――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習80)

【知道中国 2414回】                       二二・八・念九

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習80)

たとえば「外国の記者は客観・真実・公正な報道を強調している。客観・真実・公正な報道は彼らの目指すところだ。一方、我々が敢えて客観・真実・公正な報道を目指さず、単に自らの立場だけを強調したなら、我々の報道は主観主義に陥り、一方的に過ぎてしまう」――劉少奇のこの発言を標的に、筆杆子は集中砲火を浴びせ掛ける。

 こんな堕落した考えを持つゆえに劉少奇は「骨の髄からの外国の奴隷」であり、「外国のブルジョワ階級の記者に完全にひれ伏し、とどのつまりはプロレタリア階級の報道機関に“自らの邪な考え”を全面的に持ち込もうとするものだ」と激烈に罵倒する。

要するに「メディアは階級性、党派性を持つ」。だから「階級を超越した“客観報道”など全くありえない」。そこで「ブルジョワ階級の新聞は人民を騙し、自らの階級の罪悪に満ちた統治を維持するために万策を弄してでも是と非を逆転させ、白を黒と誤魔化し、客観的事実を歪曲し、ゆえなく革命人民を侮辱するものでしかない」と糾弾する。炸裂した“紙の爆弾”から飛び出すのは限りない悪罵に難癖である。

これが『充分発揮筆杆子的戦闘作用』を貫く基本だが、では、筆杆子は実際にはどのように運用されるのか。その実例を挙げておきたい。

先ずは「紅小兵学習毛沢東思想補助読物」と名づけられた『我們是毛主席的紅小兵』(上海人民出版社)だが、巻頭に置かれた「告読者」は次のように訴える。

「長い間、叛徒、内なる敵、労働匪賊の劉少奇と文化界の代理人は、出版事業を資本主義復辟のための重要な陣地とし、封建・資本・修正主義の毒素を撒き散らしてきた。

少年の読み物において、「彼らは児童少年が毛沢東思想と労働者・農民・兵士の英雄を学ぶことに反対した。資本主義の世界観を鼓吹し、ブルジョワ階級の“童心論”や“児童本意論”を売り捌いていた。その目的は、少年世代を骨抜きにし、プロレタリア階級との間で後継者を奪い合い、自らのための資本主義復辟に服務させようということにある」。

まさにヘリクツだが、そのヘリクツを筆杆子はウンザリするほどに繰り返す。それというのも、劉少奇路線に占領されてしまったメディアで毒された少年世代を救い出し、「児童少年が毛沢東思想と労働者・農民・兵士の英雄を学ぶこと」を徹底しようというわけだ。

『我們是毛主席的紅小兵』には、ソ連と対峙する緊張の国境最前線で、鉄道で、学校で、養豚場で、農場で、工場で、都市で、農村で、災害現場で、「決心を定め、犠牲を恐れず、万難を排し、勝利を勝ち取れ」「人民のための死こそが所を得た死だ」「一に苦労を厭わず、二に死を恐れず」「凡そ反動分子というものは君たちが戦わなかったら、倒れることはない」「断固として、断々固とし階級闘争を忘れてはならない」などの『毛主席語録』の一節を心にシッカリと刻むだけでなく、周りの仲間や大人に呼び掛け、「為人民服務」の日々を率先励行している少年・少女についての27の物語――純粋無垢な“毛沢東のよい子”たちの物語――が収められている。

「米帝国主義、ソ連修正主義に狙いを定め、突撃だー!」と吶喊の声を上げるのは、軍訓練幹部兼軍事演習指揮官兼紅小兵部隊長の志紅クン。肩書に劣らず名前もスゴイ。「紅」を「志す」というのだから、正真正銘の毛沢東思想の申し子だ。志紅クンは右手にピストルを掲げ大きな岩の上に立ち、部下の少年に山頂への突撃を命じた。「突撃だーッ、殺せーッ」の叫びは山をも揺るがすほど。紅小兵たちは怒涛のように、我先に山頂に攻め登る。

「暫しの後、山頂に紅旗が翩翻と翻る。紅小兵たちは勝利のうちの任務完遂を喜びあった」。部下を整列させ点呼。志紅クンは部下の1人である志軍クンが欠けているのに気づく。「軍」に「志す」とは、部下の名前も隊長に負けずに“革命的”である。隊長が共産党(紅)で、部下が人民解放軍(軍)を暗示・象徴している。勇気凜々・意気軒昂。《QED》


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