――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習76)

【知道中国 2410回】                       二二・八・念一

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習76)

『紅山島』の舞台は東南沿海に位置する貧しく小さな「紅山島」である。解放(建国)前、ここでも?介石勢力は横暴を極め、貧しい漁民は苛斂誅求に泣くばかり。人々は「共産党と毛主席が領導する人民解放軍は我ら貧乏人のために戦っている。ほどなく紅山島は解放される。我ら貧乏人が恨みを晴らす時はもうすぐやってくる!」との思いを胸に耐え忍ぶ。その中には、貧しい家庭の娘である海英もいた。

人民解放軍が島に上陸するや、彼女は案内役となって解放軍を勝利に導く。その功績に報いるべく解放軍が贈った毛沢東の肖像画を捧げ持ち、彼女は「毛主席!あなたは我ら貧乏人にとって大きな、とても大きな救いの星です!」と賛嘆の声を上げる。

やがて彼女は民兵に志願し、島の奪還を企てる?介石一派の残党に対する殲滅戦に獅子奮迅の活躍を果たすのであった。

『紅山島』の最後の頁に描かれた彼女は男と見紛うようだ。太い眉に厚い唇。ガッチリした体を民兵の軍服で包んでいる。彼女の背後には男の民兵と解放軍の兵士が立つ。3人の背後は波打つ紅旗で埋め尽くされている。3人は「政権を産み出す銃」を手に東方洋上を見つ、視線の先に雲間から顔を覗かせた真っ赤な太陽を捉える。

かくて「太陽が昇り、輝ける陽光が空いっぱいに広がる。海英と解放軍兵士は共に海上防衛の前線に立ち、守りを固める。我々を侵そうとする一切の敵を完全に、徹底して、キレイさっぱりと殲滅すべく常に備えを固め、社会主義の赤い大地を守り、プロレタリアの赤い政権を守り、偉大なる領袖・毛主席を守ろう!」と結ばれる。

『永遠緊握手中槍』の舞台は『紅山島』と違って山村だが、ここでも人民解放軍は貧しい村人を救うために大活躍である。

主人公の猛子の父親は抗日武装勢力の連絡員として働くが、日本軍と通じていた村の顔役に殺されてしまう。父親の恨みを晴らそうと、猛子は解放軍への入隊を志願する。先ずは少年連絡員として働くことになるが、「美?反動派殲滅戦」の戦場で大人顔負けの軍功を挙げたことから、正規の解放軍兵士として入隊が許される。

最後の頁には銃を手に、両脇を部隊幹部に守られた猛子の雄々しい姿が描かれ、「猛子よ、毛主席は我々に『世界は銃によってこそ改造できるのだ』と教えておられる。銃を永遠にシッカリと握り、毛主席に従い、中国全土に紅旗を翻すのだ!」との言葉が添えられる。

次いで連環画とは体裁の異なる『夜航石頭沙』、『胸懐朝陽戦冰雹』、『宋師傅学外語』、『優秀的共産党員 ――陳波』、『為革命読書』を見ておきたい。共に16cm(縦)×13cm(横)で20頁前後の小冊子風で、イラストに簡潔で調子よく読める文章で構成されている。内容は毛沢東式勧善懲悪、あるいは毛沢東思想を活学活用しての刻苦勉励物語といったところ。

先ずは『夜航石頭沙』だが、秋も深まった一夜、長江の河口を白波蹴立て進む航標五号は、やがて崇明島の北部海岸に碇を下ろした。静まり返った船内では、その日の作業を終えた党支部副書記の程志敏が、いつものように灯火の下で一心不乱に毛沢東の著作を学習している。と、そこに「近くの呉淞口に停泊中の外国船が折からの強風に座礁し船体破断の危機。大至急救援に向かうべし」との緊急電報が飛び込む。早速、乗組員全員が非常呼集され、幹部からの命令を待つ。

 呉淞口は上海港の喉元に位置するだけに、事態を早急に収拾できなかった場合、多くの船舶の航行にとって障害となるばかりか、「中国革命と世界革命とに大きな損失をもたらす」と程志敏は考えた。救難作業を急行すべきだが、安全な通常航路を航行していたのでは現場到着は明日の明け方にズレ込んでしまう。最短航路の石頭沙水路を抜けることを提案したが、そこは穏やかな天候でも航行が容易ではない難所中の難所であった。《QED》


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