2005年2月19日、ライス国務長官、ラムズフェルド国防長官、町村外務大臣、大野防衛
庁長官による日米安全保障協議委員会、いわゆる「2プラス2」において「台湾海峡問題
の平和的解決」がその共通戦略目標に掲げられたことは未だ耳目に新しい。
その具体化について、この2月から、日米の外務、防衛当局者が台湾有事に至る複数の
シナリオの研究に着手するというニュースが今朝の「西日本新聞」で報道された。
記事中、「日米は台湾の独立宣言、中国側からの武力行使など複数の可能性を研究」す
るとあり、独立宣言の可能性を研究するというのだから、それが本当なら画期的と言って
よい。
安倍総理が昨年10月に訪中した際、「台湾の独立を支持しない」と発言したことを未だ
に非難する向きもあるが、この米軍と自衛隊による共同対処計画について、すでに首相官
邸は了承を与えたという。
そうだとすれば、安倍総理のこの「独立を支持しない」発言は、日本政府の従来からの
建前であり、「支持もしないが、反対もしない」というのが本音であると解釈する方に説
得力が出てくるのではないか。
安倍総理になってから、台湾問題に対する日本の立場を示すと考えられるいろいろなシ
グナルが出されている。例えば、10月末の中川昭一・自民党政調会長と陳水扁総統とのテ
レビ会談、11月の森前首相の訪台、海賊情報共有センターへの対処、12月に入ってからの
台湾人観光客への国際免許証の承認方針など、安倍総理から台湾へのメッセージと思われ
る事柄が少なくない。
台湾の独立宣言の可能性を含むこの米軍と自衛隊による共同対処計画も、その一つと考
えてよいだろう。共同対処計画について今後とも注視していくとともに、安倍政権が台湾
を「統治の実態」として認め、日台関係をさらに深めていくことを切願する次第だ。
(メルマガ「日台共栄」編集長 柚原正敬)
日米政府 中台有事に対処計画
来月から研究開始 日本は後方支援想定
【1月4日 西日本新聞】
日米両政府が、中国と台湾間の有事を視野に、米軍と自衛隊による共同対処計画の検討
開始に基本合意していたことが分かった。複数の日米関係筋が3日、明らかにした。双方
の外務、防衛当局者が2月から中台有事に至る複数のシナリオの研究に着手する。日本側
は周辺事態法を根拠に、給油、医療などの「後方支援」の可能性を探る方針だが、台湾の
独立を認めない中国は強く反発しそうだ。
周辺事態法の適用範囲に、台湾が含まれるかを明確にしてこなかった日本政府の従来見
解との整合性も問われることになる。
日米は2005年2月、在日米軍再編の前提として合意した「共通戦略目標」の中で、中台
問題の平和的解決を目指す一方、アジア太平洋地域で「日米に影響を与える事態に対処す
るための能力を維持する」と明記。中台有事をにらんだ対処計画は、この戦略目標を具体
化する動きで、背景には台頭する中国への米国の根強い警戒感がある。
関係筋によると、日米は台湾の独立宣言、中国側からの武力行使など複数の可能性を研
究。その上で、周辺事態法を柱とする日米防衛協力新指針(ガイドライン)関連法に基づ
き、補給、輸送、修理、医療などの「後方地域支援」に加え、(1)米兵らを対象にした
「後方地域捜索救助」(2)船舶検査活動(3)在外邦人救出活動−が検討されるとみら
れる。
日米の外交、防衛当局者が在日米軍再編に関する06年10月の協議で、中台有事における
軍事協力の可能性を検討することで一致。まず対処計画の前提となる有事シナリオ研究か
ら始める段取りで、首相官邸の了承を得たという。
ただ、米側が中台有事に絞った検討を期待し、外務省も同調しているのに対し、防衛庁
は尖閣諸島や沖縄などへの日本有事に波及する事態を含む包括的な計画の研究を想定。両
政府内で位置付けに食い違いがあり、調整は難航しそうだ。