日本李登輝友の会主催による「黄文雄先生と行く国境を越える日台の絆を探る旅」という台湾ツアーが行われ、そのツアー名どおり、私が随行し、日本とゆかりのある場所を訪れ、さまざまな台湾人と交流いたしました。
そのメンバーは、本メルマガの愛読者の方々をメインに、日本李登輝友の会、チャンネル桜などからもご参加いただきました。昨日、台湾の松山、桃園空港で解散しましたが、各自、無事に帰国されたことを祈念いたします。
今回の旅では台湾の各界の「心ある方々」とお会いし、懇談することができました。まさに「水心に魚心」「以心伝心」であり、日台双方の深い理解につながったと思っています。
◆これからの台湾はどうなるのか
台湾は目下、経済的にも外交的にも中国から「袋叩き」にあっている最中であり、中国の圧力によって他国との外交関係が解消されるなどの事態が起こっています。台湾ではこのことを「打圧」(圧迫)とも呼んでいます。しかし、長い人類史から見れば、単なる「苦悶、苦悩、苦難」の一コマに過ぎないと私は思っています。
現在の人類(ホモ・サピエンス)の「出アフリカ」は約10万年前だと推定され、文明史は約1万年前から始まりました。しかし人間の「権利と義務」が保証されるようになってきたのは、せいぜい産業革命と市民革命後の、ここ数百年でしかありません。
しかも、現在約200ある国家の3分の2は戦後に生まれたものです。
これからの台湾が、一体どうなるのか、関心を持っている方も少なくないでしょう。日台関係を考えるのに際し、「国家と民族とは何か?」をもう一度、問いかけるべきだと思っています。
現在の台湾が置かれている境遇を考える際、人類史上にいくつかのモデルがあります。
1.オランダがスペインから独立した例。1581年にオランダはスペインから独立を宣言しました が、オランダとスペインとの戦争は延々と続きました。オランダは台湾南部を占有しましたが、 その2年後、スペインが台湾北部を領有。その後、オランダはスペインを台湾から追い出し、30 年戦争の結果、1648年のウエストファリア条約によって、ようやくオランダとスイスは独立と中 立を承認させました。
2.スリランカ(セイロン)は、ポルトガル、オランダ、イギリスにそれぞれ150年も植民地とし て統治され、イギリスから独立後も宗教や民族問題などが続き、数年前にようやく内戦が終結し ました。
3.イスラエルは、数千年にわたる流浪の民ユダヤ人が大戦後に再建したものですが、現在も周辺 国はほとんど敵であるイスラム諸国に囲われています。それでも生き残りをかけて、ハイテク兵 器を開発、国を守ろうとしています。
われわれの同胞である台湾人に、それ以上の苦難を乗り越える覚悟がなければ、「国生み」の意味や尊さはわからないでしょう。
人民共和国の国歌「義勇軍進行曲」は「奴隷になりたくない人民よ、起来!(立て、立て)」と呼びかけていますが、台湾人が自立できなければ、心と魂のないカカシにすぎません。
◆カギは「魅力あるソフトパワー」
私が考えている「国家と民族」の未来像は、血縁的、地縁的なものよりも「心と魂」の絆にあると考えています。弱肉強食は自然淘汰の法則ですが、人類においては、個としても群としても、ハードパワーよりソフトパワーのほうが勝っています。
ことに長期戦となると、いくら暴力で押さえつけても、魅力あるソフトパワーにはかないません。そして魅力のある国こそが、小国から大国へと変貌を遂げることができたということは、歴史が如実に物語っています。
ローマ帝国の盛期には、誰もがローマ人になることに憧れましたし、ロシアもモスクワ大公国から、清も満州の森林から大国になることができましたが、そこには、人を惹きつける魅力があったからです。そして魅力を失った国は縮小や衰亡が避けられません。
中国は一時的な経済成長によって経済的魅力を持ちましたが、文化的、社会的な魅力はついに持ちえず、頼みの綱の経済的魅力も失おうとしています。
魅力づくりの点で、日本の右に出る国はありません。もちろん世界的に期待されていることは言うまでもありません。国家や民族の理想像には、具体的な例が欠かせません。台湾人にとっても、ますます日本が理想の国家、民族となりつつあります。決して中国ではないのです。