――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習53)
「飛行機は天空を飛んでゆく。まるで一羽の雄々しい鷹のようだ。見るほどに、より高く、より遠く。なんと素晴らしいことだろう。飛行機って何をするものなの、ボクが話して聞かせよう」と、立った男の子が説明をはじめる。
――毎日、数え切れないほどの数の飛行機が高い山を飛び越え、白い雲をつき抜けて、上海から昆明、広州から北京へと、旅客、貨物、郵便をいっぱい載せて、限りなく広い大空を飛んでいる。日照りの時なんか、空から薬剤を散布して雨を降らすんだ。
広い田や畑だって一気に肥料を噴霧すれば、どんな害虫だってイチコロさ。豊作は間違いなしだ。農村で収穫用の農作業機械が欲しかったら、いつだって飛行機が運んでくれる。正確な地図作り、国家防衛、森林保護、海難事故救助、遠隔辺境への物資輸送だって、飛行機なら簡単だよ――
飛行機の果たす様々な役割が微笑ましいイラストと共に判り易く解説されている。
そして最後を「大空を飛ぶ飛行機は、雄々しい鷹のようだ。祖国を建設し、国の守りを固め、なんとステキだ。飛行機は、いったいどんなことが出来るのか。みんな一生懸命考えて、聞かせてください」と閉じている。
この結びの数行を見ても、「我らが毛主席の英明なる指導の下、抗日の前線に赴き、共に侵略者を打ち破ろう」(『雪山上的号手』)、あるいは「毛主席の著作学習を通じ、革命こそが我が理想であり、闘争こそが本当の幸福であることを身に沁みて学んだ」(『王杰日記』)との違いは敢えて指摘するまでもない。
大躍進の後遺症も癒え、毛沢東が目指した急進的社会主義化路線を大きく改め、一定限度の個人の自由と私有財産を認めることで労働意欲を刺激し個々人の生活レベルを向上させる。かくて国家経済を活性化させようという劉少奇・�小平路線が輝きを増していた時期に出版されたことを考えれば、『飛機会干些什麼』が醸し出す微笑ましくもノホホンとした雰囲気が際立つばかり。
65年に出版された『新的“石器時代”』(陳仁 中国青年出版社)からも、政治の臭いは全くと言っていいほどに感じられない。
「新型硅酸塩材料的世界」という副題も見られるように、『新的“石器時代”』は当時無限の可能性を秘めた新素材と大いに期待されていた硅酸塩(silicate)と人類の関わりを石器時代から説き起こし、やがて人類の輝く未来を約束する万能の科学素材であることを熱く説く。科学ドキュメンタリーでもあり、空想科学物語でもあるから、「科学技術成就叢書」と銘打たれているのだろう。
「古代の労働人民は絶え間ない実践の末に」、「湿った粘土を捏ねて器のようなものを作り火に放り込んで焼くと、冷めた後に石と同じ程度に固くなることに気づいた」。こうして「我われ人類は銅や鉄といった金属材料を発明して後、(腐りも錆びもしない)石器に似た素材の陶器とガラスを産み出した」――このように、硅酸塩物語とも言える『新的“石器時代”』は説き起こされる。
その後、人類は「誰でもが知っている硅酸塩の家系の始祖である玻璃(ガラス)」に様々な工夫を加え、鉄より固く超高温にも耐えられるガラス、光線を遮断するガラス、レーダー波を透すガラス、さらには繊維のように細いガラス、鋼より固いガラス、ダイオード、電子計算機の「脳細胞」などを次々に発明するのであった。
セラミックの発明によってジェット機やロケットの燃焼機関の性能が飛躍的に向上したばかりか、「特殊玻璃鋼」で作られた先端部分を取り付けることで大陸間弾道弾の弱点が格段に解消され、兵器としての性能・威力が飛躍的に増すこととなったのである。《QED》