――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習12)

【知道中国 2346回】                       二二・三・念八

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習12)

手持ちの55年出版の子ども向け読み物には、以上の他に『有趣的算術題』、『有趣的圖形』(共に児童読物出版社)、『十二個月的故事』(少年児童出版社)の3冊がある。3冊は共にソ連の作品の翻訳だが、イデオロギー臭は感じられない。前2者は書名からも判るように、計算と図形への興味を持たせることを狙った小学校高学年向けの副読本で、後者はスラブ民族の民間伝説を素材にして書かれた悲しい物語だ。

3月にならなければ咲かない「白雪花」を探してこいと、継母から1月の大雪の中に放り出された娘を、森に住む1月から12月までの12人の仙人が手分けして手助けし導き、「白雪花」を持たせて家に帰す。すると「白雪花」がもっと欲しくなった継母は、自分が産んだ実の娘を森に向かわせる。しかも大雪の中を。だが娘の帰宅を待ちきれずに自分も大雪の戸外へ飛び出し、2人は凍死してしまう。残った娘は、やがて結婚し多くの子どもに恵まれ、花々に囲まれた幸福な人生を過ごした、とさ。強欲は身を滅ぼす、といった教えか。

ここで参考までに55年出版の大人向けの本を2冊紹介しておきたい。1冊は小学校算数教師の教学用参考書『算術 小学教師進修用書』(兪子夷編著 浙江人民出版社)で、もう1冊は『中國』(阿瓦林等 人民出版社)である。後者は『ソ連百科全書』(第2版第21巻)に納められた「中国」の項の翻訳とのことだが、百科全書の1項目とは言え漢字の字数では25万3千字、頁数では350頁ほどの大部のものだ。それだけに当時のクレムリンが“友邦”をどのように解剖し、どのように捉えていたのか。言い換えるならソ連によるインテリジェンスの実力の程が判るような気もする。

建国直後の国家建設に多大な影響を与えたであろう朝鮮戦争の休戦協定も53年7月には結ばれ、中国はいよいよ本格的な社会主義国家建設に向け動き出したことから、改めて科学技術の立ち遅れに気づいた。

そこで「基礎教育である小学校教育の質を高めることは、中学・高校教育の質を根本的に高めることである。算数に関する教学は小学校においえ重要な位置を占めているばかりか、これまで誰もが重視してこなかったことから、極めて低いレベルのままであり、今後は可及的速やかに質を高めなければならないことは疑う余地はない」(「編著者自序」)との現状認識から、この本を編んだとのことだ。

 目次を見ると、整数と筆記方法からはじまり、加減乗除、倍数、比例、平均、度量衡、数の分解、最大公約数、最小公倍数、分数、通分、分数の加減乗除、少数、比例などが系統的に極めて詳細に解説され、同時に小学生が実際の日常生活の中で算数的思考を身につけられるように工夫されている。そこで応用問題のいくつかを挙げてみたい。

 ■ある工場には6つの作業場があります。第1,2,3の作業場には全部で210台の旋盤が備えてあり、第4作業場は第1作業場より15台少なく、第5作業場は第2作業場より21台多く、第6作業場は第3作業場より10台少ないです。6つの作業場を合計すると工場全体では何台の旋盤があるでしょうか。

 ■3つの農業生産合作社は余った1250袋の食糧を国家に売ることになりました。乙合作社が売った量は甲合作社の2倍で、丙合作社が売った量は甲と乙の合作社の合計より350袋多いです。3つの合作社が売ったそれぞれの量を求めなさい。

 ■ある農業合作社は木炭14俵を売りました。1俵は3元4角でした。このお金で共有財産として竹製品と鉄器を買いました。竹製品の値段は鉄器の6分の1でした。それぞれの値段はいくらでしょうか。

 ■ある労働者の1年の給与は、最初の3ヶ月が毎月43元、次の5か月が毎月46元、最後の4か月が毎月47元5角でした。1年平均すると1か月当たりいくらでしょうか。《QED》


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