*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部で付したことをお断りします。
◆「MITスマイルは信頼の証」「Made in China」は粗悪品の代名詞
中国は台湾への嫌がらせの一環として、「台湾製」という表記を「中国台湾」あるいは「中国台湾区」に変えなければ、中国国内で廃棄処分にするという圧力を強めています。
もともと蔡英文政権になってから、中国は台湾製品の大陸からの締め出しを加速させてきました。昨年3月時点で、中国の輸入拒否リスト(食品・化粧品リスト)のうち、4割を台湾製品が占めていました。
今年4月には、「香港・マカオ・台湾」を独立国家のように扱ったとして、中国政府は44の航空会社に対して1ヶ月以内の修正を求めました。日本の航空会社に対しても同様の要求を行い、JALとANAは一時的に「台湾(中国)」としたものの、両社は台湾からの抗議を受け、またすぐに「台北」という表記に変更するということがありました。
5月には、無印良品が中国で展開する店舗で、スチール製の室内物干しの外装に「MADE IN TAIWAN 原産国:台湾」と印刷されたまま販売されたことが問題視され、中国の広告法「国家の利益や尊厳を損なったり、機密を漏洩したりしてはならない」という規定に違反したとことこで、中国当局から340万円の罰金を受けるということもありました。
つい先日などは、蔡英文が中南米歴訪の際、経由地のロサンゼルスで台湾発のカフェ「85度C」に立ち寄ったことで、中国では同チェーンの不買運動を活発化させています。ちなみに、同チェーン店は中国では600軒弱の店舗があります。
「台湾製」は「Made in Taiwan」の頭文字をとって「MIT」とも表現され、台湾では笑っているようなロゴを作成し、「MITスマイルは信頼の証」と銘打って、認定製品にそのロゴの使用を認めています。現在、MIT認定製品は19万6395、認定業者数は2735です。
つまり、「台湾製」というのは、ひとつの品質保証、認定マークなのです。それを「中国台湾」と改めろということは、台湾の主権、台湾人の人権をないがしろにしているうえに、著しく台湾製品のイメージを損ないます。「Made in China」は粗悪品の代名詞だからです。
あまりにもイメージが悪いため、中国自身、最近は「Made in PRC」と表記するようになっています。PRCとは「People’s Republic of China」、つまり中華人民共和国のことですが、そうやって「中国製」であることを必死で隠そうとしているわけです。
日本でも「中国製」と異なり、「台湾製」へのイメージは悪くありません。有名なところでは自転車のGIANTや、パソコンのマザーボードをつくるASUSなど、日本でもかなり展開しており、毎年、東京で台湾製品の展示・体感イベントが開かれています。今年は5回目でしたが、台湾好きで知られる女優の黒木瞳さんがスペシャルゲストとして登場しました。
◆大手中国通信企業がスマートフォン販売を停止せざるをえなくなった理由
中国が資本に物を言わせて他国企業を買収し、技術をごっそり獲得してしまうのとは異なり、台湾は日本企業の下請けから出発し、コツコツと技術を磨いてきた企業が多いのです。これが戦後NIESの一員として飛躍する原動力となりましたし、現在においても技術開発力が高いのです。
金にものを言わせた企業買収で一時的に最新技術を得たとしても、基礎的な技術開発力がなければ、それを発展させたり、改良することはできないのです。それが中国企業の弱みでもあります。
先日、アメリカ商務省が、米企業に対して、中国通信企業の大手ZTEとの取引を禁じる決定をしたところ、ZTEは部品調達ができなくなり、スマートフォンの販売を停止せざるをえなくなるということがありました。中国企業は、スマートフォンに使用されている中心技術を自分たちでつくることができないのです。
とくに、半導体の材料であるシリコンウェハをつくる機械を日本やアメリカから購入することはできても、その工作機械を中国はつくれません。そのため、次世代のシリコンウェハを独自開発できないのです。
コツコツと技術を積み上げる匠の国・日本、その日本から学びつづけた台湾と、金にあかせて技術買収を繰り返す中国とでは、基本的な思想からして異なっています。だから心ある台湾人は、自分たちの製品に「中国台湾」などとは表記したくないのです。「MIT、台湾製」に誇りを持っているのです。
◆中国と台湾が違う国であることをはっきりと国際社会に示したアジア大会
現在、インドネシアのジャカルタでアジア大会が開催されていますが、台湾は金メダル12、銀メダル12、銅メダル17を獲得しています(8月27日現在)。
とくに体操のあん馬では、台湾人の李智凱選手が金メダルを獲得、銀・銅に終わった中国人選手を押さえての優勝ということで、台湾では大きく報じられました。
中国の人民網では李智凱選手を「中国台湾選手」と紹介していますが、国旗掲揚では中国国旗とはまったく別の旗が掲揚されました。もっとも台湾の青天白日旗ではなく、台湾のオリンピック委員会の旗です。これも中国からの圧力で、青天白日旗が使えないからです。
とはいえ、両隣に中国の五星紅旗を従えて、一番高いところに台湾オリンピック委員会の旗が掲げられたのは、ある種、爽快な眺めでもありました。中国と台湾が違う国であることを、はっきりと国際社会に示したからです。
台湾人は幼い頃から中国の恫喝を受けてきましたから、「またか」という感覚です。もちろん中国にシンパシーを感じるどころか、ますます自分たちは日米欧に近いという認識が強くなるだけです。中国政府がいくら自己宣伝しても、まったく魅力がありません。
そのことは中国自身もわかっているとは思いますが、米中貿易戦争へのあせりから、台湾への圧力を強めているわけです。
中国がいくら台湾を貶め、孤立化しようとしても、国際舞台で台湾人、台湾メーカーは躍進を続けます。だから中国は台湾の国際会議や国際大会への参加自体を妨害しようとするわけですが、台湾は決して屈しません。