Andy Chang
アメリカの選挙が終わり、台湾では二週間後の29日に九合一選挙と
呼ぶ大規模選挙がおこわなわれる。九合一とは六大都市の市長選挙
のほかに市町村の市長、議員と議長、里町村長の選挙である。
選挙の最大の関心は台北市長の選挙である、国民党の連勝文(連戦の
息子)と無党派の柯文哲ほか5人で、柯文哲が連勝文を22%リードし
ているので当確と言われている。
無党派の柯文哲の勝利は国民党の敗北となり、台湾人民の独立意識
の高揚となる。同時にこの結果はこれまで台湾独立を排除してきた
民進党の凋落でもある。
●独立を棄てて中華民国体制を支持した民進党
民進党は1999年に党綱領から台湾独立を撤去し、最大党派の謝長廷
は「独立は得票にならない」と言い、民進党の柯建銘幹事長は民進
党の党大会で「台湾独立を凍結する」ことを提案したが、党員の反
対にあって提案を引っ込めた。
2008年の総統選挙に立候補した謝長廷は中間路線を主張して、民進
党の旗色である緑色を廃止して国民党の藍色と民進党の緑色の中間
の「青緑色」を使って選挙で大敗した。しかし謝長廷は中間路線
を主張するほかにも中国接近を主張し、民進党が中華民国を支持し
て中国に接近し、中国が民進党を支持すれば国民党に勝つことが出
来ると主張してきた。
台湾人民は口に出さなくても独立志向が強いので民進党の中国接近
に大反対で、柯建銘が提案した独立条項を凍結する案ですっかり民
進党が嫌いになった。
台湾独立を主張すれば必ず負けると主張した民進党の入党要請を拒
否し、無党派で立候補した柯文哲が当選すれば民進党はメンツ丸潰
れである。
但し、柯文哲は台湾独立を主張していない。柯文哲を指示している
のは打倒中華民国を主張する独立派、つまり体制外運動を主張して
きた20個以上の独立団体が連合して「台湾建国選挙連線」を組織し
て柯文哲を支持してきたが、このほかにも民進党に対抗して組織し
た若者たちの「基進側翼」と名乗る団体である。
●台湾建国選挙連線とは何か
台湾の体制外運動とは完全な台湾独立を主張する団体ではない。体
制外を名乗るのは中華民国の政治体制を排除する主張のほかに体制
を改善する主張の団体もある。民進党や台聯党のように中華民国の
選挙で政権を取る主張ではなく、中華民国の独裁体制を改善または
廃止する団体は、革命運動から国連加盟、公民投票による国体改名、
司法改善など50ほどの違った主張をする団体がある。
今回の「台湾建国選挙連線(連合)」は、公民投票を主張する団体の
発起人・蔡丁貴が主体となって25団体の連合を作って独立建国に賛
成する意思表示をした候補者を支持すると発表したので、全台湾で
102人の候補者が加入した。7月に連合が成立し、候補者は台湾住民
独立、自決建国と制憲、公民投票法の改革、国連加盟などで人民の
投票と熱意を促すと主張した。
この連合に参加した候補者の中には民進党の候補者も多数居るし、
台聯党の候補者も居る。だからと言うより、彼らは連合に参加して
人民の独立意識を頼って当選したい、だが明確に独立意識を主張す
るものが居ない、つまり主張が曖昧なのが「玉に瑕」と言える。台
湾独立は台湾人民の公共意識だが独立主張は明確にしないのが現状
である。
●基進側翼とはなにか
基進側翼は2007年ごろから徐徐に発展してきた若者たちの政治主
張で、彼らは今年三月の「ヒマワリ革命」より早くから「超党派運動」
を主張してきた。彼らは台湾の政治色分け、藍と緑の対決を超越し
て台湾人民の自由と自決を主張している団体で、主に台湾の南部都
市、高雄と台南に集中している。この団体はまた民進党に反対され
た後、台聯党に呼びかけ、やんわりと断られた経緯を持つ。
基進側翼は(1)政治民主化、(2)主権自由化、(3)社会自由化
の三つの主張をする団体である。しかしこの三つの主張はあまりに
も理想的で、現実の政治を相容れない曖昧さが残る。
「政治民主化」で政党闘争を廃止して、選挙に勝った政党の独裁に
反対すると言っても、政党選挙とは政権を取る戦いであり、政権を
奪取した政党を監督する人民の民主化運動が果たして可能なのか、
大きな疑問である。
次に、「主権自決」とは大国の圧力を拒否し、大中華思想を排除し、
台湾と中国の二つの独立した国家を目指すという理想は、すなわち
台湾独立の主張と変わらない。どうやって中国覇権の恫喝を排除す
るかが台湾独立運動のネックだったが、問題を残したままだ。
「社会自由化」の主張とは経済発展の自由民主化、つまり経済の自
由化が貧富の格差を拡大する、だから格差をなくして経済発展の利
益を社会全体が享受するという主張は富の分配という大問題である。
今回の選挙で、基進側翼グループは5人の候補者を出した。高雄市
は国民党優勢の区域と台湾人意識(民進党意識ではないという)の
強い区域があると言われる。選挙の結果で台湾人民の独立意識が国
民党のシナ人独裁に勝てるかを占うことになると言われる。
●予測される国民党の衰退
総体的に見て台北、台中、高雄、台南の四都は台湾人の勝ち、新北
と桃園は国民党の勝ちと予想されている。市町村の選挙でも民進党
と無党派の進出が目立つだろう。
国民党の敗北は中国人の敗北で台湾人の勝利、独立意識の高揚とい
う予測である。台湾意識の勝ちは中国人の敗北と言われている。民
進党はこの選挙の結果で独立意識の見直しをしなければやがて人民
に見放される結果となるだろう。