――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習54)

【知道中国 2388回】                       二二・七・初三

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習54)

原子炉内部に新型の硅酸塩素材を使うことで超高温環境での核反応コントロールが可能となり、有限の化石燃料に頼らなくてもいい夢の発電システムが約束される。やがて「ラジオは繭玉ほどに、電子計算機はたばこの箱程度になるだろう」と、未来はヤケに明るい。

「旧い視点で新しい時代を推し量ることは不可能」であり、「ひたすら頭脳を働かせ、失敗を恐れずに敢えて挑戦する革命精神を発揮し、多種多様な用途を秘めた新型硅酸塩素材を創造し、古くから知られた硅酸塩を新しい進歩する時代に生かしていこう」と締め括る。

毛沢東思想を前面に押し立てた極めて強烈な政治的扇動性に充ち溢れた『雪山上的号手』や『王杰日記』とは肌合いを全く異にした『飛機会干些什麼』と同じように、『新的“石器時代”』の行間には進歩する科学技術への素朴な期待と信仰が溢れ、万能の科学技術を誰もが享受できる明るい未来への希望が熱っぽく語られている。

政治主義一辺倒の記述も、人類の闘争が歴史を動かすと言った類の毛沢東思想的な杜撰で荒っぽい歴史観も、ましてや文革が巻き起こすことになるド派手な血腥さも感じられない。ここからも、65年が毛沢東派と非毛沢東派の戦いの分水嶺であったことが見て取れそうだ。

65年出版では『反法西斯戦争的歴史経験』(人民日報編輯部 人民出版社)、『美帝国主義侵華罪行録』(中国青年出版社)、『中国近代史諸問題』(人民出版社)も架蔵していた。

『反法西斯戦争的歴史経験』はソ連社会帝国主義を、『美帝国主義侵華罪行録』はアメリカ帝国主義を――中国を挟撃する両帝国主義大国を強烈に難詰する。『中国近代史諸問題』はアヘン戦争(1840年)から五・四運動(1919年)に至る80年間の「旧民主主義時代」を論じる。

先ず「偉大なる反ファシスト戦争に勝利して20年が過ぎた」と書き出される『反法西斯戦争的歴史経験』だが、「ソ連人民とソ連軍隊と密接不可分にあった指導を進めたスターリン」を否定する当時のソ連共産党中央を激しく糾弾し、中国共産党こそが世界の社会主義革命の総本山であることを強烈に主張している。

当時、激しく戦わされていた中ソ論争において、中国側は「社会主義国家ソ連を主力軍とする全世界の反ファシスト勢力」がスターリン指導の下で展開した「史上空前の規模であった正義の戦争」が、ファシスト(法西斯)国家のドイツ、イタリア、日本が敗北させた。その路線を受け継いで戦っているのは中国共産党だ、と言うリクツである。

『反法西斯戦争的歴史経験』は「反ファシスト戦争の歴史が明らかにしている点」として次の4項を力説する。

�:社会主義制度は過酷な経験によって鍛えられ、強大な生命力を持つに至ったものであり、プロレタリア専制国家は絶対不敗である。

�:帝国主義こそが現代の戦争の根源であり、帝国主義が本来的に持つ侵略性は永遠に変わることはない。だから世界の平和を維持するためには、帝国主義との鋭く過酷な闘争を敢えて展開しなければならない。

�:人民戦争が必ずや最終的勝利を勝ち取り、帝国主義勢力を完全に打ち破ることは可能だ。帝国主義は表面的には強大に見えるが、実際は弱々しい張子の虎にすぎない。原子爆弾もまた張子の虎であり、戦争を勝利に導く最終要素は兵器ではない。一にも二にも人であり、人という要素以外の何ものでもない。

 �:侵略勢力である帝国主義を打ち破るためには、世界各国の人民革命勢力の一致団結こそが最大の拠り所だ。敵に打ち勝つすべての力を結集し、広範な国際的統一戦線を組織し、力を集中して世界の人民にとって最も主要で最大の難敵に立ち向かうべきだ。《QED》


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