会場には、ノンフィクション作家の門田隆将氏や元駐日台湾大使の許世楷ご夫妻、日本台湾交流協会の高山美果・総務部長、産経新聞からは元論説委員長の吉田信行氏や論説委員で「李登輝秘録」連載中の河崎真澄氏、呉竹会会長の頭山興助氏、月刊「正論」編集長の田北真樹子さんなど、約130名が参加。金美齢さんも急遽参加されたのにはいささか驚かされました。
満堂の会場で、日本台湾交流協会台北事務所代表を10月までつとめられた沼田幹夫氏が「総括・日台関係の現状と展望」と題して講演されました。
蔡英文総統はじめ台湾の政府要人にも堂々と日本の立場などを説いてきた歯に衣着せぬ発言で知られる沼田大使は、総統選挙を戦っている蔡英文総統について「カリスマがない」、中国国民党の韓國瑜氏にも「行政官としての能力はない」などと評し、会場からは拍手も起こる辛口の講演ながら、その一方で、蔡総統については「堅実で、何よりも清潔」、韓氏にも「人を惹きつける力は侮れない」と評し、蔡総統は世論調査ほどリードしていないのではないかとする観点を提示されました。
中央通信社が詳しく報じていますので、下記にご紹介します。また、台湾紙「自由時報」も写真を2枚使い大きく報道していますので、沼田大使のプロフィールとともに併せてご紹介します。
◆自由時報:日本前駐台代表沼田:蔡韓差距恐在5%之内[12月23日] https://news.ltn.com.tw/news/politics/breakingnews/3017232
◆沼田幹夫[ぬまた・みきお] 昭和25年(1950年)、茨城県生まれ。1973年11月、外務省語学研修員採用試験合格。翌年1月に 外務省入省後、3月に拓殖大学商学部を卒業。大臣官房総務課企画官や経済協力局技術協力課長 などを経て、2003年、?種職員(キャリア)に抜擢。その後、在香港日本国総領事館領事、在 ニューヨーク日本国総領事館領事、大臣官房参事官(国会担当)、領事局長、大臣官房、特命全 権大使ミャンマー国駐箚を歴任後、2014年7月に交流協会台北事務所代表に就任。日台断交後と しては歴代2位となる5年3ヵ月を務め、この間に、経済、漁業、防災、教育などの取決めや協力 覚書を20項目締結した功績に対し、台湾の外交部から「特種外交奨章」、蔡英文総統から「大綬 景星勲章」を授与され、2019年10月15日に離任。
—————————————————————————————–台湾の総統選 沼田前駐台代表、蔡氏と韓氏の差「5ポイント以内」と予測【中央通信社:2019年12月23日】http://japan.cna.com.tw/news/apol/201912230003.aspx
(東京中央社)日本の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会の台北事務所代表(大使に相当)を今年10月に離任した沼田幹夫氏は22日、「総括・日台関係の現状と展望」と題した講演を東京都内で行い、来年1月11日に投開票される台湾の総統選について、再選を目指す民進党の蔡英文総統と野党・国民党の韓国瑜高雄市長の支持率の差は、最終的には世論調査の数字ほど大きくならない可能性を指摘した。
講演会は日本李登輝友の会が主催した。沼田氏は2014年7月から5年3カ月にわたり駐台代表を務めた。
沼田氏は、昨年11月の統一地方選で国民党が大勝した結果を受け、次期総統選と立法委員(国会議員)選で民進党が勝利する可能性は低いとする分析を東京の本部に出していたことに言及。その上で、中国の習近平氏が武力行使による台湾統一を辞さない考えや台湾との「一国二制度」の方針を示した今年1月2日の演説や、6月に起きた香港の大規模デモによって、蔡総統の支持率が大幅に上昇したことに触れ、「これもあれも習近平さんが贈ってくれたプレゼントだと思えば、蔡英文さんは女性としても非常に魅力があるんだなと思う」と冗談交じりに述べた。
蔡総統について「極めて有力で、堅実。何よりも清潔」だと評価。その一方で、「惜しむらくはカリスマ(性)がない」とし、宴会の役割で言えば「盛り上げ役」よりは「盛り下げ役」だと指摘し、選挙が佳境を迎えた今、蔡総統が選挙を盛り下げてしまえば、結果はどうなるかわからないとの見方を示した。対抗馬の韓氏については、政策も、蔡総統が有する行政官としての能力もほとんどないものの、「どんな人に対しても腰が低く、謙虚」だとし、人を引き付ける力は侮れないと一目置いた。
各世論調査の結果で蔡氏の支持率が現時点で韓氏を大きく上回っていることに触れつつ、両氏の個性を加味すれば、「(支持率の)大きな開きはもしかすると無いかもしれない。5ポイントかその範囲内なのかもしれない」と分析した。
さらに、立法委員選の行方も予測。民進党は「(議席を)確実に減らす」と断言し、「過半数の57(議席)を取れる保障はどこにもない。国民党が第1党になるかもしれない」との見通しを示した。
(楊明珠/編集:名切千絵)