4年前の失策を踏襲するブッシュ政権。台湾に内政干渉 [宮崎 正弘]

アメリカのライス国務長官が21日の総括記者会見で、台湾名義での国連加盟の是非を
問う住民投票について、「挑発的な政策だ」と批判し、米政府として明確な反対方針を
表明した。アメリカはまたもや台湾に内政干渉するという愚を犯した。

 日本は今のところ、訪中した高村正彦外相が12月3日に胡錦濤国家主席と会談した際、
胡主席から「日本が(台湾当局の)国連加盟に向けた住民投票に明確に反対して、適切
に処理することを望む」と注文を付けられ、高村外相が「1972年の日中共同声明以来、
日本の立場は一貫している。安心してほしい」と応じたと伝えられているが、「安心し
てほしい」が、米国のような反対方針を表明したものかどうか定かでない。

 日本は、2004年の総統選挙のときに行われた住民投票に対して、アメリカに追従する
ように「内政干渉」ともいうべき「申し入れ」を行って台湾国内に大きな混乱をもたら
したことを反省している。それ故、台湾の住民投票に関してはこれまで明確な方針を表
明していない。

 ここにきて、アメリカ政府が明確な反対方針を表明したことに、評論家の宮崎正弘氏
(本会理事)が「北京との連絡ミスか、あるいはライス国務長官のフライング失態であ
ろう」と指摘し、さらに、これは「台湾の挑発にまんまと嵌った」とも指摘している。

 本日発行の「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」を転載してご紹介したい。

 国連にもWHOにも加盟できない台湾が、民意を確認するために実施しようとしてい
る「国連加盟の住民投票」のいったいどこが問題なのだろう。台湾が団結するのを中国
が嫌がっている構図しか見えてこないのだが……。

 日本は「相手の嫌がることはやらない方がいい」のではなく、国益に適うなら、相手
の嫌がることでもやらなければならないのだ。日本は日本の国益のために、台湾の住民
投票に関して口をはさむような内政干渉をしてはならない。

                    (メルマガ「日台共栄」編集長 柚原正敬)


4年前の失策を踏襲するブッシュ政権。台湾に内政干渉
住民投票をやめろ、と露骨な圧力に台湾民衆が反発

【12月23日 宮崎正弘の国際ニュース・早読み 第2036号】

 コンドレーサ・ライス米国務長官が馬脚を現した。

 12月21日の記者会見でライスは「台湾が『台湾名義』での国連加盟を問う住民投票を
計画しているのは『挑発的な政策』である」と決め付けたのだ。

 そして「台湾海峡の緊張を不必要に高めるだけであり、住民投票を中止するように」
と強く警告する挙にでた。

 スティタス・クオ(現状維持)優先の立場に立脚する米国としては、そういいたいの
はわかるにせよ、明らかに内政干渉である。

 だが、陳水扁総統は、このライス発言を待っていた節がある。

 4年前の総統選挙でも、土壇場で米国が台湾の住民投票に内政干渉し、反発を強めた本
土台湾人が、優勢だった国民党・親民党連合を破り、僅差で陳水扁続投となった。

 1996年選挙でも、直前に中国はミサイルを台湾海峡へぶち込み、緊張感を高めた結果、
台湾独立を主張する李登輝の圧勝に結びついた。

 2000年総統選挙は、国民党分裂により、陳水扁が漁夫の利を得たのは基本構造だが、
やはり土壇場で朱容基(首相、当時)の強行発言が反作用を引き起こし、民進党の勝利
となった。

 それゆえ、中国は台湾の総選挙と総統選挙を目の前に、久しくだんまりを決め込んで
いた。

 うっかり強硬な態度を示せば、北京の希望する馬英九の当選が遠のき、つまり台湾の
挑発に乗れば、逆に台湾独立派を有利にしてしまうと踏んでいるからだ。

 米国は北京の圧力にまけて、再び三度、台湾へ「独立を示唆するような、いかなる動
きにも反対」という立場を鮮明にしてきたが、おそらく北京との連絡ミスか、あるいは
ライス国務長官のフライング失態であろう。台湾の挑発にまんまと嵌った。

 陳水扁総統は直ちに反論した。

 ライス長官の警告に対して、「台湾に挑発政策はない。住民投票は2300万人の台湾人
民の民意を示すことにすぎない」。

 問題の『住民投票』とは、じつは結果がどうでても、国際法的にレジティマシー(合
法性)がない。

 与党・民進党は2008年3月22日の総統選挙と同時に住民投票を行ない、「台湾の国連加
盟は是か非か」と問う。

 野党・国民党も住民投票には乗り気で、ただし「中華民国としての国連復帰は是か非
か」と問う。

 すでに台湾では憲法に従い、住民投票実施を求める272万人以上の署名が法に基づいて
集まっている。

 さらに陳水扁総統は付け加えた。

「挑発しているのは台湾ではなく、中国だ。中国のほうが台湾対岸に988基以上の短距離
弾道ミサイルを配備しているではないか。台湾はすでに主権独立国家であり、中華人民
共和国の一部ではない」と明言した。

 台湾の緊張が高まれば高まるほどに、台湾人アイデンティティへの自覚が広がり、そ
の行き着く先の投票行動がどちらに有利になるか。書くまでもないことであろう。


台湾の住民投票に反対=「挑発的政策」と米国務長官
【12月22日配信  時事通信】

 【ワシントン21日時事】ライス米国務長官は21日の記者会見で、台湾の陳水扁政権が
計画している「台湾」名義による国連加盟の賛否を問う住民投票について、反対する立
場を明確に表明した。

 長官は「われわれは『1つの中国』政策を堅持し、台湾の独立を支持しない」と強調。
「(住民投票は)挑発的な政策であり、台湾海峡の緊張を高める。台湾の住民に利益を
もたらさない」と批判した。

 米政府は今後、住民投票計画の撤回に向けて台湾当局への圧力を一層強めていくとみ
られる。


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