2014・4・8
【エコノタイワン:3月号】
迫田 勝敏(ジャーナリスト)
1990年3月、台湾は「野百合学運」と呼ばれる民主化を求める学生運動で燃えた。時の李登輝総
統が学生代表を総統府に招きいれ、対話し、解決に導いた。あれから24年。奇しくも同じ3月、今
度は「太陽花(ひまわり)学運」が燃え盛っている。馬政権の強引な政治運営に抗議、立法院(国
会)の議場占拠という前代未聞の行動に出た。
馬総統は学生の議場占拠を「あれが民主か? 法治か?」と批判した。だが、圧倒的多数の市民
は学生たち支持し、支援している。立法院周辺に座り込み、なおかつそこで眠る学生たちのため
に、毛布や食料品、飲料を次々に送っている。
◆議場も路上も自主管理
人ごみの中を入ってきたトラックの運転手に聞くと「荷物はミネラルウォーター80箱。毎日朝と
午後の2回運んでいる」。その水を無料で配っているボランティアの女学生が記者にも「どう
ぞ!」と渡してくれた。「どこから?」と聞くと「今朝来たばかり。嘉義です」。「大学の授業は
休講なの?」、「まだ嘉義はそこまでいってないの。でも休んできました」。
手にひまわりをたくさん抱えた女性が1本1本配っている。「需要が多くて、以前より倍ぐらい値
上がりした」と笑う。そのひまわりを手に路上に座る3人組女学生に聞くと「台南から昨日来た。
昨夜? ここで寝ました。今夜も」。なぜひまわりなのかと聞くと「太陽花は陽光の象徴。今の台
湾は暗闇だから光がほしい」。
学生ボランティアが定期的に回ってゴミ集めをし、分別収集、占拠した路上を交通整理をして、
通路を確保したたり、飲み物や食品を配ったり…社会への影響を少なくしようと議場も路上も自主
管理している。市民からの差し入れは多すぎて保管できない。「自宅や事務所で保管しておいて下
さい」と呼びかけるほど。
◆学生は台湾の未来への陽光
年末選挙だけに立候補予定者には絶好の宣伝の場だが、学生たちは「焦点がぼける」と候補者名
の入った幟などは禁止。内外のメディアに自分たちの運動の正当性を訴える広告を出すため募金を
始めたら、わずか数時間で600万元を超す浄財が集まった。社会は学生を信頼している。結末はど
うなるか、この原稿を書いている時点では予測は難しい。しかし少なくともこれだけは言える。こ
の若者たちの存在こそ台湾の未来への太陽花(陽光)だ、と。
(ジャーナリスト・迫田勝敏)