【「SAPIO」2009年6月24日号(6月3日発売) 書闘倶楽部・この本はこう読め】
李登輝元総統「尖閣は日本領」発言の衝撃
再び日台関係に注目が集まっている。きっかけは4月5日に放送されたNHKスペシャル
「アジアの”一等国”」。取材を受けた台湾人が「騙された」と憤るほど日本による台湾統
治の苛烈さが強調され、国内の親台派を中心に「偏向報道」だとの抗議行動が起こった。
そうしたなか、日台の絆を再確認するための格好の書が登場した。李登輝元台湾総統が
昨年9月に沖縄へ初訪問した際の全記録である。本書に掲載された講演録や旅の軌跡から
は、彼の日本への愛情がありありと感じられる。
平和祈念公園やひめゆりの塔を見学した元総統は沖縄の印象をこう語った。
「沖縄は六十年前にあれだけ破壊されたにもかかわらず、これだけの発展を遂げました。
街並みも整っています。沖縄のみなさまは本当によく努力されたものと、私は感服いたし
ました」
なかでも衝撃的なのは、尖閣諸島に関する発言だろう。元総統は、「戦前の日本統治時
代には、琉球の漁民は尖閣列島近辺で漁業をして生計を立てていた」として、「尖閣列島
はまちがいなく日本の領土」と断言したのだ。さらに返す刀で馬英九政権の「尖閣列島は
中華民国の領土」という主張を、「ただの政治的なもの」と斬って捨てる。この発言は大
きな反響を呼んだが、83歳という高齢にして、政治家としての存在感には些かの衰えも見
られない。いや、むしろ彼方台湾における現政権の低迷、此方日本の指導者たちの小粒ぶ
りを見るにつけ、彼が如何に突出した巨人たるか、再認識させられた次第である。
NHK問題が起こるまで、近年、日本国内で台湾への関心が薄れていたように思えてな
らない。今後の日台関係について元総統が語った言葉を、我々はどのように受け止めるべ
きか。
「日本人を中華台湾と同じく中華思想による精神的な束縛から解放し、日本人と台湾人が
中国からの精神的独立によって、国交なき日台の立体的な関係を築き、心の絆を結び、日
台の若者の心を掴み、日本と台湾の主体性・アイデンティティの形成に寄与できるよう努
力すべきではないかと、私は思っております」
にほんりとうきとものかい 日本と台湾の親善を象徴する李登輝元台湾総統の名前を冠し、
2002年に設立。「文化交流を主とした新しい日台関係の構築」をめざし、李登輝元台湾総
統の来日を関係各所に働きかけ、念願の『奥の細道』散策の完全実現などを目的に掲げる。
編著に『李登輝訪日 日本国へのメッセージ』がある。
■SAPIO(6月24日号)
http://skygarden.shogakukan.co.jp/skygarden/owa/sol_magcode?sha=1&zname=2300&keitai=0
■編者 日本李登輝友の会
■書名 『誇りあれ、日本よ−李登輝・沖縄訪問全記録』
■版元 まどか出版
■体裁 A5判、上製、160ページ
■定価 1785円(税込)
■発売 平成21年4月10日
http://www.madokabooks.com/bd/ISBN978-4-944235-46-9.html
■執筆
・特別寄稿 李登輝(台湾元総統)
・はじめに 小田村四郎(日本李登輝友の会会長)
・第1章 沖縄に届いた台湾からの風
仲井眞弘多(沖縄県知事)、櫻井よしこ(ジャーナリスト)、蔡焜燦(台湾
歌壇代表)、永井獏(琉球大学教授)、喜屋武朝章(沖縄県九州大学同窓会
副会長)、稲嶺惠一(前沖縄県知事)、高嶺善伸(沖縄県議会議長)、李明
宗(台北駐日経済文化代表処那覇分処処長)、城仲模(台湾李登輝之友会全
国総会総会長)、國場幸之助(前沖縄県議会議員)
・第2章 旅の軌跡
早川友久(日本李登輝友の会理事)、新崎昌子(ひめゆり平和祈念資料館)、
大熊義巳(四つ竹支配人)、片木裕一(李登輝学校日本校友会理事長)、大
林千乃(東南植物楽園代表取締役)、新垣旬子(琉球華僑總會會長)
・第3章 沖縄からのメッセージ(李登輝元総統講演録)
台湾が直面する内外の危機
学問のすゝめと日本文化の特徴
台湾を正常な国家とするために
・第4章 李登輝元総統が結んだ日台の絆
高里洋介(那覇市立繁多川図書館館長)、牛尾弘行(拓殖大学学友会沖縄県
支部支部長)、黄香・呉婉如・廖瑩[女亭]、黄木壽、林棟滄、楊明珠(台湾
中央通信社東京特派記者)、呂佳頴(フォルモサテレビ記者)、長谷川周人
(産経新聞台北支局長)
・第5章 尖閣諸島は日本領
柚原正敬(日本李登輝友の会常務理事)永山英樹(台湾研究フォーラム会長)
・あとがき 田久保忠衛(日本李登輝友の会常務理事)