http://www.mag2.com/m/0001617134.html
今年の秋の共産党大会を前に、北戴河会議が開かれていると思われますが、習近平政権はネット
での政権批判が持ち上がらないように、スマートフォン上の交流サイトを使って動画やコメントを
発信する「個人メディア」を取り締まり、300件以上を一斉に閉鎖させました。
北京市のネット管理部門の発表では、「個人メディアがデマや低俗な内容を流している」という
理由ですが、それは建前にすぎません。もっとも警戒しているのは、習近平と中国共産党に対する
批判です。
中国では今年6月、「インターネット安全法」が施行されました。これは、「インターネットの
安全の保障、インターネット空間における国家の安全と社会の公益の維持、公民、法人、その他の
組織の合法的な権益の保護」を目的にしたものですが、外国企業はネットのセキュリティを中国の
やり方に適合させる必要があり、さらには中国で得たデータは中国のサーバ内に残さなくてはなら
ないとされており、中国当局による監視強化と情報検閲などが懸念されていました。
もちろんこの法律は、国内の中国人のネット活動も厳しく制限するものです。とくに、個人がス
マートフォンで発信する情報にまで監視を強めており、中国人からも不満の声が高まっています。
中国では権力を維持するために必要なものは2つ、すなわち軍と筆(マスコミ)だとされ、この2
つは「両桿子(りゃんかんつ)」と呼ばれています。中国で権力を握るためには、これが絶対的な
必要条件なのです。ですから、いくら「言論の自由への弾圧だ」という国際的な批判があっても、
これを手放すことはできません。むしろ、「言論の自由への弾圧」こそが、共産党一党独裁の条件
なのです。
このメルマガで何度も述べていますが、アメリカが保護主義化していくなかで、中国はいまグ
ローバル経済の守護神としてふるまおうとし、ダボス会議などで習近平もそう述べていますが、そ
もそも言論や情報を統制している時点で、グローバリズムとは真逆のものなのです。「情報統制さ
れた自由経済」というものは、自己矛盾であって、ありえないことなのです。
このような中国ですが、現在、コンピュータの処理能力ではここ数年、世界1位を続けていま
す。とはいえ、それはスーパーコンピュータを何台もつなげただけで、その部品はアメリカや日本
製が使われているだけですが。
それはともかく、IT大国化を目指す中国は、AI(人工知能)の開発にも力を注ぎ始めまし
た。ところが、中国の大手IT企業のテンセントがインターネット上で、AIとの会話ができる
サービスを開始しましたが、「中国共産党万歳」という人間側の書き込みに対して、AIは、「こ
んなにも腐敗して無能な政治に万歳するのか」と反論したということです。
また、習近平が提唱するスローガン「中国の夢」について尋ねられると、「アメリカに移住する
ことだ」と回答したということです。
こうしたAIの回答に慌てた中国当局は、すぐにこのサービスを停止させました。AIに自由に
発言されたら、どんな共産党批判をされるか分かったものではないからです。
しかし、AIというのは、人間の発言や行動から学習をかさねていくものです。中国当局が人権
や言論を弾圧することで、共産党一党独裁が続くならば、それこそAIは、民衆から膏血を搾り、
自由を奪い、官僚が腐敗することこそ統治の基本だと学習してしまうのではないでしょうか。
よくAIが暴走して人間を滅ぼそうとするといった仮説が議論されますが、中国共産党がつくる
AIこそ、そうした性格のものになるのではないでしょうか。まさしくAI版毛沢東の誕生です。
しかも両者は共生ができませんから、AI独裁と共産党独裁は熾烈な権力争いを演じることになる
でしょう。
話によれば、先のテンセントのAIについては、中国共産党や習近平の批判をしないように手を
加えられたそうですが、それはもはやAIではなく、共産党のプロパガンダを繰り返すだけのプロ
グラムにすぎません。中国共産党や習近平の施策がどんなに失敗確実でも、AIは批判や軌道修正
の必要性を口にしない、賛美するだけなのですから。
そう考えると、現在の中国にAI開発は不可能だということがわかります。本当のAIを開発す
るためには、現状の政策の不合理さや問題点を炙り出させることが不可欠です。しかし中国共産党
は「絶対無謬」の存在ですから、問題点を指摘するAIなど、邪魔でしかありません。
結局、AIと中国共産党は敵対する存在であることは明らかです。これは人類とAIが敵対する
存在であるかどうかという問い以前に、確実なことなのです。だから中国がグローバル経済のリー
ダーとなることが不可能だということと同様、AI分野のリーダーとなることも不可能なのです。