海上自衛隊の護衛艦が台湾海峡を初通過の快挙 岸田総理が指示

昨日(9月25日)午前、海上自衛隊護衛艦が自衛隊の発足以来、初めて台湾海峡を通過した。

それも、オーストラリアやニュージーランドの海軍艦艇と共に通過したという。

中国の覇権主義的台頭に楔を打ち込む快挙と言ってよい。

読売新聞が早朝5時ともっとも早く報じたようで、NHKや共同通信、産経新聞などが続いて報道した。

読売新聞によれば、「岸田首相が政府内で検討を進めた結果、護衛艦の派遣を指示」し、「首相はこのまま何も対応を取らなければ、中国軍の行動がさらにエスカレートする可能性があるとみて、海自派遣に踏み切った」と伝えている。

これまで日本李登輝友の会が安全保障に関する「政策提言」を発表すると、会員などから「自衛艦は台湾海峡を通ったことがあるのか」との質問を受けることがたびたびあった。

海上自衛隊護衛艦隊司令官をつとめた方など海上自衛隊出身者に確認すると「日本は台湾海峡を国際水域とするが、台湾海峡を通過せよという命令はなかった」と、悔しさがにじむような口ぶりの返答だった。

台湾海峡は国際水域ではないと中国政府は主張してきたものの、米国は台湾海峡は国連海洋法条約に基づく国際水域だとし、これに同調するカナダ、英国、フランス、オーストラリア、ドイツなどの軍艦が台湾海峡を通過している。

政権も末期も末期にきて、岸田文雄総理は木原稔・防衛大臣などと検討し、米国やオーストラリア、ニュージーランド政府とも綿密な打ち合わせを経、自衛艦の台湾海峡通過を決めたようだ。

9月21日にバイデン大統領の私邸で行った日米首脳会談も、同日の午後に米東部のウィルミントン近郊で開かれた日本、米国、オーストラリア、インドによる「クアッド(Quad)」首脳会議も、主要テーマは中国が覇権主義的な動きを強める東・南シナ海情勢だった。

日米首脳会談では「中国による東シナ海や南シナ海における力による一方的な現状変更の試みに反対し、毅然として対応することを確認」(外務省)し、クアッドでは、インド太平洋地域の不審な船舶動向を合同監視するなど海洋安全保障の連携強化で一致したという。

岸田総理が政権末期になって、いまさら日米首脳会談やクアッド首脳会議かといぶかっていた。

しかし、今回の日米首脳会談とクアッドは、日本の自衛艦、オーストラリアとニュージーランドの軍艦による台湾海峡通過に関する最終確認の場でもあったのではないか、中国の覇権主義的な動きを抑制する最大効果を狙ったクアッド連携だったのではないかと考えると、辻褄が合ってくるように思える。

台湾海峡を自衛艦などが通過した25日午前は、中国が訓練用の模擬弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)を太平洋に向けて発射した。

中国は44年ぶりにICBMの発射を公表したという。

中国のICBM発射訓練の実施を事前に知った日本は、米国やクワッドと組み、自衛艦による台湾海峡の初通過という衝撃を中国に与えることで、中国のエスカレーションを抑止することを狙った可能性もある。

そうだとすれば、日米同盟やクワッド連携の強化にもつながり、やはり自衛艦による台湾海峡の通過は快挙である。


海自護衛艦「さざなみ」が台湾海峡を初通過、岸田首相が派遣指示…軍事的威圧強める中国をけん制【読売新聞:2024年9月26日】https://www.yomiuri.co.jp/politics/20240925-OYT1T50170/?utm_source=webpush&utm_medium=pushone

海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」が25日、自衛隊発足以来、初めて台湾海峡を通過したことがわかった。

中国は8月の情報収集機による日本領空侵犯などで軍事的な威圧を強めており、それらの対抗措置として中国をけん制する狙いがある。

岸田首相が政府内で検討を進めた結果、護衛艦の派遣を指示した。

複数の日本政府関係者が明らかにした。

さざなみは25日午前、東シナ海側から台湾海峡の通過を開始し、十数時間をかけて南方向に向けて航行して同日夜に通過を完了した。

これに合わせ、オーストラリアやニュージーランドの海軍艦艇も台湾海峡を通過した。

海自は26日から、南シナ海で両国海軍との合同演習を予定している。

8月以降、中国軍は日本周辺での軍事活動を活発化させている。

同月26日に情報収集機が長崎県・男女群島沖の領空を侵犯した。

9月18日には、中国海軍の空母「遼寧」が与那国島と西表島の間を通過した。

中国軍機の領空侵犯や、中国空母による日本の接続水域の航行が確認されたのはいずれも初めてだ。

首相はこのまま何も対応を取らなければ、中国軍の行動がさらにエスカレートする可能性があるとみて、海自派遣に踏み切った。

台湾海峡は最も狭い部分でも幅が約130キロ・メートルある。

国家の主権が及ぶと国際的に認められている水域は、沿岸の基線から12カイリ(約22キロ・メートル)の領海で、米国などは台湾海峡について、どの国の領海にも属さない国際水域だとの立場をとっている。

ただ、中国は台湾海峡を国際水域と呼ぶことに反対しており、日本の歴代政権はこれまで、中国側の反発を考慮し、海自艦艇による台湾海峡の通過を控えてきた。

これまでも東シナ海に展開する海上保安庁の船が台風接近を避けるため、台湾海峡の公海で待機することはあったが、海峡の通過はなかった。

米国やカナダなどの各国軍艦は「航行の自由」をアピールするため、台湾海峡を定期的に通過している。

ドイツの軍艦は今年9月、22年ぶりに台湾海峡を通過した。

◆日本の安全保障環境に危機感

海上自衛隊の護衛艦が台湾海峡の通過に初めて踏み切ったのは、日本の主権を脅かす中国軍の活動に対し、 毅然(きぜん)とした態度を示すためだ。

中国の 習近平(シージンピン)国家主席は2027年までに台湾侵攻の準備を整えるように命じているとされ、中国軍の最近の活発な動きはその一環とみる向きもある。

日本政府は軍事的緊張を高めるべきではないとして、海自艦艇の台湾海峡通過に慎重な立場を取ってきたが、岸田首相は日本の安全保障環境に危機感を強め、そうした姿勢では平和を守れないと決断したようだ。

今月23日には、北海道・礼文島北方でロシア軍機も領空を侵犯し、航空自衛隊は強い光と熱を発する「フレア」を使用した警告を初めて行った。

中露が緊迫度を高めているのは、首相の退陣表明後の「政治空白」を狙い、反応を試しているとの見方もある。

今後は中国側の反発が予想され、対抗措置に出てくることも想定される。

27日投開票の自民党総裁選で選ばれた新総裁は早速、対中政策のあり方を問われることになる。

(政治部 谷川広二郎)


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