なぜ「反核災食品公投」は成立したのか  傳田 晴久

【台湾通信(第134回):2019年2月5日】*原題は「反核災食品公投」でしたが、掲載に当たって改めたことをお断りします。

◆はじめに

 大分時が過ぎてしまいましたが、昨年11月24日に行われた公民投票、その中でも「核災食品輸入規制継続の可否を問う」第9案について書かせていただきます。私は日本人として、福島等5県の食品の輸入規制を撤廃してほしいとの立場で書かせていただきます。

◆反核災食品公投の結果

 問題の「反核災食品公投」とは、昨年11月の九合一選挙(統一地方選挙)の際に行われた「公民投票」の一つ、政府が執り続ける福島およびその周辺県産の食品輸入規制撤廃禁止を継続すべきかどうかの民意を問うものです。発案者は中国国民党の副主席●龍斌(ハオロンピン)氏です。(●=都の者が赤)

 投票の結果は、「規制撤廃禁止を継続すること」に「同意」するとの回答者が779万人で72.2%、「不同意」が223万人の20.6%でした。民意は規制撤廃禁止を継続すべしということなりました。

◆結果に対する意見

 この結果を受けて、公益財団法人日本台湾交流協会台北事務所代表の沼田幹夫氏は交流協会のHP上に「このような結果になったことは残念で・・・・この問題が政争の具として利用されることにより、日本と台湾の友好関係や経済交流にひびを入れることを何とか食い止めなければならないとの私の思いに変わりはありません。(2018.11.25)」 と述べられ、日本の河野太郎外務大臣も、「遺憾であり、台湾が希望するCPTPPへの加入は困難になり、WTOへの提訴も排除しない」とコメントしたと伝えられました(自由時報2018.12.08)。

 台北市長の柯文哲氏は、「もし、日本の核被災地の食品が台湾に入ることを禁止する必要があるなら、政府は国民が核被災地域を旅行することを禁止すると宣言すべきである。なぜなら旅行者がその土地で食する食品は『核災食品』であるから。これは『不合理な話』である」と述べたと報道されました(2018.12.08 TVBS News)。

 また、前WTO大使の顔慶章という方が「でたらめ極まる『核災食品』公投」というタイトルの論説を自由時報(2018.12.10)に書き、「この公民投票を提唱した●龍斌氏は国民党副主席ではあるが、直接的にも間接的にも科学的検証にかかわることなく、福島県で2011年の原発事故があったというだけの理由で、『核災食品』としている」と指摘しています。

 メルマガ「日台共栄」(Vol.3376)はジャーナリストで元朝日新聞台北支局長の野嶋剛氏の意見を次のように紹介しています。

「日本人として押さえておきたいのは、この問題が、日本が起こした福島原発事故によって、海外の人々に放射能汚染の被害が及ぶ『恐れ』を生んだ、という点にある。あくまでも日本人は『迷惑をかけた側』なのだ」

「これは日本側が迷惑をかけた立場から謙虚にお願いしていくべき話で、頭ごなしに台湾の態度を批判するのは好ましくない」

 また、台湾在住のライター栖来(すみき)ひかりさんは、「福島、元気です!」(nippon.com)の中で、台湾人の核食問題に対する複雑な思い、政府や日本に対する不信感について分析され、「明確で科学的な説明をひたすら辛抱強くアピールし、台湾の人々の信頼を少しずつでも積み上げていくことが肝要だろう」と提言されています。(*註1)

◆反核災食品公投とは

 手元に「全国性公民投票案」(中央選挙委員会)という資料があります。A4版45頁の資料ですが、Googleで検索、入手したものです。公民投票に付される案件に関する公報で、投票のやり方や注意事項が記されており、各案件別に質問事項とその提案「理由書」と、それに対する政府機関の「意見書」がそえられています。

 私が注目している公民投票の案件は第9案ですが、それは次のようになっています。問いかけは、「あなたは、福島とその周辺の4つの地区(茨城、栃木、群馬、千葉)を含む、日本の福島の311原発被災地の農産物や食料の輸入を政府が引き続き解除を禁止することに同意しますか?」というものです。直訳に近い翻訳ですが、太字の部分は原文も太字になっています。

 公報に付記されている「理由書」の原文は中文で約2000字(A5版3頁)、「政府意見書」は約1300字(A5版3頁)です。理由書並びに意見書はかなり長文ですが、要約すると次のようになります。

◆「理由書」

 日台関係は密接で食品の貿易も多く、台湾の消費者は日本の食品が大好きであるから、政府は消費者の健康を守らねばならない。日本の311地震に伴う原発事故の後、日台間の距離が近いこともあり、より厳密な食品検査体制をとらねばならない。我々は原発関連地域の食品を輸入すべきか否かについて、以下の諸点を考慮して、国民投票に付すべきと考える。

(1)検査人員・測定機器の不足(2)厳密な規制基準を取るべし(3)平等互恵の原則に則るべし(4)与党の政策はあてにならない

◆「政府意見書」

 日本からの食糧輸入に関する政府の基本的立場は国民の健康を第一とし、国際標準を参考に厳格な規制を行っている。

 台湾は科学的普遍的かつ一貫した国際共通基準に基づいて製品の安全認証を行っている。

 政府は最も厳格な許容基準を引き続き運用し、放射能汚染食品の輸入を禁止していく。

 国民投票に問われている事項については、次の通りである。

(1)検査人員・機器は十分である(2)規制基準は世界で最も厳しい(3)理由書にいう平等互恵原則に抵触していない(4)台湾は食品安全を確保するために輸入食物の管理と検査を厳格に実施してきた

◆巧妙な仕掛け

 提案側は理由書で、国民の健康を守るために慎重であれと主張し、現政権の対応上の問題点を指摘し、批判している。政府側としては、正しい対応をしており、引き続き厳しい対応を続けるとの意見書を書かざるを得ないのではないか。

 投票する一般国民は、膨大な理由書と意見書を熟読し、両者の意見を比較考量できているかどうか疑わしい。何と言っても今回提起されている案件は10項もあり、公報は45頁もあるのです。

 規制緩和、規制撤廃を願う立場からすれば、「規制撤廃禁止(禁止開放)継続の可否」を問うのではなく、「規制撤廃(開放)の可否」を問うて欲しい。問題を提起する側(国民党)からすれば規制の継続を願う(真意は日台間の友好関係に水を差したい?)のであろうから、当然規制の必要性を強調するであろうが、規制撤廃を願う立場からすれば、規制を撤廃しても安全である理由(科学的根拠、他の国々の対応、検査体制の充実度合など)を強調してほしいと考えます。

◆おわりに

 これが民意であると突きつけられると、どうしようもありません。選挙を控えた与党としては、民意を無視したり、民意と言われるものにそむいたりするようなことはしにくいでしょう。野嶋氏がおっしゃるように、日本は迷惑をおかけした側であるのは事実、確かに時間をかけてお願いすることが必要でしょう。

 しかし、公投の有権者総数は1976万人(中央選挙委員会)というから、今回「同意」と投票した人779万人を引くと残りの約1200万人は不同意(規制撤廃禁止を継続するな、すなわち、輸入規制を解除せよ)という意見をもっていただく可能性を秘めておられる。選挙のたびに述べられる負けた方の言いぐさかもしれませんが、正しい情報を提供する価値があるということでしょう。

 栖来ひかりさんの「福島、元気です!」を読みますと、昨年、日本を訪れた台湾の方は400万人を超えると言います(*註2)。

 メデイアのどなたか、台湾で質問に工夫を凝らした(誘導尋問ではない)意識調査をしてみては如何でしょうか?

*メルマガ編集部【註1】 栖来ひかりさんの「福島、元気です!」の「台湾は日本を映す鏡――台湾の『核食』輸入問題から 考える」は2018年4月8日の「nippon.com」に掲載されました。 https://www.nippon.com/ja/features/c04905/#

*メルマガ編集部【註2】 日本政府観光局は、2014年から昨年までの台湾からの来日者数について下記のように発表してい ます。400万人を超えたのは2016年からです。 2014年:282万9,821人(前年比:61万9,000人増) 2015年:367万7,075人(前年比:84万7,254人増) 2016年:416万7,512人(前年比:49万0,437人増) 2017年:456万4,053人(前年比:39万6,541人増) 2018年:475万7,300人(前年比:19万3,247人増)

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