本が(台湾当局の)国連加盟に向けた住民投票に明確に反対して、適切に処理すること
を望む」と注文を付けられた。胡主席のこの注文に対して、高村外相は「1972年の日中
共同声明以来、日本の立場は一貫している。安心してほしい」(12月4日付、西日本新聞
=下記参照)と応じたという。
台湾の国連加盟についてはすでにアメリカが反対を表明し、日本も日中共同声明を根
拠に「台湾を国家として扱わない」として反対を表明している。しかし、2008年に実施
予定の住民投票についてはアメリカが反対を表明しているのに対し、日本はこれまで沈
黙を守ってきた。
ところが、高村外相が「安心してほしい」と中国側に言質を与えた。この報道の通り
だとすれば、日本は台湾の住民投票に反対する立場を表明したことになる。
そうだとすれば、これは誤ったシグナルを中国に送ったことになる。日本はこれまで
「台湾を国家として扱わない」ことと、台湾国内で行われる住民投票とは関係がないと
の認識に立つが故に住民投票に対して口をつぐんできた。それは、2004年の総統選挙の
ときに行われた住民投票に対して、アメリカに追従するように「内政干渉」ともいうべ
き「申し入れ」を行って台湾国内に大きな混乱をもたらした反省の上に立ってのことだ
ったろうと思われる。
そもそも日本は、日中共同声明を根拠にするのであれば、「台湾は中国の一部」とい
う中国の主張に縛られる必要はない。日本はその主張を承認しているわけではなく、あ
くまでも「理解し尊重」する立場以上でも以下でもない。また、近年の日本は台湾に対
してノービザを実施し、相互運転免許制度を承認して、台湾と中国を明確に分けて認識
している実績がある。
ましてや、中国が台湾を代表しているという事実はない。中国がそうしたいだけであ
る。台湾を己が領土としたい中国に誤ったシグナルを送れば、日本は自分で自分の首を
絞める結果となる。台湾の次の標的が日本であることは、李登輝前総統はじめ中国を知
る人々にとってはあまりにも明白な現実だからだ。
日本はこの現実を認め、日本の国益にそって、隣国台湾が国際社会でどのように位置
づけられたらよいのかについて積極的に関与してゆくべきであろう。中国の主張に阿ね、
アメリカの発言に追従する時代はとうに過ぎている。
(本誌編集長 柚原正敬)
胡主席 来年早い時期に訪日 高村外相と会談で表明 台湾問題「反対を」
【12月4日 西日本新聞】
【北京3日傍示文昭】訪中している高村正彦外相は3日、北京・人民大会堂で中国の
胡錦濤国家主席と会談した。胡主席は、自らの訪日について「来年の比較的早い時期に
公式訪問したい」と述べ、中国元首として1998年の江沢民国家主席(当時)以来、
10年ぶりとなる公式訪日への意欲をあらためて強調した。
胡主席はまた、台湾の陳水扁政権が来年、台湾名での国連加盟の賛否を問う住民投票
を予定していることに関して「地域の平和と安定を著しく害する」と強調した上で、「日
本の不利益にもなり、明確に反対してほしい」と要請。高村外相は「1972年の日中
共同声明以来、日本の立場は一貫している。安心してほしい」と応じた。
一方、高村外相が東シナ海のガス田共同開発問題の解決に向け、指導力の発揮を要請
したのに対し、胡主席は「両国の指導者が大局的見地から対話を堅持し、解決する政治
的意欲を持つことが大事だ」と指摘。「早期解決に賛成する」と述べるにとどまった。
ガス田開発問題について高村外相は1日、楊潔〓中国外相との会談で、早ければ年内
にも予想される福田康夫首相の訪中までに決着を目指すことを確認したが、具体的な進
展は得られなかった。
中国元首が外国の閣僚と単独で会談するのは極めて異例で、日本の外相とは2002
年9月に当時の江主席が川口順子外相と会談して以来、5年3カ月ぶり。
※〓は竹かんむりに虎