日本李登輝友の会メールマガジン「日台共栄」より転載
一昨日と昨日の本誌で、被災した台湾人留学生への奨学金(震災補助金)問題について
取り上げた。
交流協会が出した「募集要項」と交流協会台北事務所の「お知らせ」を紹介して、要件
を満たす留学生にはきちんと奨学金が支払われていることを伝え、交流協会の募集対象は
大学院生に限られ、学部の学生が対象となっていない問題点も指摘した。
インターネット配信する「J−CASTニュース」でも同様に「台湾からの学部留学生は、日
本学生支援機構から奨学金や震災援助金を受けたとしても、国費留学生の3分の1程度。な
ぜ国費に準じた支給を受けられないのか」という疑問を持ち、文科省の学生・留学生課に
問い合わせている。
記事によれば、文科省も問題点があることを認めており、学部生まで支給対象を広げる
ことについて「できれば検討事項にしたい」と表明していることを伝えている。
やはり、台湾からの留学生で被災して生活に困窮しているのは、国費留学生に準ずる交
流協会奨学金留学生の大学院生ばかりではなく、その奨学金の受給対象からはずされてい
る学部の留学生もいる。
財政的な制約もあるだろうが、いまは平時ではない。現行制度の制限を受けない措置が
必要とされている。緊急事態に即応できる支援体制で臨まなければならないのだ。
文部科学省と交流協会には、今回の奨学金(震災補助金)からはずされた台湾人学部留
学生に、一刻も早く「緊急援助」を行うことを要望したい。
「J−CASTニュース」はこの問題点を掘り下げて伝えているので、下記に紹介したい。
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「震災援助金ないのはおかしい」 留学生訴えに台湾メディア大騒ぎ
【J−CASTニュース:2011年7月7日】
http://www.j-cast.com/2011/07/07100846.html?p=all
自分たちだけ震災援助金がないのはおかしい――。日本留学中の台湾人大学生がフェイ
スブックでこう訴えたことが、台湾メディアに大きく取り上げられる騒ぎになっている。
その背景には、どうやら日本の留学制度上の不備があるようなのだ。
フェイスブックで訴えたのは、宇都宮市にある私大の作新学院大学に通う台湾人女子学
生だった。
◆台湾人女子大生がフェイスブックで
この学生は、各国の留学生が12万5000円の震災援助金をもらっているのに、自分たちが
もらえないことに不満を持った。そして、同じ台湾からの留学生2人とともに学校側に説明
を求めた。すると、学校側は、「台湾は国家ではない」として、受け取る資格がないと説
明したという。これを受けて、学生はフェイスブックで「台湾は日本に多額の義援金を贈
っているのに、こんな目に遭うとはひどい」などと憤った。
この訴えが、2011年7月4日に台湾メディアに大きく取り上げられ、台湾外交部も確認に
動いたという大騒ぎになっている。
文科省は3月、震災支援として、被災地の大学に通う国費留学生に緊急援助を行った。12
万5000円は、1か月分の奨学金に当たる額だ。
ところが、台湾とは正式な国交がないため、国費留学生はおらず、その援助対象にもな
らない。ただ、独立行政法人日本学生支援機構が月4万8000円の私費外国人留学生学習奨励
費を出しており、その支給者であれば、同額の援助金がもらえることになる。
フェイスブックで訴えた学生は、この奨励費の対象者でもなかったのか。
作新学院大学の学生課によると、学校側に説明を求めた学生は3人とも対象者ではなかっ
た。うち1人は、財団法人による別の奨学金を受けていたが、これは震災援助金がもらえな
いものだった。
◆日本の留学制度上に不備があった
大学院生については、台湾と民間レベルの交流を担う財団法人交流協会が、国費に準じ
て奨学金を支給している。震災援助金も、修士課程なら15万4000円、博士課程なら15万50
00円と国費留学生と同じ額をもらうことができる。
作新学院大学の学生課では、「奨学金を受けている大学院生なら、満額の援助金がもら
えます。しかし、学部生は、そんな支給はなく、気持ちの収まりがつかなくなってフェイ
スブックに投稿したようです」と話す。そして、「台湾は国家ではない」と言ったことは
否定し、「『正式な国交がない』と言ったのが拡大解釈されたのでは」と言っている。
台湾からの学部留学生は、日本学生支援機構から奨学金や震災援助金を受けたとしても、
国費留学生の3分の1程度。なぜ国費に準じた支給を受けられないのか。
このことについて、文科省の学生・留学生課では、こう説明する。
「支援機構は、台湾だけが対象ではなく、なるべく多くの留学生を支援するのが目的です。
予算に限りがあるので、その額になるのではないでしょうか」
そもそも交流協会が学部生にも支給対象を広げれば、何の問題もないはずだ。この点に
ついて、東京本部総務部では、「過去の経緯までは把握していませんが、財政的な制約が
あるのだと思います」と言う。
文科省でも、問題点があることを認めており、学部生まで支給対象を広げることについ
て、「できれば検討事項にしたいと思います」(学生・留学生課)と言っている。