平成23年2月5日産経新聞・【書評】より転載
『中国の核戦力に日本は屈服する 今こそ日本人に必要な核抑止力』
■「日本の核保有は道徳的義務」
「勢力圏拡大」を至上命令としている中国。昨年の尖閣事件は、後年「中国による主権侵害の前奏曲にすぎなかった」となるだろう。
ワシントン在住25年の国際政治・経済アナリストである著者は、何年にもわたって国務省、国防省、CIAなどの幹部や議会の軍事委、外交委の政治家や著名学者と喧々囂々(けんけんごうごう)の議論をしてきた。その結論は、日本人にはちょっと衝撃的だ。
「二〇二〇年代、中国の軍事費はアメリカを凌駕する」、「アメリカは経済破綻に瀕し、軍事費を大幅に縮小せざるを得ない」。従って「米軍は東アジアから後退する(中国が穴を埋める)」、「アメリカは自国に届く核兵器を持つ国とは戦争しない」ので「日本に核の傘はない、MDでは核攻撃を防ぎきれない」。故に「日本は中国の勢力圏に吸収される(属国になる)」、しかし「日本には核抑止力を持たせたくない」というものだった。実名で登場するアメリカ人と著者との激論は非常に面白い。
そもそも核の傘もなく、核も持たなければ、日本はいくら空母や原潜を持とうと、中国とは対等になりえず、最終的には屈服するしかない。これが国際常識だ。
だから「被爆国日本が核武装などとんでもない」というのは今や「日本は中国の属国でよい」と同義なのだ。
「自国民を核攻撃から守るために核を保有する−これは二一世紀の日本人に課された道徳的義務である」と著者は説く。同感。
あなたはこの本を読んでも核保有に反対ですか?(伊藤貫著/小学館101新書・893円)
小学館出版局プロデューサー兼編集長 佐藤幸一