今度は、米国連邦議会下院が1月23日(米東部時間22日)、台湾が世界保健機関(WHO)にオブザーバーとして復帰できるよう支持する決議を採択した。全会一致だったそうです。中央通信社の記事を下記にご紹介します。
ちなみに、米国はジミー・カーター大統領時代の1979年1月1日、「防御的な性格の兵器を台湾に供給する」や「台湾人民の安全または社会、経済の制度に危害を与えるいかなる武力行使または他の強制的な方式にも対抗しうる合衆国の能力を維持する」ことなどを定めた「台湾関係法」を制定して以来、共和党も民主党も「政策綱領」に「台湾関係法」を入れ、この国内法を基に台湾との関係を築いてきました。
また、1982年7月14日にロナルド・レーガン大統領が議会に説明した「台湾への武器供与の終了期日を定めない」ことや「台湾関係法の改正に同意しない」ことなど、米国の台湾に対する「6つの保証」を表明しました。
そして34年後の2016年7月6日、中国の台頭をにらんで、米国連邦議会の上院が「『台湾関係法』と台湾に対する『6つの保証』を米台関係の基礎とすることを再確認する第38号両院一致決議案」を可決し、再び台湾との関係強化の烽火(のろし)を挙げました。
トランプ氏が大統領に就任すると、さらにその勢いを強め、下記のような法案を次々と成立させています。
1)2018年版「国防授権法」(2017年12月12日)*トランプ大統領署名 米海軍の艦船を高雄など台湾の港に定期的に寄港させること、米太平洋軍が台湾の入港や停泊 の要請を受け入れることなどを定める。
2)台湾旅行法(2018年3月16日)*トランプ大統領署名 米国の全てのレベルの政府関係者による台湾訪問および対等な行政レベルにある台湾の政府関 係者への訪問を解禁することなどを定める。
3)2019年版「国防授権法」(2018年8月13日)*トランプ大統領署名 軍事部門の長官や総合参謀本部のメンバーを台湾に派遣し、幹部レベルの交流を要求。
4)アジア再保証イニシアチブ法 *トランプ大統領署名 「自由で開かれたインド太平洋」の実現を目指し、この地域における米国の国益(安全保障、 経済、価値)促進を定め、日本やオーストラリアなど同盟国との防衛協力強化とインドとの戦 略的パートナーシップの強化、台湾への武器売却や高官訪問などのコミットメント、米国がこ れまで支持してきた人権や民主的価値の尊重などの価値観を促進してゆくことを定める。
これ以外にも、トランプ大統領は、中国政府が米政府高官やジャーナリストのチベット立ち入りを制限した場合、国務長官はこの法案に基づいて中国政府関係者の入国査証の発給を拒否できると定める「チベット相互入国法案」にサインし、2018年12月19日に成立させています。
また、審議中の法案には、台湾に不利となる行動をとった国に対し、外交関係のレベルの引き下げや、軍事的融資などの支援の一時停止または変更などの措置をとる権限を国務省に与えるという「台北法案」もあり、中国の覇権的な台頭を阻止する法整備が着々と進んでいます。
下院で可決した世界保健機関オブザーバー復帰支持の法案は、上院でも可決されないと大統領に上ってきませんので、今後の行方を注視したいと思います。
————————————————————————————-台湾のWHO復帰を支持する法案、米下院を全会一致で通過 総統府が感謝【中央通信社:2019年1月23日】
(ワシントン 23日 中央社)米下院は22日、世界保健機関(WHO)に台湾がオブザーバーとして復帰することを支持する法案を全会一致で可決した。総統府は23日、報道資料を通じて「歓迎と感謝を表明する」と感謝の意を示した。台湾は2009年から16年までWHO総会にオブザーバーとして参加していたが、17年と18年は中国の圧力により参加がかなわなかった。
法案は、台湾のオブザーバー資格回復に向けた戦略を策定するよう米国務長官に求めるもの。条文では、蔡英文総統が16年5月に就任して以来、台湾は国際社会での活動が中国によって制限されるようになったと指摘。台湾が総会に招待されなかった場合、国務長官は報告書を提出する必要があるとしている。
法案は昨年にも下院で可決されたが、上院の審議日程が過密だったため、同法案の審議は見送られた。新議会が3日に開幕したのに伴い、テッド・ヨーホー下院議員が8日、修正を加えたものを改めて議会に提出した。
総統府は報道資料で、中国による圧力が続く中、台湾の国際社会での立場は困難なものになっているとした上で、それでも米国など理念の近い国が支持や支援を続けてくれていると謝意を表明。米国との連携を引き続き強化する姿勢を示した。
行政院(内閣)のKolas Yotaka(グラス・ユタカ)報道官も同日、台湾の声はWHOに届けられるべきだと述べ、米下院の支持に謝意を示した。健康に国境はないとし、台湾は国際保健と防疫の過程から忘れられるべきではないと訴えた。
(江今葉、顧セン/編集:楊千慧)