【尖閣】日台漁業交渉の最大の障壁は馬英九氏提唱の「東シナ海平和イニシアチブ」

馬英九総統は2月18日、中国に拠点を持つ台湾企業の関係者(台商)との会合に出席、尖閣問
題をめぐってまたもや「中国と連携しない」「中国との共闘はありえない」と表明した。その
理由を3つあげたという。

≪まず、法理上、中華民国が日本と結んだ中日平和条約(日本名:日華平和条約)を中共は否
定しているので、中国大陸と連携する糸口がないこと。次に、政府が提示した東シナ海平和イ
ニシアチブに対して中共が何の意見も示していないこと、そして最後に、台湾が日本と漁業問
題を話し合う際に、中共が台湾と日本は主権問題には触れないよう希望していること。馬・総
統は、漁業権について話し合うのに、主権の問題に触れないわけがないとしている。≫
(Radio Taiwan International)

 しかし、本誌で何度も指摘してきたように、馬氏は昨年8月5日に発表した「東シナ海平和イ
ニシアチブ」に続き、9月7日、彭佳嶼において、この「東シナ海平和イニシアチブ」をどのよ
うに推進していくかを記した「東シナ海平和イニシアチブ推進綱領」を発表した。なんとそこ
には台湾と日本と中国が対話し協議しようと書かれていた。「『台湾と日本』『両岸(台湾と
中国大陸)』『日本と中国大陸』三組の二国間対話をより一層進め、多国間協議へと邁進し、
東シナ海の平和と協力を実行する」と記してあった。

 漁業交渉についても「二国間と多国間の漁業会談および、その他の漁業協力交流を開き、漁
業協力と管理メカニズムを構築する」と明記しているのだ。

 尖閣をめぐって「中国とは連携しない」と再三再四強調してきた馬氏は、今回もまた「中国
と連携しない」「中国との共闘はありえない」と表明した。

 だがこの「東シナ海平和イニシアチブ推進綱領」では、中国を引き入れて漁業会談を開き、
共同で資源を開発しようと提案しているのである。

 こんな見え透いたダブルスタンダードを誰が支持するというのだろう。日台漁業の最大の障
壁は、中国を引き入れようとするこの「東シナ海平和イニシアチブ」と「推進綱領」にあるこ
とは、誰の目にも明らかだろう。

 以下に、外交部が発表した「東シナ海平和イニシアチブ」と総統府が発表した「東シナ海平
和イニシアチブ推進綱領」の全文を紹介したい。


「東シナ海平和イニシアチブ」に関する外交部声明
【外交部 2012年8月5日】

 最近、東シナ海及び釣魚台列島水域で発生した一連の争議に対し、中華民国政府は、釣魚台
列島は台湾の付属島嶼であり、中華民国の固有領土であることを改めて表明する。

 中華民国は、釣魚台列島は「カイロ宣言」、「ポツダム宣言」、「日本降伏文書」、「サン
フランシスコ平和条約」、「中日和約」(日華平和条約)などにより、台湾とともに中華民国
に返還されるべきと主張する。

 中華民国は、関係国がこの地域に対して異なる主張があるため、長年来争議が絶えないこと
を理解し、最近この地域の緊張がにわかに高まっている事態に鑑み、中華民国としては、関係
国が国連憲章と国際法の原則に則り、平和的に争議を解決するよう鄭重に呼びかける。

 中華民国政府の釣魚台列島問題に対する一貫した主張は、「主権はわが国にあり、争議を棚
上げ、和平互恵、共同開発」である。しかし、この争議と関係ある東シナ海は、西太平洋海空
航路の要衝に位置しているため、アジア太平洋地域、ひいては世界の平和と安定にも深く関わ
っている。この地域の持続的平和と安定、経済の発展と繁栄、海洋生態の永続的発展を促進さ
せるため、関係国が積極的に共存共栄の道をはかることを望む。そのため、中華民国は「東シ
ナ海平和イニシアチブ」を提起する。

 我々は各関係国に次のように呼びかける。

一、 対立行動をエスカレートしないように自制する。

二、 争議を棚上げにし、対話を絶やさない。

三、 国際法を遵守し、平和的手段で争議を処理する。

四、 コンセンサスを求め、「東シナ海行動基準」を定める。

五、 東シナ海の資源を共同開発するためのメカニズムを構築する。

 中華民国政府は、「東シナ海平和イニシアチブ」の早期実現、東シナ海が「平和と連携の
海」になるよう、関係国が一致努力するよう切望する。


東シナ海平和イニシアチブ推進綱領
【2012年9月7日 総統府】

 東シナ海の緊張が高まっていることを憂慮し、「主権がわが国にあり、争議を棚上げ、平和
互恵、共同開発」と言う原則に基づき、馬英九総統が2012年8月5日に「東シナ海平和イニシア
チブ」を提出し、関係国に自制するよう、いたずらに対立をエスカレートさせるべきでなく、
争議を棚上げにして対話と意思疎通を図ることを諦めず、国際法を遵守し、平和的方式で紛争
を処理し、コンセンサスを求め、「東シナ海行動基準」を制定し、東シナ海の資源を共同開発
するメカニズムを構築するよう呼びかけた。「東シナ海平和イニシアチブ」の効果と影響を深
化させるため、当行動綱領を提出する次第である。

一、推進段階

「東シナ海平和イニシアチブ」の推進には、次のような二段階に分ける。

(一)平和的対話、互恵協議

 この段階では、平和的方式で東シナ海を巡る争議を処理し、トラックワンとトラックツーを
通じて対話のメカニズムを構築、関係国が東シナ海をめぐる問題に対して、二国間或いは多国
間協議を通じて、相互信頼と共通利益を強化すること。

(二)資源共有、連携開発

 この段階では、各種の対話と協議の制度化を通じて、関係国の実質的な連携プロジェクトの
推進を促し、共同開発のメカニズムを構築、東シナ海における平和連携のネットワークを形成
すること。

二、主な議題

(一)漁業:二国間或いは多国間の漁業協議及びその他の漁業交流を開催し、漁業連携と管理
   メカニズムを構築すること。

(二)鉱業:台湾北部沖の共同探査を推進し、連携開発と管理メカニズムを構築すること。

(三)海洋科学研究と海洋環境保全:国を跨る東シナ海の海洋と生態に関する研究計画を推進
   すること。

(四)海上安全と非伝統的安全:二国間或いは多国間の執行機関の交流と海難救助に関する協
   力を推進、海上安全と海上犯罪取り締まりを巡る連携のメカニズムを構築すること。

(五)東シナ海行動基準:トラックワンとトラックツーの対話メカニズムを推進、平和的で紛
   争を解決するメカニズムの構築を研究、相互信頼の醸成を促し、関係国同士が「東シナ
   海行動基準」の締結を促すこと。

三、推進目標

 中華民国政府は国際社会の「ピースメーカー」としての役割を果たし、「東シナ海平和イニ
シアチブ」と推進綱領を提出した後、関係国が「協議で対抗に取って代わる」、「臨時措置で
争議を棚上げにする」方式で、地域の平和と安定を維持させる。長期に言うと、現在の「台
日」、「両岸」、「日中」三組みの二国間対話から多国間対話に向けて邁進させ、東シナ海の
平和と連携を確実に推進していきたい。


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