【AC論説】台湾の選挙について

【AC論説】台湾の選挙について

         Andy Chang

台湾の6大都市と里町村と県議員の選挙が国民党の惨敗におわり、
記事がたくさん出ている。自由時報の社論にあった通り、「人民の勝
利、国民党の大敗、民進党の警鐘」とある通り、民進党の勝利では
なく人民が勝利したのである。

国民党の大敗は国民党の腐敗、馬英九の中国接近、経済不振などが
原因で、有権者は国民党拒否で民進党に票を入れただけである。そ
の証拠に無党派の候補者が多く当選した。つまり台湾人は反中国、
反国民党で、民進党が独立を放棄して中国路線を採ったことに警鐘
を鳴らしたのである。

●世襲政治家と派閥の敗北

国民党の敗北は世襲の敗北である。連戦の息子と呉伯雄の息子が二
人とも落選した。これで政治家の世襲は大打撃を蒙ったのである。
民進党でも蘇貞昌、謝長廷などロートルはすっかり影を潜め、わず
かに蔡英文・党主席の健闘が目立った。

馬英九派の行政院長と国民党秘書長は引責辞任し、国民党副党首の
カク龍斌も辞職した。来週の国民党大会では馬英九が党主席を辞任
すると言われている。そして閣僚総辞職となる可能性もあるという。
連戦派、呉伯雄派、馬英九派とカク柏村派が壊滅し、内閣も総辞職
すれば国民党は人材不足で新閣僚の任命に苦慮する。

●無党派の勝利は人民の勝利

台湾の政治は藍、緑、白、黒、紅であると言われている。藍(ブル
ー)は国民党、緑(グリーン)は民進党、白(無色)は無所属、黒は
ヤクザ(黒道)、紅は中共である。

これまでの選挙は藍緑対抗と言われてきたが、台湾では二大政党の
闘争のほかに中国ヤクザ(チンパン、ホンパン、竹聯幇)と中国の
影響が強かった。人民は国民党独裁に不満、馬英九の性急な中国接
近に大不満だったが、三月のヒマワリ革命で若者たちが政治力を発
揮したあと人民が政治に興味を示すようになった。

今回の選挙で最も大きな影響を及ぼしたのは柯文哲という名医が台
北市長選挙に民進党に入党することを拒否して無所属で立候補し、
政党色のない選挙で民衆の支持を得て当選しことである。

国民党の連勝文は国民党名誉主席・連戦の息子で大富豪、中華民国
の腐敗を代表するような印象で、名医とドラ息子の対決では勝負に
ならなかった。

柯文哲は台北市だけでなく全台湾に政治色のない選挙、台湾アイデ
ンティティを喚起した。ヒマワリ革命後の若者の決起と柯文哲の無
所属出馬がピープルパワーを呼び覚ました。人民の覚醒が選挙の勝
利になったのである。

選挙の結果は無所属が12%当選して各都市、各県の県議会では民進
党優勢、または民進党+無所属で国民党議員を凌ぐ多数を制するよ
うになり、今後の政治に大きな影響を及ぼす。6箇所の直轄市のう
ち、新北市だけは朱立倫国民党候補が当選したが市議会は民進党多
数となった。

●アメリカと中国は台湾政策の見直し

まだ誰も書いていないが、今回の選挙の結果は中国とアメリカの台
湾政策に大きく影響する。

馬英九が政権を取ってから6年の間に中国は台湾侵略で大きく進展
した。馬英九の性急な中国接近、ECFAにサイン、中国人受け入れや
経済政策など、中国の台湾併呑は時の問題で後戻りはできないと言
われてきた。

しかし3月に起きたヒマワリ革命と今回の選挙で国民党は大敗し、
人口の約半数を占める6直轄市のうち5都市が民進党と無所属の市
長となった。反中国と反国民党が顕著となったので中国の台湾併呑
計画が大きく後退した。台湾人民は中国の統一(併呑)に反対の意
志を明らかにしたのである。

アメリカの台湾政策も大きな変更を求められる。アメリカは終戦か
ら今日まで一貫して現状維持と中華民国を支持してきた。アメリカ
は(1)台湾統治当局は中華民国とする、(2)現状維持を要求し、
台湾独立反対、(3)台湾問題は中国と台湾(中華民国)の間で平和
的解決すべきという三条件を要求し続けてきた。

しかし選挙の結果で台湾人民は反国民党と反中国。そして台湾アイ
デンティティが明確になり、民主選挙による平和的変遷と台湾独立
が可能となった。

アメリカは台湾政策の見直しをしなければならない。これまでアメ
リカはカーター、クリントン、オバマと民主党が親中国政策を維持
してきたが、アメリカでも中間選挙で共和党大勝となったので今後
のアメリカの政治も大変化が起きるだろう。

ピープルパワーとは真の民主主義である。アメリカが台湾人民寄り
の政策を採ることに期待したい。