【読者の声】台湾の地質研究者(11) 森下 晶 [地質学研究者 長田 敏明]

【読者の声】台湾の地質研究者(11) 森下 晶 [地質学研究者 長田 敏明]
地質学研究者の長田敏明氏からの第11弾として、台湾で育った日本の海胆化石研究の
第一人者「森下晶」について投稿していただきましたのでご紹介します。  (編集部)


戦前の台湾の地質学研究史−地質研究者列伝(11) 森下 晶(1922-1990)

                            地質学研究者 長田 敏明

 森下晶については、糸魚川淳二(1991)が地質学雑誌の紙碑『森下晶先生のご逝去を
悼む』に記載している。そして、森下(1967)自身が書いている「早坂先生と私」、お
よび森下晶教授退官記念会(1986)の「森下晶先生−略歴と業績目録」を基にして以下
に記す。

 森下晶は1922(大正11)年6月に東京で生まれた。その後、父君(森下薫:台北帝国大
学医学部教授をした後に大阪大学医学部教授)の仕事の関係で台北で育った。

 1935(昭和10)年3月に台北第一師範学校附属小学校を卒業し、1940年3月、台北州立
台北第一中学校を卒業している。1940(昭和15)年に台北高等学校に入学しているが、
ゾルゲ事件で処刑された朝日新聞記者の尾崎秀実の異母弟、尾崎秀樹(おざき ほつき)
とは同窓生である。

 1943(昭和18)年に台北帝国大学予科理農類を経て、台北帝国大学理学部地質学科を
1946(昭和21)年5月に卒業している。

 その後、同年10月、中華民国台湾省立海洋研究所助手(助理員:日本式に言えば助手)
、1947(昭和22)年6月、京都帝国大学理学部地質鉱物学教室副手嘱託、1948年4月、同
大学副手を経て、1949(昭和24)年6月に同大学助手となっている。

 台北帝国大学予科時代の森下は早坂一郎のことはあまり知らなかったようであるが、
予科の友人たちの評判や『化石の世界』などの著書の影響が大きかったと記し(森下:
1967)、台北大学では早坂一郎に学んだ。しかし、戦時中の困難な時期に学生生活を送
ったので、野外調査力が不十分と感じていたようだ。
 
 そこで、昭和22年には京都大学のスタッフとなり、槇山次郎や池辺展生から指導を受
けた。1958(昭和33)年7月には名古屋大学理学部地球科学教室講師に転じ、1960(昭和
35)年9月に同大学の助教授となり、その年、海胆化石の研究で理学博士の学位を得てい
る。

 1986(昭和61)年3月をもって定年退官して名誉教授となった森下は、1961(昭和36)
年1月に台湾の阿里山を訪れている。その後、大阪商科大学教授に就任したものの、病を
得、1990(平成2)年10月11日に逝去した。享年68歳であった。

 森下は台湾時代に早坂一郎の指導の下、化石及び現世の海胆類の研究に着手した。そ
の成果は、早坂と共著で国立海洋研究所の報告に掲載されている。しかし、資料の大部
分は、戦後の混乱の中、この海胆化石の研究にはほとんど手をつけられずに帰国した。

 森下の研究は、大きく2つの分野に区分することができる。

 一つは、中部地方の第三紀層の層序確立の研究である。北陸・東海・フォッサマグナ
などの地域に分布する新第三系の層序の解明に力を尽くした。

 これらの研究成果は、後の同地方の層序研究の礎となるものであった。特にフォッサ
マグナ地域の研究では、団体研究のリーダーの一人として活躍した。その進取の気性は、
早坂一郎から受け継いだものかと思われる。

 もう一つは、棘皮動物の化石の研究で、中生代から新生代をへて現在におよぶレンジ
をカバーするものであった。西山省三とならんで日本の海胆化石研究の第一人者であっ
た。

 森下は、ウニ類化石が示準化石として有用であることに気づき、日本各地から得られ
た海胆化石をもとに日本の新第三紀の海胆化石の生層序を確立した。特に森下の記載し
た不整形海胆については、日本だけでなく、近隣諸国でも示準化石として認められてい
る。

 さらに、森下は化石の時代面への貢献だけでなく、古生態学的な側面、即ち古生物の
生活史復元という古生物学にとっての重大問題にも取り組み、アクアラングを用いての
現生海胆の生態観察を基礎として、比較古生態学の分野を切り開いた功績は大と言わな
ければなるまい。

 森下は教育にも一家言をなした人で、普及書の執筆、新聞雑誌への寄稿、テレビやラ
ジオへの出演などを積極的に行った。また、普及施設へのアドバイスも怠らなかった。
森下の指導を受けた主な博物館は志摩マリンランド、瑞浪化石博物館、豊橋自然史博物
館など多くある。


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