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【箴言三】安易にカードを切るな
実力や自信のない人ほど手持ちのカードを切りたがる。しかし、それは自らの弱点を晒しかねず、自らを潰す危険が孕んでいる。
蒋経国の急死によって副総統から総統に昇格した当時の李登輝氏には全く実権がなかった。そもそもあの時代の政治状況で、台湾人に最高の権力を与えられることなどあり得なかった。彼にある唯一のカードといえば国民からの熱烈な支持であったが、国民党の一党独裁の時代では、国民の支持と国家権力の行使とは全く無関係だった。
李登輝氏は民意を利用しての旧勢力との直接対決は避けた。行政、軍、警察、情報など国家統治機構の人事を変動させることなく相手を安心させた。だが彼はひそかに台湾の国家像を描いていた。
二年後に再度総統に選出されると、素早く、そして着々と台湾の民主化を進め、六回の憲法改正を経て、それを不動のものにした。カードは時機が熟してから切る。これが李登輝流の戦い方であるのだ。
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