台湾駐日代表処の許世楷代表は4月18日、立法院に台湾と日本の関係を報告した際、
馬英九氏が総統就任式までに訪日することは困難だろうとの見方を示した。
このニュースを伝える台湾の「Radio Taiwan International」は冒頭、「台湾と日本
の間には正式な国交が無いため、日本政府は台湾の総統、副総統、行政院長、国防部長、
外交部長の日本への入国を認めていない」と書き起こしている。
だが、李登輝前総統も形式的にはノービザで訪日できるようにはなっているものの、
実際は「台湾の人が日本に行くにはもうビザ(査証)がいらないはずだが、どうも私は
違うみたいなんだ。日本の外務省はちっとも変わっていない」(4月18付「フジサンケイ
ビジネスアイ」掲載「若者たちよ【4】」)と述べているように、実際は違う。
もちろんセキュリティ問題という現実的要請もあり、詳細な訪日計画書を提出するな
ど、一般観光客とは異なる。それは一面、元首経験者として致し方ない面もあるだろう。
だが問題は、日本が台湾の総統、副総統、行政院長、国防部長、外交部長の入国を認
めていないことであり、日本からの訪台も、総理大臣をはじめ大臣や副大臣、衆参両院
議長、そして国家公務員は課長までしか認めていないことだ。日本は台湾との関係を
「非政府間の実務関係」と位置づけながら、日本自ら実務関係の最大の推進者である局
長や次官クラスの訪台を禁止し、台湾との実務レベル交流の道さえ閉ざしているのが現
実なのだ。
これでは、いかに観光客の往来が日台で250万人を超えたにしろ、日本と台湾の交流
は本質的なものにはならない。
実はこの4月15日、陳水扁総統から「特種大綬景星勲章」を授与された扇千景・前参
議院議長は「台湾新幹線の開通式にも招待を受けたが、参議院議長の身分で訪台するこ
とは不都合であり、出席できず遺憾であった」と述べ、このような制限に異論を唱えて
いる。
日本が対中関係、対台湾関係で自立した立場を貫こうとするなら、また「統治の実態」
としての台湾を認めるなら、台湾との政府間交流を極端なまでに回避する現状を変更し
なければならないのである。
まず、台湾と実務レベルでの交流を促進するために、外務省は積極的に「国家公務員
渡航制限の撤廃」に向けて動き出すべきだろう。そして、これが実りある政府間交流に
つながってゆくことは誰の目にも明らかなことだ。それが日本の国益に合致しているこ
ともまた、自明のことであろう。
(メルマガ「日台共栄」編集長 柚原 正敬)
許・駐日代表、馬英九氏の訪日は困難との認識
【4月18日 Radio Taiwan International】
中華民国台湾と日本の間には正式な国交が無いため、日本政府は台湾の総統、副総統、
行政院長、国防部長、外交部長の日本への入国を認めていない。次期総統に当選した馬
英九氏は5月20日の総統就任後は訪日できなくなることから、それまでに日本を訪れた
い考え。
中華民国台湾の日本駐在代表、許世楷・代表は18日午前、立法院で台湾と日本の関係
について報告した。馬英九氏の訪日の手配について報道陣にたずねられた許世楷・駐日
代表は、「何も話せない」としながらも、5月初めに中共の指導者・胡錦涛氏が訪日す
ることから、「今だろうが、あとだろうが同じだ。馬英九氏と胡錦濤氏の訪日が一緒に
される(同時期になる)のはうまくない」と述べ、日本側にとって、今、馬英九氏の訪
問を受け入れるのは難しいとの認識を示した。
馬英九氏はかつて、釣魚台(日本名:尖閣諸島)の領土防衛運動に関わったことがあ
るため、反日派と見られることが多い。総統就任後、これが台湾と日本の関係に悪影響
を及ぼすのではとの問いかけに対し、許世楷・駐日代表は、馬英九氏の二度の訪日を通
じて日本側は馬英九氏を「実務派」ととらえるようになり、馬英九氏に対する疑念はす
でに最低レベルに弱まったとし、悪影響が出るかどうかは馬英九氏の今後の行い次第と
の見方を示した。馬英九氏は2006年7月と昨年11月に日本を訪問した。
胡錦濤氏が訪日して日本と共同で発表する文書について、許世楷・駐日代表は、日本
は「台湾は中華人民共和国の一部ではない」との立場を堅持しているので、中国大陸側
が要求する「台湾独立を支持しない」との内容は盛り込まれないとの見方を示した。