黄 文雄(文明史家)
【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」】より
◆チャイナテレコムの事業免許を取り消す米国
10月26日、アメリカの通信当局は連邦通信委員会において、中国の通信大手「中国電信(チャイナテレ
コム)」について、安全保障上の懸念からアメリカでの事業免許を取り消す方針を決定したと発表しまし
た。
決定の理由について、連邦通信委員会は「チャイナテレコムのアメリカ子会社が中国政府に統制されて
いて、スパイ活動などでアメリカに被害をもたらす恐れがある」としました。チャイナテレコムがアメリ
カの通信網にアクセスすることで、国家安全保障や法執行上の重大なリスクをもたらす危険性を指摘した
かたちです。
通信当局は、今後60日以内に、チャイナテレコムのアメリカ子会社に対して、国内向け、国外向けの通
信サービスの提供を中止するよう命じるそうです。
チャイナテレコムは、昨年11月にトランプ政権下で導入された、中国人民解放軍を支援しているとみな
された企業への投資を禁止する大統領によって、今年の1月にNY市場での上場廃止が決定され、5月に上
場廃止となっていました(その他、中国移動<チャイナモバイル>、中国聯通<チャイナユニコム>も同
様の理由で上場廃止)。
ちなみに、チャイナモバイルは、2019年に中国市場参入を安全保障上の問題で連邦通信委員会から却下
されています。一方で、チャイナユニコムも今年3月、通信事業免許取り消しに向けた手続きが開始され
たと報道されました。
中国国内の通信事業はチャイナテレコム、チャイナモバイル、チャイナユニコムの国営企業3社でほぼ
独占しています。これらの企業は、中国でのウイグル人監視に協力し、南シナ海での人民解放軍に通信
サービスを提供しているとされており、各社とも活発に海外展開しています。
ちなみに、中国では流通の全国ネットワークは人民解放軍が担っているというのが常識でした。スーパ
ー業界は、流通において中国人民解放軍が交渉相手となってきたのです。それがいつしか習近平が先手を
打って各地の公安を牛耳ったことで、今では流通は習近平の利権となっています。
◆中国の通信事業大手3社は日本に支社
それはともかく、これから問題となるのは、チャイナテレコムもチャイナモバイル、チャイナユニコム
も、日本支社があることです。アメリカが日本と情報共有するうえで、こうした中国通信社日本支社の存
在はアメリカの脅威になりかねないからです。
中国ではチャイナテレコムはファーウェイと協力して、5G小型基地局のネットワークを構築していま
す。言うまでもなく、ファーウェイも情報盗窃疑惑がアメリカはじめ各国で報告されている会社です。
ファーウェイについては、アメリカではすでにファーウェイ製品を扱う企業が政府調達から排除されて
います。日本でも政府機関の情報通信機器から事実上の排除となっています。
今年には、イギリスやスウェーデンがファーウェイの機器排除を進めています。具体的には、イギリス
は2021年9月以降、国内の通信事業者が通信網にファーウェイ製品を組み込むことを禁止しました。
また、スウェーデンは2020年10月、5G通信網整備でファーウェイとZTEの機器を排除することを決
定しました。
今後は、チャイナテレコム、チャイナモバイル、チャイナユニコムを排除する動きが各国で始まると思
われますが、日本はどうするのでしょうか。
ちなみに、来年の冬季北京五輪の会場では、ファーウェイとチャイナユニコムが連携して、体育場内に
5G屋内ネットワークを構築しているそうです。海外のアスリートや要人も、情報盗窃や盗撮被害にあわ
ないことを祈るのみです。
そして、アメリカなどによる中国企業の排除はますます進んでいくと思われます。アメリカが投資を禁
止している人民解放軍と関連ある中国企業は、トランプ大統領は31社を対象にしましたが、バイデン大統
領は監視技術を扱う企業も追加し、今年6月には59社を対象企業に指定する大統領令を出しています。
◆台湾有事における中国の通信会社への危機意識
一方、冬季北京オリンピック後、中国が台湾に侵攻する可能性が高まっているという話が最近よく聞か
れるようになっています。
アメリカのマクマスター元大統領補佐官は10月4日、メディアに対して「中国は香港の民主派を弾圧し
ても国際社会の制裁を受けなかったことで、台湾を攻撃しても国際的批判を逃れられると考えており、
ロシアがソチ冬季五輪直後にウクライナ南部のクリミア半島を併合したケースを真似て、冬季北京五輪後
に軍事行動を起こす可能性がある」と述べています。
中国は、実際に台湾へ侵攻した際に、各国がどのような反応を示すかという情報を必死に集め、同時に
フェイクニュースで世論操作を行っています。中国の通信会社そのためのスパイ活動に従事する可能性が
指摘されているわけです。また、台湾侵攻で国際社会が反発したときには、その国の通信網を壊してパニ
ック状態を引き起こすことも考えられます。
中国には国防動員法という法律があります。この法律は、中国政府が「有事」と認定すれば、中国国内
のすべての人員や企業をすべて強制接収できるというものです。しかも、海外にいる中国人や中国企業も
動員の対象になります。
つまり、中国政府の号令により、アメリカや日本にいる中国人や中国企業が、日本に対する破壊や工作
活動を開始する可能性があるわけです。
そうした危機意識があるため、アメリカはチャイナテレコムの事業免許を取り消し、アメリカで事業が
できないようにしたわけです。
日本は呑気すぎますし、いまだ中国市場に対して幻想を抱いている企業も少なく有りません。しかし、
事態は逼迫しつつあります。
まもなく衆議院選挙の投開票ですが、安全保障政策はきわめて重要な争点だと思います。
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2>> 台湾の国際刑事警察機構(ICPO)参加支持を
黄嘉禄・刑事警察局長
【産経新聞:2021年10月28日】
https://www.sankei.com/article/20211027-LADFPMNR6BJYFLNDYZK4AU3ODA/?129684
台湾の内政部警政署(警察庁に相当)の黄嘉禄(こう・かろく)刑事警察局長が産経新聞に寄稿し、
国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)が11月にトルコで総会を開くのに合わせ、台湾のIC
PO参加に支持を求めた。寄稿は以下の通り。
□
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)の中、台湾の人々は日本と同様、リモー
トワーク、オンライン授業、ネットショッピングなどを活用し、生活様式は変化した。ネット技術はす
でにわれわれの生活に深く入り込んでいる。
その一方で、犯罪集団もネット技術の弱点を利用して犯罪活動を行っている。ポストコロナの世界で
は、各国の治安を維持するためにも、サイバーセキュリティーが重要な課題の一つとなるだろう。
ネット犯罪はボーダーレスで被害者、加害者、犯罪がそれぞれ異なる国・地域で発生する。ネット犯
罪を取り締まるには、日本を含め世界の警察機関が協力し合い、情報を分かち合うことが必要だ。そう
してこそ、より多くの犯罪を効率的かつ速やかに防ぎ、追跡することができる。
台湾の警察機関は以前から、国境をまたぐ犯罪の取り締まりに協力している。専門的な科学捜査部署
であるサイバー警察もあり、内政部警政署刑事警察局は国際基準を満たすデジタル鑑識の実験室も持っ
ている。台湾のネット犯罪を取り締まる能力は、より安全な地球規模のサイバーセキュリティー環境作
りに貢献できると自負している。
ICPOは2017年の総会で「安全かつ持続可能な世界」の構築を目指す「グローバル・ポリシング・
ゴール」を採択した。この目標の下、犯罪の取り締まりでは、いかなる警察機関も排除されるべきでは
ないはずだ。ネット犯罪の取り締まりと、より強固な地球規模のサイバーセキュリティーの環境をつく
るには国際的な連携が必要だ。
台湾のICPO参加には、日本をはじめ加盟各国の支持が必要だ。参加により台湾は各国を助けるこ
とができ、これまで積み重ねてきた経験を喜んで共有したいと考えている。台湾がオブザーバーとして
11月の年次総会や関連会議に参加することを世界各国が支持するよう願っている。台湾がICPOに実
務的で意義ある参加をすることができれば、世界をより安全にできると確信している。
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