【AC論説】台湾の選挙とアジアの平和

【AC論説】台湾の選挙とアジアの平和

               Andy Chang

来年の1月16日に投票が行われる台湾の総統及び国会議員の選挙が
あと6カ月余となったが、国民党は有力候補を出せないで焦ってい
る。民進党は蔡英文が立候補したが、民間では民進党の人気がイマ
イチといった状態である。

しかも57席で国会の過半数を制することが出来る議員選挙では民
進党が40区しか有力候補を出せないで困っている。第三勢力と称す
る民間グループは民進党に協力すると称して民進党が困難な17区
に代表を出そうとしたが民進党は協調に乗らない。国会で過半数を
取れなければたとえ蔡英文が当選してもレイムダックとなる。

アメリカは2012年の選挙でダグラス・パールを派遣して投票の二日
前に国民党の馬英九支持を明らかにし、内政干渉した。米国の干渉
で当選した馬英九は急激な中国接近をはじめた。やがて中国の領土
主張と尖閣諸島や南シナ海における勝手な領土主張と埋め立て多
島々で基地の建設を始め、アメリカはようやくアジアピボットを唱
えるようになった。

台湾は第一列島線の中央に位置している。中国が台湾を統一すれば
アジアの平和は失われる。台湾の将来はアジアの平和に大きな影響
を持つ。中国が台湾接近を続けることは危険、つまり台湾の選挙は
アジアの平和に大きな影響を及ぼす。

●民進党が不人気なわけ

国民党は有力候補を出せない。世論調査では国民党の有力候補と言
われる朱立倫、王金平と呉敦義の三人で誰が出馬しても蔡英文に勝
てないという。つまり国民党に勝ち味はないと言いう。この三人と
は別に洪秀柱が出馬したが彼女の人気は低く、国民党は彼女の出馬
に迷惑がっている。

世論調査では蔡英文の当選確実というが、民間では蔡英文と民進党
に冷たい。民進党に冷淡な理由は2012年に立候補した蔡英文が「中
華民国=台湾、台湾=中華民国」と主張したこと、及び民進党の現
状維持、中間路線に反対だからである。人民は独立を望んでいる、
民進党が独立を表明しないから冷淡なのである。民進党を信用しな
い傾向は海外の台湾人にもっとも顕著で、理由は蔡英文が台湾独立
を主張しないからである。

だが蔡英文の懸念は台湾独立を表明したら中国の恫喝を恐れて米国
が蔡英文に反対するかもしれないと言うことだ。アメリカは中国の
恫喝を恐れる。中国は台湾が独立すれば武力侵攻も辞さないと言っ
ている。だから彼女は2012年の選挙で「台湾=中華民国」と発言し
てアメリカを慰撫したにも拘らずアメリカは馬英九を支持した。今
回も独立を表明すればアメリカが反対するかもしれない。

だが台湾の政治事情は変わった。ヒマワリ学生運動と中間選挙で台
湾人は中国やアメリカを恐れることなく独立願望を表明し、台湾は
中国の一部ではないと主張するようになった。世間調査では台湾人
の8割は独立を望んでいる。それなのに民進党が独立を表明せず、
民間勢力とも協調しないから不満なのだ。

この状況では蔡英文が当選しても国会で過半数を制することが出来
ず、蔡英文はレイムダックになるかもしれない。つまり来年の選挙
は総統選挙よりも国会議員の選挙に重点があると言ってもいい。

●アメリカの選挙干渉

今は民進党優勢と言ってもアメリカが蔡英文に反対すれば負ける。
2012年の選挙では米国がダグラス・パールを派遣し、投票の二日前
に馬英九支持を表明したため蔡英文が落選した。台湾人はアメリカ
の支持がなくてはならないと知っているが、心の底ではアメリカの
干渉に恨みを持っている。オバマ政権はイスラエルの選挙でもオバ
マの腹心をイスラエルに送り込んでナタニヤフに反対し、あからさ
まな干渉を行った。アメリカは台湾の選挙に干渉するなと警告した
人は多い。

だがアメリカの現状維持とは反対に現状は大いに変わった。アメリ
カは馬英九の中国接近に警戒心を持つようになった。遅まきながら
中国の南シナ海における島々の軍事基地建設や、尖閣諸島の領海侵
入に警戒心を持ち始めた。中国はアメリカの衰退とオバマの無能を
見越してアメリカの警告を無視した暴言を吐くようになり、米中関
係は緊張している。

こんな状況の変化にアメリカが台湾の国民党候補を支持するとは思
えないが、それでも民進党が独立主張に警戒心を抱いている。

蔡英文が現状維持を主張すればアメリカは干渉しないだろう。国務
院の東アジア太平洋地区事務次官ダニエル・ラッセルは、6月初旬
にアメリカを訪問する蔡英文を歓迎し、いろいろな問題について意
見を交わしたいと述べた。つまりアメリカは中立路線を取る可能性
が高まったが、条件は蔡英文が独立を主張しないことだろう。

また、ラッセル次官は中国の指導者層に対しても台湾の選挙で中立
を守るように呼びかけたと言われる。アメリカの呼びかけがどれほ
どの効力を持つかはわからない。最近の中国は明らかにアメリカを
軽視している言動が目立つ。

●中国の出方

中国が台湾の選挙に干渉するのは避けられない。中国で働いている
台湾人は50万人以上と言う。前の選挙の時も中国は特別機をチャー
ター、または格安切符で台湾人を投票させた。もちろん国民党に投
票することが条件、監視付きである。

だが去年11月の中間選挙で国民党が大敗したあと、中国の恫喝や国
民党の宣伝は威力を失った感がある。どのような干渉を行うかはわ
からないが、中国の恫喝は逆効果となって国民党が惨敗する可能性
は高い。

●総括

以上の状況を総括すれば:
(1)蔡英文は当選するが、国会で過半数を取ることの方が大切。
(2)アメリカは前回のような醜い干渉はしないだろう。
(3)中国の干渉は避けられないが、逆効果になるかもしれない。

台湾の選挙はアジアの平和に大きな影響を持つ。中国の国際法を無
視した進出でアメリカも次々と違った方針を打ち出している。来年
1月の台湾選挙と、来年11月のアメリカ選挙が大きな変化を齎すに
違いない。


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